映画『ラーゲリより愛を込めて』を観て

20年以上も前に亡くなった義父は、シベリア抑留の引揚者だった。生前、断片的に抑留されていた当時のことを話してくれて、その中の一場面が映画にも描かれていた。

私は常日頃、前向きに生きているとは言い難く、かといって投げやりでもなく、淡々と過ごしている。サンドリで有吉さんが言っていた(どれほどの意味を込めて言ったのかはわからないが)「来年も何か希望があるわけではないですけれども、まぁ、生きていくしかない」という感じで、死んだら何もない、その辺に捨ておいてもらってかまわない、ぐらいに思って日々を送っているのだが、映画で描かれていたその場面は、私の想像していたのとは違って服を着ておらず、ああ、そうか、そうだよな、でも、なんてむごい……と涙をこられなかった。こんなところで、こんなふうに死にたくはなかっただろう。

松田研三や相沢光男、原幸彦のような人物になってしまうのは、ああいう状況下ではしようがないと思うのに、ああいう状況下でも、自らの意志を貫き通し、周りの人たちに母国へ帰るという生きる希望を与え続け、ねじれた人たちの心を解きほぐす、山本幡男という人物はなんという人なのだろう。しかし、一番帰国を望んでいたのは山本さんなのに、それが叶わないなんて、現実は皮肉なものだ。

山本さんによって心をほぐされた人たちが遺書を届けるという話は美談ではあるが、やはり戦争は起きてはいけないことなのだ。

桃李くん以外の方の演技を映画で観たことがなかったが、「なかなか揃うことがないメンバー」と言っていたとおり、皆すばらしかった。

二宮さんの病室での声は、こちらも苦しさに襲われた。

北川景子さんはきれい過ぎると思ったけれど、泣きわめく場面には胸を衝かれた。

安田顕さんの心情が少しずつ変化していくさまは見事だった。

一番驚いたのは中島健人さんかもしれない。アイドルの姿はどこにもなくて、物語の中の人になりきっていた。バラエティでも常に自分が前に出るというタイプの人ではないことがわかって好感を持てた。また、「ラーゲリより愛を込めて」の公式アカウントの番宣では、桃李くんとの遊戯王仲間の話も聞くことができて楽しかった。

桃李くんは今回もすばらしくて、自らを卑怯者と思い込む、本当は心優しい人であろう松田を見事に演じていた。が、全身が映ったある場面を観たときに、こんなに顔が小さくて、背が高くて、そういえばモデルから入ってきた人だった、と思った瞬間が一瞬あって、ここだけはマイナスだったかもしれない。

大ヒット御礼舞台挨拶も終わり、もう全員が揃うことはないのだなと思うと寂しいが、番宣は『櫻井・有吉THE夜会』『金スマ』『ボクらの時代』『ニノさん』と、どれも全部楽しかった。