『流浪の月』広瀬すず・松坂桃李インタビュー

 

ありがとう浜村淳です MBSラジオ 2022年5月3日

 

浜村淳:5月13日から『流浪の月』という映画が全国で公開されます。この映画に主演しました松坂桃李さんと広瀬すずさんが昨日フラッとこのスタジオへやってきましたので、いろんな話を聞きました。その模様を聞いていただきます。

浜村淳:まず、松坂さん。

松坂桃李:はい。

浜村淳:来てほしかった映画、今までにたくさんあったんですよ。例えば『新聞記者』。よかったね、あれは。

松坂桃李:ありがとうございます。

浜村淳:何遍も頼んだんですけど、「だめです。スケジュールとれません」と言われて。すずちゃんも『ラストレター』。あのときも来てほしかったんです。

広瀬すず:ありがたいです。

浜村淳:それもスケジュールがとれませんて。ようやく今日になったんですが、お2人の共演は初めてですか?

松坂桃李:2回目です。

広瀬すず:2回目ですね。

浜村淳:何がありましたっけ?

松坂桃李広瀬すず:『いのちの停車場』。

浜村淳:すずちゃんにはほかに『三度目の殺人』というのがあったでしょう。あのときも来てほしいとずいぶん依頼したんです。

広瀬すず:ずっしりめの映画がお好きなんですね(笑)。

浜村淳:そう。今回もずしっと。『流浪の月』はずっしりしてますよ。

松坂桃李広瀬すず:(笑)

浜村淳:でも、おもしろいストーリーですね。

松坂桃李:ありがとうございます。

浜村淳:映画始まると、いきなり友達と公園で遊んで、友達みんな帰った後、すずちゃん(子どもの更紗:白鳥玉季ちゃん)が1人で本を読んでる。あれ、『赤毛のアン』でしたっけ?

広瀬すず:そうです。『赤毛のアン』です。

浜村淳:読んでるとき、雨が降ってきて、本の上にポツッポツッと雨の雫が落ちる。ああ、どうしようかと思ってると、誰かが傘を差しかけてきて、「うちへ来るかい?」と言うでしょう。これが松坂桃李さんで。

松坂桃李:はい。

浜村淳:19歳くらいですか? あのとき。

松坂桃李:そうですね。設定的には。

浜村淳:そうして、結局すずちゃんは「行きます」言うてついていくじゃないですか。それから2カ月、この19歳の大学生と家内更紗ちゃん、2人の生活が始まる。でも、世間的にはこれは若い男の少女誘拐やと思われるんですが、そうじゃない。更紗のすずちゃん、ものすごくうれしいんですね。家庭的にいろんなことがあって、ましておばさんの家に預けられたら、そこの息子が本当にイヤらしい奴なんですよね。本当は死にたい、この家飛び出したい、思っているけれども、行くところがないし、お父さん、お母さんいないし、それで、大学生の松坂さんとずいぶん自由に伸び伸びと楽しく過ごしますね。

松坂桃李広瀬すず:はい。

浜村淳:更紗ちゃんの生活ぶりがだんだん松坂さんの佐伯文くんに移っていくじゃないですか。

松坂桃李:はい、はい、はい。

浜村淳:晩御飯にアイスクリーム食うとかね。

広瀬すず:奔放な(笑)。

松坂桃李:そうですね。

浜村淳:ついに松坂さんは少女誘拐事件で逮捕されると。それで、その逮捕されるとき、湖の突き出た桟橋の上で警察に捕まるでしょう。

松坂桃李:はい。

浜村淳:そしたら、すずちゃんと松坂さんが手を握りあったまま離さない。「手を離せ!」なんて私服の警官、怒鳴りますね。しかし、松坂さんはすずちゃんに向かって「更紗ちゃんは更紗ちゃんでいるんだよ」。人を好きになって、あるいは「好きにさせてはいけないよ」って最後の言葉を残して手を離して警察に連行されていく。

話してよいのはここまでなんです。

広瀬すず:(笑)

松坂桃李:すごい詳細に言ってくださるんで、このまま最後まで聞き入ろうかなという。

広瀬すず:そんな映画だったんですか?っていう反応をしちゃいそうでした(笑)。

浜村淳:違います。映画会社は詳細に話してはいけないと言うんですよ。今の話のそこから先を話すと(笑)。

松坂桃李:最後まで聞きたかったなあ、今。

広瀬すず:(笑)

浜村淳:いやいやいや。

すずちゃん、松坂さんをどういうふうに感じました? 2回の共演で。

広瀬すず:前回、『いのちの停車場』という映画でご一緒したときは、すごく情熱的な男性で、今回、本当に植物のような、心というものがあまり感じれない、出さないようにしている役柄でもあったので、正反対の役で、こんなにも一瞬で空気を変えるというか、まとえるものを、こんなに繊細に、そして敏感に表現される方っていうのを、何となくすごい方なんだなというのはわかってはいたのに

松坂桃李:いやいやいや(笑)。

広瀬すず:想像をはるかに(笑)。

浜村淳:すずちゃんの言うとおりなんです。松坂さん、『居眠り磐音』でこの番組に来たときに、本木(克英)監督と私と2人で松坂さんを「上手い!」言うてずいぶんほめたんですよ。あれは打ち合わせしてほめたんじゃなくて、僕が「松坂さん、いい芝居しますね」言うたら、監督が「そのとおり。上手いんですよ、この人は」言うて、声合わせてくれた覚えがございます。

松坂桃李:いやいやいやいや、とんでもない。

浜村淳:今回、『流浪の月』でも、非常に悩みのある人なんですね。ある原因があって。そのことを絶えず心の中で葛藤しながら、苦悶しながら、それをあらわに感情として表さない。グーッと押さえて押さえて演技してるでしょう。わざと無表情にしている。物を言うときもぶっきらぼうにしか言わない。でも、その底には、彼が抱えているとんでもない悩みがにじみ出ているわけですね。更紗ちゃんと2カ月一緒に暮らして、なんにも変なことはされてない。イヤらしいことをされてない。警察で言いますよね。ずいぶん言いますね。警察官も世間もそれを信用しない。まして、週刊誌は面白おかしく書くでしょう。でも、そうじゃないところに、「ああ、そうやったのか」という、一種ため息が出る思いがしますね。

松坂桃李:ああ、ありがとうございます。

浜村淳:このお2人については、ほめ尽くしてもいいくらい、いい芝居してくれました。

松坂桃李:いやいやいや。

浜村淳:すずちゃん、今回は監督の指導はあったんですか? 非常に大人っぽい一面を見せてますね。

広瀬すず:そうですね。それも一つ、自分が小さいときに文と一緒にいたときとはまた違う感覚の愛情表現と言うんですかね、そういうものを表現する一つに、更紗も更紗なりにいろいろ思いながら、感じながら、そうすることである意味感情を押し殺せるというか、紛らわすことができるという。ああいうのも、私の今までやってきた作品の中ではすごく新鮮だったんですけど。そこでより、相手役の亮くんを演じた横浜流星くんと一気に、お芝居としてもすごく信用できるというか、そこからお互いに、特にあのシーンから全部放つように一緒にお芝居できたので、年齢を重ねると表現できることもあるんだなというのをすごい実感して楽しかったです。

浜村淳:すずちゃんの顔がアップで映るたんびに、あっ、大人になったな、『海街diary』のとき、かわいいね、かわいい中に憐れさ出しましたね、あの役は。そうでしょ?

松坂桃李:全然違いますよね、『海街』からね。

広瀬すず:恥ずかしい(笑)。

浜村淳:松坂さんは、反対にあの役、難しいな思いませんでしたか? 『流浪の月』のとき。

松坂桃李:僕が演じた文ですか?

浜村淳:そうです、佐伯文。

松坂桃李:そうですね。本当に深い湖の中にいるぐらい、それぐらい潜っても潜っても底が見えないというか。潜り続けていくと、どんどんどんどん深い闇のほうに染まっていくといいますかね。それぐらい、彼の中での壮絶な真実を抱えながら事実と向き合っていかなきゃいけないという、その辛さといったものを自分がどれだけ味わえるかだな、みたいなところでしたね。

浜村淳:感情を押さえて、押さえて、押さえて、芝居しなくちゃならないでしょう、あれは。

松坂桃李:そうですね。だから、言葉よりかは、体の内側、内の部分でグツグツとマグマが燃えているようなといいますか、そういったものが常にあった感じですかね。

浜村淳:松坂さんから見て、2回目の共演ですが、すずちゃんはどういうふうに感じ取れましたか?

松坂桃李:『いのちの停車場』とは全然違うのはもちろんなんですけど、こっちの部分がもしかしたらパーソナルなほうのすずちゃんに近いかなというぐらい、それぐらいお互い、ちゃんと底の部分でぶつからないとわかりあえない瞬間というのもあったので、これ、僕にも共通することなんですけど、人や物事に対して、あまり信用をすぐにしないというか。そういった用心深さだったりとか、そういったものも自分と似た部分も勝手に感じ取ったりしつつ、今回のすずちゃんのほうがパーソナルな部分なのかなと思ったりとかして。

浜村淳:そうですか。どうですか? すずちゃん、今の松坂さんの言葉。こっちのほうが本当のすずちゃんじゃないかという。

広瀬すず:確かに、役柄というよりも、お腹の底を見せ合いながら、お互いにぶつかり合いながら、ちゃんと吐き出し合いながらお芝居を今回やらせていただけたので、悔しいとか、不意に文に触れる瞬間て、更紗なんだけど、自分、私自身の感情もすごく動くので(笑)

松坂桃李:ああ、わかる。

広瀬すず:不意に出るものは、わりと自分の感性というか、私自身が文に思ってる行動な気も何となくしていて。でも、きっとそれは自分が今、更紗だから、そういう瞬間があってもいいやと思ってたんですけど、そういった意味では、やっぱりちょっと素は出ますよね(笑)。お芝居しながらも。

浜村淳:松坂さん、監督はいろんな注文出しましたか?

松坂桃李:注文というよりかは、そこのシーンをちゃんと向き合えるための監督なりの石の投げ方というか、導き方というか、本番前にボソッと「じゃあ、次は15年前のことを思い出してみて」というのをポーンと言ってくれたり、そういった、答えではないんですけど、何か目印、道しるべになるようなものをスッと投げてくれる。

浜村淳:そうですか。すずちゃんにもいろんな注文は出しませんでしたか? 監督。

広瀬すず:やったことに対して、今おっしゃってた、感情を一つ要素をポンとふやしていってくれるというか。それを、こういう感情というよりも、15年前を思い出したら、15年前、自分がどんな感情だったかなというのを私なりに思い出してやってみたりすると、あ、そっちの方向で、またもうちょっと滞りよくしてみてとか、もうちょっと霧がかかった感じにしてみてとか、わりとニュアンスで伝えてくださるんですけど、やればやるほど、自分で「霧?」とか、いろいろ疑問もありながらも、やっていくと、言っている意味がわかるというか。

浜村淳:いい映画でした、これは。

広瀬すず松坂桃李:ありがとうございます。

浜村淳:そうして、いよいよ今年の映画賞はこの『流浪の月』が獲るんじゃないですか?

松坂桃李:ありがとうございます!

広瀬すず:ありがとうございます! 願うしかできない(笑)。

浜村淳:演技賞は松坂桃李広瀬すず、このお2人やと思います。

松坂桃李:ありがとうございます(笑)。いやいやいやいやいや、とんでもないです。

浜村淳:本当に。大ヒットをお祈りしております。

今日はお忙しい中ありがとうございました。

広瀬すず松坂桃李:ありがとうございました。

 

 

www.mbs1179.com