ディアフレンズ TOKYO FM 2022年5月4日
坂本美雨:ゴールデンウィークですね。皆さん、どんなふうにお過ごしですか?
さあ、本日のゲストは、こんなお休みの日にぴったりなこの方、俳優の松坂桃李さんです。
松坂桃李:どうも。松坂桃李です。皆さんよろしくお願いします。
坂本美雨:よろしくお願いします。はじめまして。
松坂桃李:はじめまして(笑)。
坂本美雨:桃李さんとラジオというと、もう、あの話、『遊☆戯☆王』の話なんじゃないかと(笑)ファンの皆さんは思っていらっしゃるかもしれないんですけれども。
松坂桃李:そんなに有名なんですかね(笑)。
坂本美雨:そうですよ。ネットニュースとかで(笑)見ました。
松坂桃李:いやあ、申しわけない(笑)。
坂本美雨:今日は映画のお話をメインにお伺いできればと思うんですけれども。
改めまして、はじめましてなので、ちょっとおさらいをさせていただきますと、桃李さん、現在33歳でいらっしゃいます。2009年に『侍戦隊シンケンジャー』でデビュー。「殿」と呼ばれております。その後、皆さんご存じのとおり、引っ張りだこです。本当、さまざまなドラマ、映画もそうですし、舞台でも体当たりの演技を(笑)。
松坂桃李:そうですね。やらせていただきました。
松坂桃李:ああ、ありがとうございます。
坂本美雨:『新聞記者』はもちろんですけど。
松坂桃李:ああ、すごい。
松坂桃李:ああ、劔さん!
坂本美雨:お迎えしまして、『あの頃。』のときにいっぱいお話を伺ったんです。
松坂桃李:そうだったんですね(笑)。
坂本美雨:コンサートに一緒に行かれたり、ヲタ活を一緒にしたという。
松坂桃李:『あの頃。』の作品が決まったときに、役作りの一環として「じゃあ、観にいきましょう」ということで一緒に観にいって。そうしたら、ちょうど観にいったときに週刊誌に撮られたんですよね。「松坂桃李、実はハロプロのヲタクだった!」みたいな書かれ方をして、役作りで行ったんですけど、後々これはいい番宣になるから、そのままでいいかということで(笑)。そんな話もありましたね。
坂本美雨:そうでしたか。本当に劔さんのTシャツとかジャケットとか私物を使われていたそうですね。
松坂桃李:そうなんですよ。だから、羽織ったときに、ちょっと劔さんの匂いがするんですよ。
坂本美雨:(笑)
松坂桃李:積み重ねた匂いといいますかね。その香りをまとって演じさせていただきましたね。
坂本美雨:さあ、今月5月13日から公開される映画『流浪の月』では、桃李さん、また新境地に行かれましたね。
松坂桃李:いやいやいや、とんでもない。
坂本美雨:広瀬すずさん、松坂桃李さんのW主演。原作は、一昨年、本屋大賞を受賞した凪良ゆうさんの作品です。監督は『フラガール』とか『悪人』『怒り』でメガホンをとり、日本アカデミー賞の常連でもある李相日監督です。
少し物語に触れていきたいと思うんですけれども、広瀬すずさんが演じる更紗ちゃんが10歳のときに、当時19歳だった、桃李さん演じる文に、雨が降る夕方の公園で出会います。更紗ちゃんが「お家に帰りたくない」ってぽつりと言ったら、「うち くる?」と誘って。でも、今、現代の感覚で言うと、知らない男の人が声をかけるという危ないシーンのはずなのに、すごく切ないような、純粋なシーンから始まったなあ、という印象です。
松坂桃李:ありがとうございます。そう思っていただけると。
坂本美雨:文と更紗はその後本当に純粋な関係性をはぐくんで、でも、文が逮捕されてしまって、本当にいろいろ大変な目に遭ってしまうんですけれども、この文という男性を演じるにあたって、桃李さん、まずはどんなことに取り組まれたんでしょうか。
松坂桃李:まず原作を読ませていただいたときに、文の抱えている真実というものを監督と一緒にディスカッションをして、これはどういうところからアプローチしていったらいいかというところから入りまして。これはネタバレにつながることなので、気をつけてしゃべっていきたいんですけど、文の抱えている真実というものから、体のシルエットはちょっと落としたほうがいいよねというところから始まっていって、そこからだんだんだんだん文の内面に迫っていくんですけど、佐伯文という人物は、掘っても掘ってもずっと霧の中にいるような、深い広い湖の中を潜っても潜っても底が見えないような、そういった大きな闇といいますか、黒いものを抱えている人物だなと僕は思っていて。
その彼と向き合うにあたって、本当にいろんな役作りのアプローチというんでしょうかね、ことをやらせていただいて、監督の提案で「文が実際に撮影で使うアパートで寝泊まりしてみたら?」という提案があったので、「じゃあ、そうさせていただきます」ということで、そこで寝泊まりしてみたり、文として日記を書いてみたりとか、あとは、今回、コーヒーを営んでいるので、ひたすらコーヒーを淹れてみたりとか、更紗に対してどういう思いで佐伯文という人物は、更紗と今回再会するところも描かれているので、幼少期の更紗から大人になった更紗の出会うまでの空白の15年間をどう自分の中で埋めようかということもあったので、そこに対して文字に起こしてみたりとか、思いつく限りのことを結構やってみましたね。
坂本美雨:体はどのぐらい絞られたんですか?
松坂桃李:大体7~8キロぐらいとかですかね。撮影のときは大体59キロとか、それぐらいでしたね。
坂本美雨:ひゃあ、そうですかぁ。
松坂桃李:はい。
坂本美雨:先ほど「闇」とおっしゃいましたけれども、佐伯文さんに対して、怖い種類の狂気は全然感じなくて、そこがすごく澄んでいるというか。それって、桃李さんのもともと持っていらっしゃる素質なのか、それとも、何かを意識してそうされたのか。
松坂桃李:その闇というものが、人に対して向ける闇じゃなく、自分の中に対して向ける闇といいますか、文が抱えている真実というものが、世間が見る事実と文が抱えている真実の間でかえって板挟みになって揺れているというか。本当はこの真実を明かせばすごく楽なんでしょうけど、楽になった瞬間に、後ろからものすごい恐怖というか、怖いものが迫り来る感じというんでしょうかね、なんかそういうものがあって、だからこそ、この真実を打ち明けることがなかなかできないというか。そこから来る闇みたいなものが彼の中にはあるんじゃないかなと僕は思うんですよね。
坂本美雨:なるほど。防波堤になってるような、ぎりぎりのところで穴をふさいでいるような。必死に。感じなんですかねぇ。
松坂桃李:そうですね。コップ1杯のお水に、たくさん水が満杯の状態で、あと表面張力で、ちょっとの刺激でこぼれそうな、それぐらいのぎりぎりなところをずっと渡り歩いてきているような人といいますか。
坂本美雨:その危うさと美しさの両方、本当に胸を打ちました。
松坂桃李:ありがとうございます。
坂本美雨:そして、子役。子役とは言えないぐらいなんですけれども、更紗ちゃんの子ども時代を演じられた白鳥玉季さん。撮影当時は11歳でいらっしゃいましたけれども、んやあ、すごい演技ですね。
松坂桃李:いやあ、すばらしいですよねぇ。
坂本美雨:彼女とのコミュニケーションはいかがでしたか?
松坂桃李:彼女とのコミュニケーションがあったからこそ、僕の佐伯文という役は仕上がったんだなと思いました。それぐらい、おっしゃっていただいたように、子役とは思えないような現場での立ち姿といいますか。子役の子だったら、お家できっとこの台詞いっぱい練習してきたんだろうなっていうのって結構あると思うんです。全然それは悪いことじゃなくて。
白鳥玉季ちゃんは、どれとも違う、現場に参加してるからこその責任みたいなものをもう既に一人で背負っているような、プロとしての自覚みたいなものをもう持ち始めている感じ。でも、だからといって大人過ぎてはなかったりするし、ものすごく無邪気に監督とカメラマンさんのホン(・ギョンピョ)さんとかとおしゃべりする瞬間もあったりするんですけど、カメラの前だったり、ちょっとした本番前のいい緊張感の状態のときの彼女の立ち姿というものが、一人の役者さんとしての責任をまとってる空気感みたいなものがありましたね。
坂本美雨:2人の関係性をどう描いていこうというのは、彼女とお話しされたりもしたんですか?
松坂桃李:どう描いていこうというよりか、李監督が大切にしてくれたのは「更紗と文の関係性だからこそ、コミュニケーションたくさんとっておいて」ということだったので、リハーサルのときとかも、台詞の読み合わせとかではなくて、本当にたわいもない話。自分は学生時代こうだったよとか、今ハマってるものとかという話から、だんだんだんだん友達づき合いの話とか、普段周りにはあんまり言ったことないような話とかをお互いしたりとかして、そこで戦友とも言えない、何とも言えない、強いつながりみたいなものを2人で構築していくというか。
坂本美雨:それこそ文と更紗の関係ですよね。徐々に
松坂桃李:そうですね。みたいな。
坂本美雨:心の内をポロッと言える相手になるっていう。
松坂桃李:そうなんですよね。彼女も僕が話したからこそ打ち明けてくれた部分もあったりとかしたので、そこの信頼関係は強かったのかなと思いますね。
坂本美雨:広瀬すずさん、松坂桃李さんのほかにも、横浜流星さん、多部未華子さん、さらに内田也哉子さん、三浦貴大さん。柄本明さんも圧倒的な存在感でしたね。
松坂桃李:すごい面々の方々が。
坂本美雨:そして、劇中の音楽を担当されたのは、以前、ディアフレンズでもお迎えした音楽家の原摩利彦さんです。それでは、『流浪の月』サウンドトラックから1曲おかけしましょう。
原摩利彦さんで映画『流浪の月』サウンドトラックより「メインテーマ」♪
坂本美雨:映画『流浪の月』サウンドトラックより、原摩利彦さんが作曲された「メインテーマ」をお送りしています。
坂本美雨のディアフレンズ、今日は俳優の松坂桃李さんをお迎えしています。
お知らせの後、松坂さんのプライベートにもちょっと迫らせてください(笑)。
松坂桃李:はい(笑)。
(CM)
坂本美雨:今日のディアフレンズは、出張ディアフレンズをしまして、俳優の松坂桃李さんに会いに来ています。引き続きよろしくお願いします。
松坂桃李:よろしくお願いします。
坂本美雨:さあ、桃李さんのプライベート、見てもいいんですか?
松坂桃李:はい。もちろんです(笑)。
坂本美雨:それでは、質問ボックスから1枚質問を引いてください。
松坂桃李:わかりました。1枚ですね。じゃ、ここから引かせていただきます。僕が読み上げさせていただきます。質問はこちらです。「あまり人には伝えていない特技や趣味は?」
あまり伝えていない特技や趣味。そうですねぇ、特技、うーん、匂いに敏感(笑)。
例えば、料理とかでも、いろんな調味料だったりとか、味付けがされてる料理が出されてたときに、かいで、これ、このスパイス入ってるかも、とか、こういう香辛料入ってるんじゃないか、とかというのはたいてい当たるというのはありますね。これはたぶん言ってない。この特技は言ってないですね。
坂本美雨:そうですか。それ、昔から?
松坂桃李:今思うと昔からだったのかなと思います。匂いに敏感というか。友達のお家に遊びに行ったときに、自分の家と違う匂いってあるじゃないですか。
坂本美雨:はい。
松坂桃李:それをすごい敏感に、ああ、この家はこういう匂いなんだ、とか、ああ、この家は結構木の匂いがするな、とか、そういうことを思っていた時期はありましたね。
坂本美雨:どんな香りが好きですか?
松坂桃李:一番いいのは無味無臭なんですけど、香りがあるとしたら、レモングラスの匂いがほんのり香るぐらい。ほんのりですけど。ほんのり香るぐらい。
坂本美雨:さわやか系?
松坂桃李:なのかな。
坂本美雨:でも、ご自身ではあまりつけない。
松坂桃李:つけないですね。香水とかというのはあまりつけないですけど。
坂本美雨:じゃあ、劔さんのTシャツの匂いがね(笑)敏感に。
松坂桃李:あの匂いは敏感に。やっぱ役者さんによって、役によって香水を変える人とかいますからね。
坂本美雨:確かに。
松坂桃李:だから、匂いって結構重要だったりするんだなと思うんですね。人の、例えば劔さんだったら、今この場に、あのジャケットから香る匂いが劔さんのことを思い出したりするじゃないですか。それぐらい匂いって脳を刺激するといいますかね。
坂本美雨:そうですよねぇ。
桃李さんの新しい役、文さんは、佐伯文はどんな匂いなんだろう(笑)。
松坂桃李:アイロンかけたての匂いに近いかもしれないですね。
坂本美雨:あ、そうだ。いい匂い(笑)。あとコーヒーと。
松坂桃李:コーヒーと混ざったような匂いですね。
坂本美雨:さあ、映画『流浪の月』、今月5月13日からいよいよ公開となりますけれども、この映画の映像も本当に美しくて、『パラサイト 半地下の家族』も手がけられた撮影監督ホン・ギョンピョさんです。これ、観終わってから知りまして。『パラサイト』の人だったんだというのを。印象的な、水とか青っぽい色合いとか美しかったですね。
松坂桃李:現場でもどう撮られているかわからないんですよね。こういうことを言うのは変かもしれないんですけど、たいてい、カメラアングルって、こう撮ったら、きっとこういう画になって、こういうふうに編集されて、こういうシーンになるんだろうなって、ある程度大枠みたいなものがわかるんですけど、ホンさんの場合、カメラアングルが自分の左側にあるとしたら、1回テストをやって、じゃあ、これでいくんだろうなと思ったら、「はい、本番」というときには、カメラが自分の右斜め前にあったりとか、本当にフレキシブルに現場でカメラの位置が変わっていくので、現場自体が生き物みたいな感じというか。
あとは、「雲の形がよくないから今日はこのシーン撮らないね」みたいなのが平気であったりとか、逆に、ものすごい、台風なのにもかかわらず、今日は撮影ないだろうなと思ったら、「いい雲だね。撮ろう!」みたいな(笑)。本当ですか?みたいな。冒頭シーンとか、ちょうど台風が来てるときに撮ってるんですよ。
坂本美雨:はあ。リアル嵐というか。
松坂桃李:嵐なんですよね。だから、雨降らしじゃなくて本当に降っているんですよ(笑)。なので、だから、役者陣もどういう仕上がりになるか全くわからなくて。実際につながった映像を見させてもらったら、本当に一人一人の登場人物の表情といいますか、ニュアンスをしっかり細かく捉えていて、こんなふうに撮られてたなんて思わなかった、というのが衝撃でしたね。
坂本美雨:鳥が印象的で。
松坂桃李:あ、そうですね。
坂本美雨:パーッと飛んでいったり、電線にびっしり鳥が並んでいたりしていて。
松坂桃李:鳥待ちとかありました。
坂本美雨:ほんと? そうなんだ(笑)。
松坂桃李:(笑)
坂本美雨:そういうのも象徴的に意味があるのかな。
松坂桃李:そうですね。ホンさんの中でも、この作品のテーマみたいなものが何個かあったので、それをしっかりとカメラの中におさめるまでは妥協しないっていう。
坂本美雨:そうかあ。いやあ、すごかった。
さあ、ここで1曲、桃李さんのリクエストをおかけしたいと思います。
坂本美雨:UMP OF CHICKENで『クロノスタシス』、松坂桃李さんのリクエストでおかけしていますけれども、この曲を選ばれたのは?
松坂桃李:理由としては「バンプの新曲だから」というのが一番の大きな理由で、もともと僕はBUMP OF CHICKENが大好きで、ラジオに出させてもらうときに、わりとバンプさんの曲ってかけたいなって思うことが結構あるんですよね。なので、今回このタイミングでちょうどバンプさんの新曲が出たので、もうこれしかない!と思ったので、この曲を選曲させていただきました。
坂本美雨:坂本美雨のディアフレンズ、今日は俳優の松坂桃李さんとお送りしています。
(CM)
坂本美雨:今日は俳優の松坂桃李さんをお迎えしました。どうもありがとうございました。
松坂桃李:ありがとうございました。
坂本美雨:広瀬すずさんと松坂桃李さんW主演の映画『流浪の月』は5月13日金曜日から全国公開されます。そのほか桃李さんの最新情報などは、オフィシャルサイトやSNSをごらんください。
今日は駆け足でお話ししていただく時間が足りなかったんですけれども、また来ていただけますか?
松坂桃李:もちろんですよ。番宣じゃなくてもぜひ(笑)。
坂本美雨:言いましたね?(笑)
松坂桃李:全然。もちろん、もちろん。
坂本美雨:ぜひお願いします。
松坂桃李:お願いします。
坂本美雨:今日はどうもありがとうございました。
松坂桃李:どうもありがとうございました。
坂本美雨:ここまでのお相手は坂本美雨でした。それでは、皆さん、よい祝日を。