映画『流浪の月』 広瀬すず・松坂桃李インタビュー

 

BRIGHT MORNING FM802 2022年5月6日

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内田絢子:FM802から内田絢子がお送りしているBRIGHT MORNING。ここからの時間は、来週5月13日公開の映画『流浪の月』主演のこのお2人にお話をお伺いします。

こんにちは。お一人ずつお声を聞かせてください。

広瀬すず:こんにちは! はじめまして。広瀬すずです。

松坂桃李:こんにちは。はじめまして。松坂桃李です。

内田絢子:よろしくお願いいたします。

広瀬すず松坂桃李:よろしくお願いいたします。

内田絢子:映画『流浪の月』は、2020年に本屋大賞を受賞した凪良ゆうさんの小説が原作の作品。広瀬さんと松坂さんのほかにも横浜流星さんや多部未華子さんなど豪華キャストが出演。そして、監督・脚本を『悪人』や『怒り』を手がけた李相日さん、撮影監督を『パラサイト 半地下の家族』を手がけたホン・ギョンピョさんが担当されています。

それでは、まずは映画のストーリー、お話しいただいてもよろしいですか。

松坂桃李:はい。映画はですね、女児誘拐犯とされた(佐伯)文と、そしてその被害者の(家内)更紗、この2人が15年ぶりに再会をして、世間から貼られたレッテルの中で生きてきた2人が再会することによって、その2人が抱えている真実と世間から見た事実というものの中で、2人が見つけた唯一のつながりというものをしっかりと、本当に美しく、そして強く、李さんが演出を手がけて映像化されている作品でございます。

内田絢子:松坂さんは佐伯文という青年を演じていらっしゃいますけれども、言葉ではなく、目や表情で感情を伝えていくという、非常に難しい役だったと思うんですが、どんなことを意識しながら演じていかれましたか?

松坂桃李:台本には書かれていない余白の部分といいますか、文が子どものころ、どうやって生きてきて、どういう家庭の中で育ってきながら、抱えてきたものと向き合ってきたのかとか、そういったことを考えつつ、そこの先で出会った更紗との衝撃的な出会いといいますか、そこは文にとっては宝物のような時間で、それがある事件がきっかけでお互い離ればなれになってしまって、そこの空白の15年間というものも自分の中で李さんと話をしつつ埋めながら、そして15年ぶりに再会した更紗に出会ったとき、その瞬間とかも、すずちゃんと一緒にお芝居をさせてもらっている中で、今まで自分が実感としてちゃんと積み上げてきたものをすずちゃんに預けながらというか、こういうふうに自分は思ってきたとか、わからないですけど、そこは言葉で説明とかというよりかは、お芝居をしていく中でお互いが腹の底でつながっている感じをたぐり寄せながらやっていくというか、そういった感じでしたね。

内田絢子:更紗と、そして文と、2人が一緒にいるからこそのできる呼吸というのがあったりとか、物語はとても緊張した状態で進んでいくけれども、信頼するところから生まれる強い絆みたいなものは、作品からとても伝わってきて、更紗という女性は、ファミリーレストランのアルバイトの中では、とても周りの空気に溶け込みながらも、大切な人を守るためには感情を露わにして闘っていくという姿が、すごく人間らしくて愛おしいなと私は思ったんですが、いろんな感情に揺り動かされる中で、演じていてすごい大変だなと思ったこととかはありますか?

広瀬すず:更紗が一番普通に生きようとしているというか、溶け込むのに、癖のようにみんなと笑ったりとか。でも、不意に、すごく違う角度から物を見られたりとか、自分を見られたときに出る目線であったり、そのときの笑顔であったりとか、そういうのが最初私の案はなくて、自分の道を歩んでいけば楽だなと思ってしまった私の更紗像と、監督には「ずっと笑ってたらいいんじゃない?」って言われて、「もっとふわっとしてて、明るくていいよ」って言われて、ああ、そうかと思ってから、溶け込む……自分を、いるけどいないようにしてもらえる生き方なんだなというのを途中で気づいてから、作り笑いじゃないけど、癖のように笑顔が出てきてしまうというのは、すごく意識していたかもしれないです。

内田絢子:そこは松坂さんも、いま、非常にうなずいていらっしゃいますが。

松坂桃李:表面で出てくるものと心の中で感じているものの違いというか時差みたいな、そういったものが更紗からは感じ取れますよね。

内田絢子:気持ちを隠しながらというところと露わになるところのその広瀬すずさん演じる更紗というのも皆さんにぜひご覧いただきたいですし、物語のキーとなるカフェcalico。これ、すごく素敵な佇まいでしたけれども、お2人にとってこの場所というのはどんな空間ですか?

松坂桃李:何ですかね。鎧がとれる場所というか、鎧をとる場所みたいな、わからないですけど、お互い、それぞれcalicoで感情がむき出しになるところが2つそれぞれあるんですよね。だから、ある種、まとっていた、体に周りについていた雪の塊みたいなものをドサドサドサッと落とす感じというか。外で溜まってきたものを。そういった場所でもあったりするのかなあと思いましたね。

内田絢子:松坂さんが淹れるコーヒーがとてもおいしそうでした(笑)。

松坂桃李:本当ですか? ありがとうございます(笑)。

内田絢子:広瀬さんにとってはcalicoはどんな場所でしたか?

広瀬すず:昔、誘拐されてるって世間に出るときって、更紗は文のお家にいて、その2人が共有できる場所みたいなものが、大人になっても、それがcalicoになってるというか。文の家と同じ感覚で、更紗も来やすいんだろうなというか、それこそ脱ぎやすいというか。文の家は、私自身は現場に行ってなくて、見てなかったので、わからないんですけど、「あ、文と2人の空間ができた!」みたいな、ある意味うれしいというか。

内田絢子:2人にとっての新しい場所がまたここに見つかったという、そのcalicoの光の感じとか、空気がピーンと張りつめる感じというのもすごく素敵な空間でした。

李監督とはいろいろコミュニケーションをとりながら、この言葉はちょっと強烈に印象に残っているなとか、そんな出来事とかありましたか?

松坂桃李:いっぱいありますけどね。あり過ぎてちょっとなあ……。いっぱいあり過ぎて、本当にどれかわからないですけど、いろんなことを、ラジオだからある程度オブラートに包みつつ集約して言うとするなら、李さんに言われて結構ズーンてきたのは「一回外の空気吸ってこよっか」。

広瀬すず:(笑)言う。言う。

内田絢子:いま、その重みをすごい感じました(笑)。

松坂桃李:「はい……」みたいな。

広瀬すず:言います。でも、時期的に、ある意味ごまかされてたのは、私、前回の『怒り』という映画でご一緒したときもそういうのあったんです。「一回一人で考えてくれば」って。今回は、「うん、換気しよっか」。

松坂桃李:(笑)

広瀬すず:すごい言われて、ああ、優しい言葉。

松坂桃李:ニュアンスがちょっと変わったんだ。

広瀬すず:「考えてこい」は私のための時間になっちゃうけど、「換気しよっか」は、しなきゃいけないから、そこの間で考えれるでしょ、みたいな感じで私は言われました。

松坂桃李:すごいね。

内田絢子:いろんな意味の込められた監督からの一言。

でも、本当にすごい撮影期間だったと思うんですが、原作を読んだときも感じましたが、この作品に出会えてよかったなというのを、映画を観た後もすごく思ったんですね。

お2人は完成した作品を観た後って、どんなことを思ったんだろうというのを最後にお聞かせいただきたいです。

松坂桃李:どう思ったか。

内田絢子:はい。

松坂桃李:本当この2人のことがすごく僕は愛おしく思ったし。もちろん、ほかの亮君だったり谷さんも、やっぱり気持ちがわかる分、辛くて、その2人ももはや愛しいし、何より、更紗と文が、新しい、自分たちにしかないつながりというものをちゃんと見せてくれたことによって、言葉には括ることができないつながりというものをちゃんと見せてくれたことによって、ある種のこれは希望のような、そういったことにもつながったなと思いましたね。

内田絢子:広瀬さんはいかがですか?

広瀬すず:私は、どうしたってたぶん一生客観的に見れることはないので、現場でもそうだったんですけど、完成を見れば見るほど、文の優しさに気づき過ぎちゃって。

松坂桃李:(笑)

広瀬すず:このとき、こうだったんだとか、この2人がとか、あの2人も切ないなとかじゃなく、最後のほう、眼中は文しか(笑)。文で世界が成り立って生きれてたみたいな更紗の感情が、試写を観て蘇ってきちゃってから。

松坂桃李:ああ。

広瀬すず:でも、亮くんのことも好きだったよ、みたいな(笑)、いろんなことに反論したくなるし、ああ、ここで文はこんなに優しい手を差し延べてくれてたんだとか、そういうことに気づき過ぎて、2回観てるんですけど、2回目が一番しみました。

松坂桃李:(笑)でも、わかるかも。2回目、一番食らうよね。

広瀬すず:一番食らいました。だから、そうだ、1回じゃ、こんな、これ、わかんないよ、自分でもって

松坂桃李:そうね。

広瀬すず:ちょっと思って、もう一回観れるかなと思って、「データありますか?」って言っちゃったりしたくらい、本当に観れば観るほど、いろんな人の切なさと、優しさと、情と、狂い方に、グサグサグサグサ、心をやられてて。だから、ああでした、こうでしたって何も言えなくて、監督に、観終わった後は「あ、ごぶさたしてます」っていうのだけ言って、逃げるように帰りました。言葉を求められたら、たぶん文を思い出して泣いちゃうかもと思って(笑)

松坂桃李:(笑)

広瀬すず:だめでした。

内田絢子:でも、いまそうやってお話ししてくださった、お互いを思う愛おしさというのが、まさにこの作品を観終わった後の一番あふれてくる感情だと思うので、ぜひ皆さんも劇場でご覧いただきたいなと思います。

松坂桃李:はい。

広瀬すず:ぜひ。

内田絢子:この時間は、来週5月13日公開の映画『流浪の月』主演の広瀬すずさんと松坂桃李さんにお話をお伺いしました。いろんなエピソードをありがとうございました。

広瀬すず松坂桃李:ありがとうございました。

 

 

内田絢子:今日ご紹介した映画『流浪の月』は、更紗と文が出会った、とある夏から始まるストーリーです。今日は主演の広瀬すずさん、松坂桃李さんのインタビューをお届けしましたが、この作品に向き合った時間、そして更紗と文、それぞれが2人の心の中に今もいろんな感情を届けてくれているんだなというのが、お話を聞きながらも思いました。

松坂さんが、そういえば、台風が撮影中に来て、でも、その台風の雲が一瞬切れた瞬間に撮影した橋の上のシーンもすごくきれいで大好きです、というのをおっしゃっていて、よかったらそんなシーンもぜひ見つけてみてください。

「事実と真実は違う」ということを何度も何度も突きつけてくる、そんな映画でもあります。いろんなことを考えさせられるし、そして、とても美しい映像にも注目してご覧いただきたいです。

来週5月13日金曜日から映画『流浪の月』公開となります。

 

 

心にしみわたる、とても素敵なインタビューでした。