宮藤さんと伊勢さんが『孤狼の血level2』と『空白』について語った部分

特集6:今年見た映画ベスト3/大渋滞~宮藤官九郎と伊勢志摩のまとまらない映画の話 Dec 24 2021

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孤狼の血level2』 について

宮藤官九郎:じゃ、次お願いします。

伊勢志摩:私は、世間の皆様にも今さらで申しわけないんですけど、『孤狼の血level2』。

宮藤:下半期か、あれ。

伊勢:下半期ですよ。

宮藤:また、村上虹郎と一緒に芝居してたしね。

伊勢:そうなんですよ。ちょうどそのときに……ちょい前、稽古中ぐらいのときだ。

宮藤:俺が観たのは本番中だったかな。

伊勢:私も本番中だったんですけど。いかがでした?

宮藤:2つとも、『level2』もそうだし、2本目ですね。2が好きなんですか?

伊勢:2だね。今年の下半期は2で。どうでもいいんですけど。

これも今さら私がどうこう言う話でも全くなくてですね

宮藤:でも、『孤狼の血』って、1作目は松坂桃李と役所さんの映画で、役所さんいなかったらどうなっちゃうんだろうと思いましたよね?

伊勢:思いましたよね? 思いましたけど、ちゃん(と)……全然というか、またこれも違う。

宮藤:違う作品だよね。同じキャラが出てる違う作品というか。

伊勢:エンターテイメントぶりの方法がちょっと違うというか。

宮藤:ああ、確かに。

伊勢:エンターテイメントでしたね。『level2』のほうはね。

宮藤:『2』のほうがね。1本目のほうがやくざ映画に対するオマージュが強かった。

伊勢:オマージュみたいな。ある種類の人にすごくアピールしている感じだけど、こっちのほうは、もっと多くの人にアピールしている感じがしました。撮り方とか。

宮藤:そうかもね。

伊勢:そういう話もありつつですけども、ストーリーとか言ってもしょうがないですけど(笑)。

宮藤:言いましょうよ(笑)。

伊勢:ここで言ってもしょうがないですけど、広島の裏社会をおさめていた大上が死んで3年。大上というのが役所さん。伝説の悪徳刑事というか。その悪徳だった理由もちゃんとあるわけなんですね。自分もやくざと同じところにいないと、さらに上から警察としてはやっていけないぞ。やくざぐらいのところまで混じり込んだ上で……。

宮藤:清濁併せ呑む。

伊勢:清濁併せ呑んでコントロールしていかないとめちゃくちゃになるぞという意思があってやっていたんですけど、彼が死んでしまった。その弟子じゃなくて、何ですか?

宮藤:新米刑事だった松坂桃李

伊勢:桃李さんの名前は何ですか? 日岡という刑事が役所さんの遺志を継いで、悪い感じの刑事になってるわけですよ。そこに鈴木亮平さん扮する

宮藤:ヤバい奴ね。

伊勢:ヤバい奴が出所してくるんですね。ウエバヤシ? カミバヤシ? 鈴木亮平さんが出所してくる。そういうストーリーなんです。また広島市呉市の――呉市じゃないんですけどね。

宮藤:呉何だっけ?

伊勢:まあまあ。

宮藤:(笑)ノートに書いてきてんのに、そこ書かないってすごいですね。何のノートなの?それ。漠然としたノートなの?(笑)

伊勢:思ったことをべろべろべろと書いてるから何だかわかんない。

宮藤:クレヤマ? 呉原市。

伊勢:そうです。呉原市が

宮藤:しっかりしてください。

伊勢:はい。呉原市がまた血みどろのやくざ戦争に突入していくという話なんですけれども。

宮藤:どこが凄かった?

伊勢:どこですか? やっぱり我らが虹郎。我らがっていうか、別にもう我らじゃないけど。

宮藤:うちの虹郎よかったよね。

伊勢:うちの虹郎が、脚本的にもすごく

宮藤:いい役だったね。

伊勢:いい役だったですよね。

宮藤:自分がスパイじゃないけど、警察にちょっと

伊勢:情報屋とかスパイ的な。

宮藤:要するに警察の犬みたいな。それを隠してやくざの世界で生きているんだけど、ちょっとずつばれていって。だけど、彼にはお姉ちゃんがいて、そのお姉ちゃんが桃李くんとつき合っているんだよね。

伊勢:そうつき合っているんですね。ママ。

宮藤:そういう関係があって。要するに、今風に言うと、可哀想な人生を歩むフラグが立ちまくってる。

伊勢:うん。立ちまくってる。しょっぱなから立ちまくってる。

宮藤:しょっぱなから、こいつ可哀想だろうっていう。

伊勢:そして、お顔を見た瞬間から彼は哀愁漂う。

宮藤:かわいそう。犬みたいな顔してるよね?

伊勢:顔っていうか、持ってる空気が

宮藤:犬みたいだよね?(笑)

伊勢:本当に孤独な感じがして

宮藤:もう一回聞くけど、犬みたいじゃない?

伊勢:(笑)

宮藤:小犬みたいじゃない?

伊勢:犬ですね。はい、犬、犬。あとね、彼、稽古場とかに来たりするときの歩き方がヨタヨタしてる感じがまた「大丈夫?」って声をかけたくなる犬っぽいね。

宮藤:小犬っぽいよね。

伊勢:そうそうそう。それはいいとして、彼ね言ってましたよ。ラジオに言って喋りますよ。言いたいことあるんですよって言ってましたよ。

宮藤:ああ、そうなんだ。

伊勢:言ってました、言ってました。言わせてくださいよ、みたいな。言わせてくださいよって言ったかどうかわかんないけど、喋りますよ、いっぱい喋りますよとは言ってた。これについて。

宮藤:虹郎の愚痴?

伊勢:いやいや、『孤狼の血level2』に対していろいろ言いたいことあるんだって。悪口じゃなくてね。

宮藤:いい映画だって。

伊勢:いい話をいっぱいしたいって言ってました。

宮藤:現場のね。

伊勢:ええ。で、虹郎さん、すごく役が合って、当て書きなのか何だかわかんないけど、バッチリだったなっていう。

宮藤:あの役は確かに。もしあれが昭和の東映やくざ映画だったら誰ですか?

伊勢:誰だい?

宮藤:川谷拓三じゃないでしょ?

伊勢:拓三じゃないな。

宮藤:川谷拓三だとちょっと悲しみが足りないもんね。

伊勢:悲しみの種類がちょっと違うんじゃない? もうちょっと目が潤んでる系の可哀想さ。誰?

宮藤:若い役者だよね。

伊勢:それ考えておけばよかったー。しまったなー。そういうのをここで言うと面白かったのにね。

宮藤:そうですね(笑)。

伊勢:考えてなかった。じゃあ、考えてなかったということで、あと凄かったのは中村梅雀さん。

宮藤:中村梅雀さんの役は本当凄かったですね。中村梅雀を自分で裏切るみたいな。

伊勢:そうそう(笑)。梅雀以外にないっていう。キャスティング的に。そう思いませんか?

宮藤:今考えたら、最後まで観たら、梅雀で。

伊勢:梅雀なんだなっていうか。これは監督の、監督のというか、キャスティングの妙じゃない?

宮藤:妙だよね。

伊勢:キャスティングいいですよね。

宮藤:白石(和彌)監督ってたぶんすごく冷静だし。だからだと思うけど。あの役、梅雀じゃなかったら全然印象違ったし。

伊勢:印象違ってたし。なんだろうね、意味が違ったというか、梅雀さんなんじゃないですか。

宮藤:そうなんです。

伊勢:そして、梅雀さんの奥さんが宮崎美子さんというのもまた。

宮藤:またこれもいい。

伊勢:凄いんです。キャスティングが凄いいいなあと思いまして。

宮藤:ね。警察官だっけ?

伊勢:元公安。

宮藤:元公安の。

伊勢:好々爺みたいな。もう俺引退するんだ、みたいなかわいい感じの巡査だか何だかわかんない、刑事なんです。

宮藤:同僚だけど、年ははるかに上の。桃李くんに「飲みに行こうか」つって行くと、どこか店に行くのかなと思ったら、自宅なんだね。

伊勢:そうそうそう。

宮藤:社宅みたいなところ。そこで「タコ飯食え」みたいな。タコ飯がうまくてとかって言って。

伊勢:あのシーンがあって、またさらに、なんていうのかな、凄いじゃないですか。あれがあるからこそ判子を押される。中村梅雀に判子を押されたのにっていうのも凄いなと思いまして。

それで、全然関係ないんですけど、早乙女太一さんがやってた役名が、ハナダマサル(花田優)って言うんですよ。なんでハナダマサルなんだっていう。

宮藤:(笑)ほんとに?

伊勢:映画観てるときってさ、一々、「あ、早乙女太一だ」と思うけど、早乙女太一の役名を考えてないじゃない。あと、呼ばれてもいないし。呼ばれてたのかもしれない。呼ばれてたらわかるけど、花田だけでしょ、たぶん。ハナダマサルとは呼ばれないから。今日ここで喋るつもりで書いたら、ハナダマサル?(笑)どういう気持ちで……。

宮藤:ハナダマサルってどっち? お兄ちゃん?

伊勢:お兄ちゃん。だってさ、花田って名字珍しいじゃない? ありふれた名前でもないのに、なんで花田で。

宮藤:架空の役名だとしたら、花田にした時点でマサルはないよ。

伊勢:ですよね。

宮藤:花田だとしたらマサルは選ばないね。

伊勢:そうそうそう。

あと、もう一つ言いたいのは、呉市ふるさと納税で、孤狼の血グッズが(笑)送られてくるんですよ。クッションカバーとね

宮藤:孤狼の血の? 血がついてるの?

伊勢:クッションカバーはね、チンタ仕様ってなってて、豹柄だった。

宮藤:あれだ、虹郎くんの衣装から。

伊勢:虹郎くんの衣装が豹柄だから。

宮藤:欲しいね。

伊勢:あと、トートバッグとか湯飲みとか、そういうのが呉市ふるさと納税に入ってましたよ。

てな感じ(笑)。

宮藤:おもしろい情報。最後ありがとうございます。

 

伊勢:あと、桃李さんて指の爪、すっごいきれいなの知ってる?

宮藤:知らない!(笑)

伊勢:私、もうね、桃李が出たら、手しか見えない。

宮藤:そこ見てない。これから見る。

伊勢:あえて気づいたわけじゃなくて。

宮藤:手の寄り、ありました?

伊勢:寄りなんかなくても

宮藤:わかるぐらい。

伊勢:ほんときれいだから。

宮藤:手が?

伊勢:うん。皆さんに桃李の爪を見てほしい。

宮藤:と、ふるさと納税

伊勢:桃李の爪とハナダマサル

宮藤:早乙女さん、ハナダマサル。わかりました。ありがとうございます。

 

『空白』について

宮藤:私、3本目。これは邦画。これは正直、先週ぐらいに軽く喋っちゃってるんだけど、『空白』。詳しい情報は、ウィキペディアとかで見ればわかると思うんであれですけど、古田新さん演じるお父さんが、自分の娘、あまりちゃんと育ててなかった。シングルファーザーなんだよね。漁師で。中学生の娘がいて、だけど、あんまりかまってなくて、その娘がおしゃれしたくて、スーパーでうっかりマニキュアを万引きしたのかな?しようとしたのかな?いや、してないのかな?ぐらいのタイミングで松坂桃李くんが

伊勢:店長ですね。

宮藤:店長なんだけど、そのスーパーの。ちょっと君待ちなさい、万引きすんだろつってとめたら、ヤバいつって娘が走って逃げちゃうんですよ。それを追っかけてたら、車に轢かれて娘さんが死んじゃう。あの子は本当に万引きしようとしてたのか、してなかったのかということを、後から古田さん演じるお父さんがどんどんどんどん追い詰めていく。

伊勢:店長を。

宮藤:店長を。マスコミがまた、この店長が悪いんじゃないかとか大騒ぎする、みたいな。

伊勢:むしろ、また今度それが騒ぎになると、可哀想なんじゃないかつってマスコミが盛り上げるんだよね。

宮藤:そうそうそう。とにかくスーパーが営業しづらくなっていく。で、まだ奥野瑛太は出てこない。

伊勢:うん(笑)。

宮藤:僕、この映画、この間、奥野映画祭で奥野瑛太目線でこの映画のことを喋りましたが、この映画、はっきり言って、松坂桃李、古田新、すばらしい。2人とも、だけども……。

伊勢:はい、すばらしい。

宮藤:俺、古田さん、ケータイ持ってないからメールできなかったけど。

伊勢:はい。私もそうです。

宮藤:自宅の留守電に入れたいぐらいすばらしかった。

伊勢:ほんとです。私も、古田さんに生まれて初めて心から話したいって思った。っていうか、軽くじゃなくて真剣に。

宮藤:本意気でね。それぐらい凄いよかったし、桃李くんもすばらしかったけど、何しろこの映画の配役としてもうこれ以上ないと思ったのは、寺島しのぶさんですよ。

伊勢:びっくりした、私も。

宮藤:スーパーで働いているパートのおばさんなんだけど、「店長は何も悪くない」つって店長をかばうんだけど、そのかばい方があまりにも行き過ぎてて、ちょっと行き過ぎてて、店長も、ごめんなさい、ちょっと無理っていうぐらい。「私たち、ビラまいて店長の無実訴えましょう」とかって言ってくる感じ。

伊勢:ポジティブ過ぎて、何にでもやる気がある人。前向きに考えましょう、みたいな感じの人なんだよね。もともとが。そのエネルギーが全て桃李さんに向かったっていう。

宮藤:桃李くんに向かっていって、店長悪くないんだから、何もやましいことないんだから営業しましょうよ、とかつってスーパーを何とか営業しようとするんだけど、それすらも桃李くんからするとプレッシャーというか、もう勘弁してくれ、みたいになっていくみたいな。

そのおばさんが、一番桃李くんがどんどん追い詰めてられておかしくなってたときに、2人で店の中で掃除か何かしたときに、急に目が合って、いきなり、いきなりですよ。

伊勢:(笑)

宮藤:いきなりキスするんですよね。

伊勢:そうそうそう。あ、ごめんなさいって。

宮藤:「あ、ごめん。私みたいなおばさんが」って言うんです。

伊勢:あるー。

宮藤:あるんだ(笑)。

伊勢:あるー。あるじゃないや、そのシーンがあるー……いやいや、私は、あのシーンを観たときに、これを演じるって

宮藤:凄いよね。

伊勢:凄いと思う。ちょっと私、NG。あの状況が本当恥ずかしいと思うわけ。それを再現することが。

宮藤:それで、「ごめんなさい、無理です」って桃李くんがちょっと引いちゃって、ごめんって言ったときの、「あ、私みたいなおばさんだめよね」っていうあのセリフ、言いたくないでしょ。

伊勢:史上最高にやりたくない役じゃない? それを引き受けてるのがかっこいい。

宮藤:そう。かっこいいなあと思って。

伊勢:そうなのよ。びっくりました。

宮藤:あの映画の一番きつかったところってあそこだと思うんですよ。

伊勢:じゃないですか?

宮藤:きついと言っては変だけど、何て言えばいいかな。

伊勢:きついじゃなくて、凄い(笑)。

宮藤:ここやるんだ、というところというかさ。それは想像しているじゃない。観てるとき。彼女があまりにも店長に肩入れしてるから、好きなんだろうなっていうところは想像するじゃないですか。でも、その先って、できれば観ないで映画館出たいなっていう(笑)。

伊勢:そうそうそうそうそう。あそこまでやらないでほしいっていうか。

宮藤:そこをぐっと踏み込んで、しかも、いや、そういうんじゃなくて、みたいになるあの感じって、たぶん多くの人、経験もしてるだろうし

伊勢:ああいう気持ちね。

宮藤:ああいう気持ちは想像ができるだろうし。

伊勢:だろうね。

宮藤:あの映画の中で、俺、あのシーンだけ繰り返し観たいぐらいです(笑)。

伊勢:あれさ、ほんと、お芝居の勉強になります。

宮藤:お芝居の勉強にもなるし。

伊勢:勉強にもなるんですけど。あの役きついっつーか。

宮藤:きついというか、何だろう。役だと思ってなきゃできない。

伊勢:そうそうそうそうそう。でも、役だと思ってなきゃできないけど、やるわけじゃん、本気で。恥ずかしい、しまったっていう気持ち。自分でもしああいう状況に、役者じゃなくて、人間がなっちゃったらさ、自殺したくなるよね。

宮藤:(笑)

伊勢:冗談じゃなくて、ちょっと自分が鬱状態になったりしたときにあれを思い出したら。

宮藤:ワーッとなるよね。

伊勢:なるんじゃないかなあっていうぐらい、辛い。

宮藤:1回しか観てないのに、あのシーンだけ異常に覚えてるんです。

伊勢:そして、私も頭が下がったもん、寺島しのぶさんに。

宮藤:凄いと思って。だから、もし寺島しのぶ映画祭があったら、あれなんです。

で、その後に、寺島さんが炊き出ししてるのかな。

伊勢:ありました、ありました。

宮藤:炊き出ししてるシーンで、ちょっとどんくさい女の子が炊き出しのカレーを全部こぼしちゃうんですよ。したら、それに対しての、キス未遂みたいなシーンの後だったからというのもあるんだけど、めっちゃ怒るんですよ。

伊勢:そうそうそう。

宮藤:「何やってんのよ!」あの怒り方。

伊勢:たぶんあれ、映画的には、あれよりもキスの後、時間があいてるはずなんだよね。でも、ああいう人だっていうことでしょう。だから、それって本当に嫌な人じゃんというかさ。

宮藤:嫌な人だと思ってない。

伊勢:そうそう。自分が嫌な人だと思ってないんでしょう。

宮藤:だから炊き出しもするわけだからね。ボランティアしてるわけだから。

伊勢:それを客観的にああいう人を見たら、嫌だなあ、自分はああいうふうにならないようにしようと思うタイプなのに、それを演じなきゃいけないというか、演じてるしのぶさんが本当に。

宮藤:凄いなと思って。あれ、もしあの人の人生を道徳の教科書に書くとしたら、どういう言葉で書いてあげたらいいのかなって。だって、悪いこと何もしてないじゃん。

伊勢:そうそうそうそう。

宮藤:人のために、人のためにやってるのに。

伊勢:叱るのも別に悪いことじゃない。ミスしたから叱ってるわけだからね。

宮藤:何も悪いことしてないのに思うようにならなくて、ついボランティアでよかれと思ってやってたカレーを女の子がこぼしたときに、「何やってるのよ!」って、一番人間の醜いところじゃないですか?

伊勢:でも、別に悪いことはしてない。当たり前に叱るでしょうけど。だから、ああ嫌だなっていう。

宮藤:そういういろんな嫌なことがあった先に出てくる奥野瑛太ですよ。

伊勢:ああ(笑)

宮藤:フラッと出てきて、「やきとり弁当おいしかったっすよね」っていう一言だけで、あれが、サウナから出て水風呂に浸かったみたいな。ああ、ほっとしたー。奥野瑛太出てきてよかったーってなる。

伊勢:でもさ、あの映画からの奥野映画祭にしましょうっていう話でしたもんね。

 

宮藤:スタジオがあと15分らしいですね。伊勢さん。

伊勢:ヤバい! スタジオがあと15分。ヤバい、ヤバい、ヤバい。

宮藤:僕3本言ったからどうぞ。

 

(中略)

 

宮藤:というわけで、出そろいました。出そろったんですけど、今年の1本を選ぶとしたらどれですか?

伊勢:やだ、どうする?

宮藤:俺ね、客観的に言っていいですか?

伊勢:へい。

宮藤:北村有起哉と奥野瑛太が出てるという意味で『すばらしき世界』なんじゃないですかね。

伊勢:私も今、バーッと字面を見て、『すばらしき世界』かなあ。

宮藤:筒井真理子だけ出てないんだけど。つっつーいだけ出てないけど、キムラ緑子が出てるでしょう。

伊勢:そうそう。じゃあ、そういうことでいいかな。

宮藤:そこだけ揃わなかったけど。

伊勢:今年の一番あらわしている。

宮藤:西川美和監督の『すばらしき世界』じゃないかな。

伊勢:そうですね。

宮藤:伊勢さんが上半期に挙げてくれたんですけど。

伊勢:『すばらしき世界』ということに。

宮藤:ということにしませんか。

伊勢:うん。

宮藤:桃李くん、2本も挙げて、桃李くんにあげないのもなんだなと思うんだけど。

伊勢:「爪がきれいな俳優ナンバー1」ということで(笑)。本当に凄いから。きれいにしててきれいなんじゃないの。持って生まれたものの爪のきれいさが。私、桃李さんにもし会ったら、爪を猫みたいにして会わなきゃいけないぐらい、恥ずかしい、みたいな。

宮藤:私の爪なんか恥ずかしい。

伊勢:ほんときれいだから。