『狐狼の血LEVEL2』白石和彌監督インタビュー

 

キラキラ☆シネマ 2021年8月19日

 

 

小笠原章江:上林という役が本当に強烈で、今までの鈴木亮平さんのやられてた役と真逆と言っていいんじゃないかと思ってるんですけど、その辺のところをどういう思いでキャスティングをされたんでしょうか。

白石和彌監督:上林って、本当、強烈は強烈じゃないですか。これ、やれる人、誰いるんだろうというのは、本を作りながら思ってたんですけど、『ひとよ』で初めて仕事させてもらった時に、いい人はいい人なんだけど、彼の仕事としての役への取り組み方とか、俳優としての立ち居振る舞いとか見てた時に、これはたぶん問題なくできるなというのはすぐにわかって、身長も(松坂)桃李くんと同じように大きいし、なおかつ、骨太な感じとか、横幅のある感じとか、これは亮平くんしか多分いないなと思って声をかけたっていう感じです。

続編で、しかもオリジナルにさせていただいて、日岡をどう輝かせるかっていうことを考えた時に、強烈な悪役がいて、それが輝けば輝くほど、凶悪であれば凶悪であるほど、日岡も輝いていくだろうなとは思ったんですよね。

ただ、前回は役所(広司)さんもいて、大上というキャラが物語を牽引してくれたということで、その継承と、あと喪失の話だったんですよね。今回は、大上がずっと喪失したままの中で何を描いていくか。それは前作に引き続き“正義とは何か”ということだったり、継承したはずの日岡が今どうなっているかということだったり、あとは、警察内でのパワーゲームというか、ひとつ『孤狼の血』シリーズの大きな魅力でもあったので、そこは生かしながら、ヤクザの世界を思い切り描くというのはあったとは思います。

小笠原:松坂さん演じる日岡刑事は、前作より凄味を増しながらも、どこか頼りないというか、儚げな感じが漂っているという、その微妙なキャラクターがすごく心惹かれました。

白石:ありがとうございます。そうなんですよね。大上の代わりにヤクザの世界をバランスをとって牛耳ってはいるんですけど、多分まだ至っていないんですよね、いろんなことが。だから、そこを背伸び、若干したりしながらやっていて、この作品では、やることなすことうまくいかないのがその儚さにつながっていくと思うんです。

一方で、鈴木亮平演じる上林って、人を殺しちゃうのはちょっとアレですけど、それ以外のことは自己実現をずっと果たしていくという、対比させているので、そこが桃李くん、日岡の儚さみたいなことにつながっているのかなとは思います。

だけども、桃李くん自身が、この3年、同じ時間を過ごしていく中で、俳優としても大きくなってきたとか、人としても大きくなっていて、久しぶりにこの作品で会った時に、これは全然大丈夫なんだなっていう感じがものすごいしたんです。前作もそうだし、その前の『彼女がその名を知らない鳥たち』の時からの付き合いで言うと、本数はそんなには多くないですけど、結構桃李くんとの付き合いが長くなってきて、成長の速さと――成長の速さって上から目線になっちゃうけど、人として大きくなっていく姿みたいなものを間近で見れて、逆に安心して日岡を任せられたというか。

あとは、桃李くん自身も日岡という役にすごい思い入れが強かったので、でも、そんなに大きく、今回、こうこうこうでという話はせずとも、なんかお互い分かり合えていたという感じは、すごいありますね。

小笠原:そして、すごく男っぽい映画ですけれども、女優さんもたくさん出ていらっしゃって、私は特に西野さんが演じられた近田真緒という役にすごく心惹かれたというか。

白石:こうやって会っていると、感情をそんなに出さないんだけど。

小笠原:あ、そうなんですか?

白石:はい。なんだけど、やっぱりすごい、逆に押さえ込んでる感情がすごい出て、よく見えるというか、ちょっと不思議な……それはたぶん乃木坂の時からそうだと思うんですけど、その感じが僕はすごい好きで、今回お願いして、真緒というキャラクターを西野さんが演じてくれて、本当よかったなと思っていますね。

「キラキラ☆シネマ」をお聴きの皆さん、『孤狼の血 LEVEL2』監督の白石和彌です。『孤狼の血 LEVEL2』、前作よりいろんな部分でレベルアップしたという願いを込めて『LEVEL2』というタイトルにしてるんですが、映画を観てくれた人みんな「とにかく元気が出ました」って言ってくれます。コロナ禍とか、いろんな大変な世の中ですけど、そういうものを、いろんなものを吹き飛ばせるような映画になってます。

 

あと、あっちこっちの取材では、鈴木亮平くん演じる「上林がとんでもねぇ」っていう前評判があるんですけど、それは本当にそのとおりなんですが、僕がこの映画、一番好きなのは、その上林にボロボロにされながらも、諦めずに何度も立ち上がる、松坂桃李演じる日岡の姿に、僕は作っていて一番感動しました。ぜひその姿を映画館で見届けてくれたら嬉しいです。