おじいちゃんわかった!

 

サワコの朝 2020年3月21日 ゲスト:角田光代

 

デビュー後しばらくは評価されず、一番最低にドヨーンとした時は、3カ月間書くのをやめた。夕方4時に買い物に行って、料理を作り、2時3時まで飲み続け、飲み疲れて寝るという生活を続けていたが、その生活に飽きて「小説を書きたいな」と思った。

 

ナレーション:再び書き始めた角田さん。その後、発表した一冊が大きな転機となりました。それは、「隠し事をしない家族」と言いつつ、実は、一人ひとりが秘密を持っていたという『空中庭園』。この作品を機に、作風が大きく変わったそうです。何があったのでしょう。

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角田:デビューしてからずっとおじいちゃん編集者に「あなたの書くものは暗い、暗い」と言われていたんですよね。

阿川:そんなに暗かったんですか?

角田:暗いですね。「しかも厭世的だ。よくない、よくない」とずっと言われていたんですけど。

阿川:厭世的というのは、要するに、希望につながらないということ?

角田:はい。世の中に絶望している。

阿川:そこで終わっちゃう?

角田:はい。で、おじいちゃんの編集者が言っていたことは、「書いているものが暗い。その後に希望を書かないとダメだよ」と言っていて、「世の中に残っている全ての小説には希望が書かれている」。

阿川:そうなの?

角田:(笑)私も「そうなの?」って思ったんですけど。

阿川:そうかな?

角田:「希望を書こうとしないとダメだよ」と言われていて、それがわかんなかったんですね。おじいちゃんが言っていることが。おじいちゃんだからそう言うんだろう。

阿川:(笑)

角田:私に何か説教がしたくて。

阿川:私の世代に理解できないんだろうと。

角田:はい、はい。ずっとそう思っていたんですけど、『空中庭園』で、久世光彦さんていらしたじゃないですか。

阿川:はい。ドラマの。向田邦子さんと仲よしだった方。

角田:久世さんが書評を書いてくださったんですよね、男性誌に。それを読んだら、「ある家族がいました。平和そうに見えて、でも、実はこんなに秘密があって、実は全然いい家族じゃなかったというふうに暴いて見せて、だからなんだ、と思ってしまう」という書評を呼んだときに、10年以上言われ続けてきた「あなたの書くものは厭世的で暗い」というのがバチーンとわかったんですよね。わかった!おじいちゃんわかった!

阿川:(笑)

角田:このことを言ってたんじゃないかと思って。

で、その時に日記に、あまりにもガーンとわかったので、日記に、自分が世の中をどんなに信じられなくても、汚いものに目が行ってしまっても、きれいなものを書くことはできると書いて、世の中がきれいかもしれないということを書いてもいいんだというふうに考え直して、で、次の小説…

阿川:『対岸の彼女』。

角田:はい。(『対岸の彼女』)は、絶望や失望で終わるのはやめよう、とは思いましたね。

阿川:それは、その後の作品にも必ずそういう意識を持つようになさったんですか?

角田:意識を持つようになりました。

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魅力的な方だったな。自分を大きく見せようとしないところが大好き。