仕事をセーブして楽になったこと

 

佐久間宣行オールナイトニッポン0(ZERO) 2024年1月31日

 

DJ松永:自分で言っていて全角度から抜かりないなと思うのは、ちゃんと下積んでもいるというこの抜かりなさ。
佐久間:下積んではいるじゃん。ちゃんとね。
松永:そうなんですよね。急にぽっと出じゃないという。
佐久間:自分たちでCD作って配ってたわけだからね。
松永:配ってましたね。自分でCD作ってやってましたから。
佐久間:謎のラッパーにぼられたりしてね(笑)。
松永:しましたよ。到底ここでは言えないようなことをいっぱい。いっぱいありましたしね。ラジオも自分で家で録ったりしましたからね。上板橋ワンルームにマイク立てて、R(‐指定)呼んで、見よう見まねで。
佐久間:オールナイトとかになる前の段階でラジオやりたいなと思っていたんでしょ?
松永:そう。俺とRしかいないのに、俺、自分で台本作ったりしてましたね(笑)。
佐久間:オードリーの『小声トーク』と変わんないじゃん(笑)。やってること。
松永:本当に(笑)。やってましたね。
佐久間:昔は、バラエティにたくさん出てた頃は、“誤解されることに我慢できるかどうか”という話をしてたんだよね。
松永:はいはいはい。
佐久間:要は、ラジオのCreepy Nutsまでを全部聞いている人たちは、Creepy Nutsの文脈がわかってるじゃん。例えば、今日の発言とかも。それがメディアに出始めて、バラエティに出た時に、「誤解されるということに対して」、最初「我慢できないかも」で、バラエティに出てた頃の松永の末期というのは「誤解されるのはしょうがないと思おう」と言ってた時期だったよね。それが今また別のゾーンに入っているでしょう。
松永:そうですね。テレビに出てると、収録が次から次へと来るから、気にする余裕がないぐらいのサイクルになってきますしね。
佐久間:そうそうそう。本当に売れてる人たちは、そこに対して、誤解とか反省はしてたら心が持たないというふうに。
松永:しかも自分で音楽やってて、その誤解している層って自分のターゲットでも何でもないから。
佐久間:そこに気づいたのがでかいんでしょう?
松永:そうそう。だから、正直全然割り切って考えられてて。
佐久間:ネットニュースで「チー牛」と言ってた人たちは、松永のライブには来ない人たちというか、曲がね。
松永:確かに「チー牛」と言われることに対しての危機感はないですね。でも、そういうものだし、あまりそこを気にしててもね。最近、メディアも出なくていいから、全然自分の気持ちも話さなくていいから、めちゃくちゃ楽っすね。人間を売らないといけないじゃないですか。
佐久間:メディアに出続けるということはね。特にバラエティはそうだね。
松永:いい意味で自分の感受性のポジティブもネガティブもアンテナを研ぎ澄ませてないとなかなか話すことが出てこなくて。でも、それ結構敏感になっちゃって傷つきやすかったりとか。
佐久間:バラエティって、しかも思っていることを少し膨らませて言ってショーにしていくからね。
松永:そうですね。しかも、アンテナを過剰に敏感にしているから、みんな被害妄想が強くなってくる。今さらそれ?とか、ちょっとずれていたりみたいなところの被害妄想のアンテナも立てて。そこのコントロール、ムズいじゃないですか。
佐久間:そこのコントロール、ムズいね。センスとも言えるし被害妄想とも言えるっていうのだもんね。
松永:でも、絶妙にそこ、その人がいるのは、これはただ幼稚なだけになってくる年齢とか仕事のポジションとかって、本人わからないじゃないですか。
佐久間:わかんない。同じやり方でずっとやってると、いまだにそんな人のいじり方してるの?になってくる時が急に来るんだよね。怖いんだけど、それって。
松永:怖いですよね。
佐久間:それのアンテナも研ぎ澄ませなければいけないしね。
松永:そう。で、実際めっちゃ発生しているじゃないですか。
佐久間:うん、してる。
松永:売れている人に。
佐久間:売れている人にも、今までのやり方とか、今までの価値観がアップデートされてないように見えちゃう時期が急に訪れるんだよね。
松永:あります。
佐久間:それもちょっと松永は感受性で感じてたほうだから、それもひっくるめてしんどい時期があったんでしょう?
松永:それが何なんだよと思う。不服というか。なんでこんな自分の気持ちを人前で喋って商売にしないといけないんだろうな、みたいな。
佐久間:ああ、なるほどね。
松永:なかなか、そこで成果が出てから、その人自身の幸せになっていくかってムズくないですか。そこの両立、もともとそこに対して耐性がついてたり、そこに対して才能がある人じゃないと。
佐久間:ああ。でも、そうだと思う。だから、本当に腹括っている人以外だと、バラエティでは長く活躍するのはね。長く活躍して、一回休んで戻ってくるような、例えば、いるじゃない、女性タレントとか。そういう人は本当に鉄人だもんね。
松永:いや、ほんとに。あれ、特化型じゃないですか。
佐久間:そうだね。
松永:ほんとにすごいじゃないですか。そうしなくてよくなったというのは、そもそもそこで食ってなかったから、まあ。
佐久間:そこが松永のすごいよかったところじゃん。
松永:でも、ほんとラッキーですけどね。たまたまというか。みんなここから簡単に降りれないじゃないですか。
佐久間:降りられない。向き合い続けなきゃいけなくなる。
松永:ほかに仕事があって、そこで食ってる人は、そこを降りて。
佐久間:降りる、降りる。作家さんでバラエティに出てた人とかは休めるけどね。
松永:降りれるけど、実際にいざ自分がずっとそこに出続けている立場になったら、今の選択を取れないから、ポジショントークだなとは思いつつですけど。
仕事をセーブしてすごい楽になったのは、いいことを言わなくていいというのが最高ですね。
佐久間:メディアに出続けると、バランスのこととか、あとは、喋ることの中で自分の中の一番善良な部分を出したりしないといけないというか。
松永:いけない。あと、求められるじゃないですか。あと、ある程度のポジションに行った人はいい話を求められて、いい話をする人にどんどんなっていくっていう。周りもどんどん、聞き手とか、出るところも、いいことを言ってください。
佐久間:ちょっとの悪いことをがっかりした感じにされたりするよね。
松永:されちゃいますね。
佐久間:それは俺も、売れた人たちは大変だなと思う。「がっかりしました」ってすぐ言うんだよね、みんなね。
松永:公的な存在になってきません?
佐久間:なってくるね。
松永:なってくるし、いいこと、皆さんに応援をとか、誰々とか、未来の若者とかにメッセージをみたいなこととかになってくるから。
佐久間:いくね。いく、いく。
松永:しかも、言ってると気持ちよくなってくるじゃないですか。
佐久間:うん、うんうん。社会的責任が重荷に感じる人と、あと、それがいつの間にか笑顔が張り付いていく人とね。
松永:しかも、それって気持ちいいし、一番みんなからお手軽に承認される一番最短ルートだ。
佐久間:いいことだけ言うことね。
松永:いいことだけ言う。めちゃくちゃいいこと言う。
佐久間:いいことだけ言うと。
松永:いいこと売人。いいことを全部希釈して薄く売ってる感じになっていくの、いや、これ、ちょっとそれに中毒になっている。
佐久間:メディアに出続ける選択を取ってたら、自分たちもそっちに行かなきゃいけないかもなという怖さもあったということ?
松永:怖さ……いや、自分はない(笑)。
佐久間:無理だなと思ったということね?
松永:無理! で、それの土俵から離れられたというのはすごいラッキーですね。飲まれていくじゃないですか。中毒になってって。
佐久間:わかる、わかる。でもさ、そんなこと言ったら、オリンピックのDJやった時は、そっちに行く可能性はあったわけじゃん。
松永:ああ。でも、あれ、出ただけですから。
佐久間:出ただけなんだけど、そこからそっちに引っ張られる可能性もあったじゃん。もっときれいな仕事、きれいな仕事に。そうならなかったのは、逆にCreepy Nutsにとってよかったよね。曲も。
松永:確かにきれいな仕事は受ける時怖いっすよね。
佐久間:そう、そうそう。きれいな仕事を受けたら、特にその契約の時期はきれいな人間でいなきゃいけないからね。
松永:すごいオフィシャル権力の仕事とかも来ましたもん。
佐久間:それは来るでしょう。それは来るよ。
松永:それ、怖っみたいな。ありますよね。
佐久間:だから、時々『あちこちオードリー』とかで若林君が、例えば、コンビニがあって、自分の泊っているホテルがあって、目の前で全然車が通っていない。横断歩道がすごい遠くにある。でも、いろんなもの背負っているし、横断歩道をしっかりぐるっと回って渡る。ほかの人はみんな渡ってるけど。というようなことが常に日常で起きるわけだもんね。
松永:それも大変っすね。
佐久間:今の松永にとっては、今の選択は本当によかったと思うし、その結果で計画が出たのは俺たちも嬉しいよね。
松永:俺、今、どのラインまで喋っていいか、バカになってますよ(笑)。すいません、すいません。軌道修正してくれたんですね。
佐久間:(笑)
松永:軌道修正してくれたんですね? ありがとうございます!
佐久間:俺の軌道修正力だよ。軌道修正力じゃない、別に。言ってることわかるから翻訳しただけ。

 

 

『マッシュル-MASHLE-』第2期のオープニング主題歌として書き下ろされた楽曲『Bling-Bang-Bang-Born』が世界中でヒットしていることを引っ提げてのゲスト出演で、ハイテンションの松永さん。

2023年3月までやっていた『Creepy Nutsオールナイトニッポン』では機関銃のように澱みなく喋る松永さんが印象的だったが、久しぶりに聞くラジオでは、なかなか言葉が出て来ない場面もあって、佐久間さんが言葉を補足したり、つないだり、とてもブランクを感じるものだった。

テレビに出ていた時は、ナマ感が面白くもあり、冷や冷やもして、心配なところがあったけど、いろいろ考えていたのね。近況が知れてよかったし、楽しかった。