複雑な気持ち

 

佐藤満春 in 休憩室 2023-07-08

 

(メール)ドラマ『だが、情熱はある』の中で、オードリーさんとサトミツさんが春日さんの自宅むつみ荘で開催していたトークライブ「小声トーク」のシーンがありますが、実際、サトミツさんは春日さんの部屋でトークライブに参加したことがあるんでしょうか。その時の話、どんな話をしたか覚えていますか?

これはちょっと……。今の人は知らないんだろうな。そうだよね。最近――最近といっても、ここ5年、10年で僕のことを知ってくれた方が基本的には多いでしょうから、そういう人はこういう質問になるわな。

知っているも何も、僕は受付をやっていましたからね(笑)。ゲストで出て、翌月から僕は受付をやっているという感じだったかな。それが「小声トーク」の何回目に僕が出て、何回目から受付をしていたかとかは全然覚えてないけど、オードリーと同じ事務所に入って、僕のほうが後に入っているんで、2005とかだと思うけど、入って、その日に若林くんとは仲よくなり、「3600」というポッドキャストを2人で始めたのがその後なのかな。毎日のように遊んでて、当然、仲いいんで、ゲストに呼んでもらいますよね。

そこから、なんかわかんないけど、面白かったのと、家でトークライブをやってたから、普通に――。あれ、どうしたんだろうな、結局。丸いクッキーとかの空き缶に、100円玉とか小銭、お釣りとか、あとは、中にメモ用紙があって、当時、予約がメール予約だったのかな。予約の名前を書いて、受付で、誰々さん、前売り幾らです。幾らか忘れたよ、もう。800円ぐらいだったかな。こうやっていくというその缶があって、それは春日がむつみ荘を引っ越すまであったんだよ。まだあるんだろうな、今の家に。だと思う。そんなのを僕が用意して、靴を整理したりみたいなことをやって。

ゲストで出た時、何の話をしたんだっけな。たぶん、『だが、情熱はある』に関して、僕がゲストで出た回、小声トークの描写はドラマの中でもあったんだけど、そこに僕役というか、僕を描写した役として描かれているドラマで、僕は佐藤満春ですけど、鈴木足秋、スズタリくんがゲストで出ている回なのかな。それとも、時々あったから、受付やってて、そのままちょっと出てみたいなこともあったりとかしたんですけども、そういうことがあったというのが描かれているから――。

そうか、あれを本当のことなのか、何のことなのかわかんないまま観るか。それはそうだよな。あれはドラマだから、描写として全部が本当なわけじゃないじゃないですか。人として描かれていない人もいっぱいいるし、ドラマの中での描写だったりするけど、基本的には若林くんと山里さんの2人のエッセイが軸になってドラマの脚本が書かれているから、出来事としてはあったことがメインに描かれているんだとは思うんだけど、小声トークのシーンに関してはそんな感じかな。

で、1年ぐらいやってから下北ファインホールというところでやったんだったかな。あとは、バイタスという、あれはもうなくなったんだっけな。西新宿にあった劇場に行ったりとか、いろいろやったな。どうしたんだっけな。その後、単独ライブの「シャンプーおじさん」というのもやって、僕も入らせてもらって。その時はもう作家として入っていただけかな。受付はさすがに事務所がやっていたのかな。ちょっと忘れちゃったけど。劇場に行き始めてからは、1番は、受付をやって、照明をやって、音響をやって、みたいなことを全部やってたよ。

その時にどういう関わりをしていたかなんて知らないよね。俺、『スターにはなれませんでしたが』という僕のエッセイでそこを書いていなかったっけな。忘れちゃったな。

それで、(ラジオの)放送時、ドラマは終わっていると思うから、もういいかと思うんですけど、ドラマをやっている時にここの件に触れるのが難しくて。非常に役者さんが凄くて。みんな演技も上手くて、すごいクオリティ。脚本も素晴らしいじゃないですか。

僕役の役者さんが、ドラマだから、えらいカッコいいんですよ。もともと普通にカッコいい人がやってくれているんですけど、その上で僕の登場シーンもえらいかっこいいんですよ。えらいカッコいいというのは、もともとは若林くんと仲よくて、ダラダラ一緒に日常的にいる中で、別に僕は大したことをしていないですけども、2人で話していたことが何かのヒントになっていたり、みたいなこともあったのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。別に僕の手柄だなんていうことは全くないんですけども、何となく関わり合い的には深いは深いので、その中で、ドラマとしてもそういったようなシーンが描かれるわけじゃないですか。だけど、僕の登場というのがメインじゃないから、だけど、意味があることとして描いてくださっているということになる時に、急に出てきて、すごいカッコいいことを言ってスッといなくなる、みたいな(笑)。登場の仕方としてもすごくカッコいい描かれ方に、ギュッとするからなってしまう。現実にはもっとダラダラして、もっとボロボロの服で、もっとお金もなくて、ボサボサの髪でいるだけなんですけど、ドラマとしてギュッとした時に、すごく見栄えもかっこいいし、立ち居振る舞いもすごくかっこよく見えるなっていう。

ドラマのファンの熱心な方とか、あとは、役者さんのファンの方とか、いろんな方が観てくださっていたんでしょうから、僕は別に何かを言うわけでもないですけども、インスタのDMとかで「サトミツさん役の方がカッコよ過ぎて現実と違うから入ってこない」みたいな感想を僕に送ってくる人が何人かいて、「それを僕に言われましても」という感じなんですけど(笑)。

そういう人も多いです。それは、僕のことを知っていればいるほど、あんな奴じゃない。もうちょっとダラダラ、愚痴も言うし(笑)、見た目もカッコよくもないしね。もっと暗い、陰な奴だということなんだろうな。

でもね、凄いなと思うのが、あれはどういうことなのかな。回を追うごとに、どんどん役者さんが僕のちょっと陰ぽい空気をまとっていったりとか、見た目もちょっとどんどん、もちろんもともとがすごくカッコいい方なので、野暮ったくはなってないけど、少しそういうオーラが出てくださってというのも変な話だけど、なってて、役者さんて凄いなと改めて思ったな。ありがたい話ですけどね。

面白いなと思ったのが、今日もまさに日テレで言われたけど、「サトミツさん役の人出てましたね」とか、こういう感じでしたねとかという、ドラマ自体が人気だと、僕も声をかけていただく機会がふえて、僕が構成を担当している「DayDay.」という日テレの番組で、そのスタッフさんが、『だが、情熱はある』を観ているとスタッフさん同士が会話をしているシーンにも何度も出会うこともふえて。

「あれ、サトミツさん出ているんだぞ」「じゃ、今度観てみます」なんて、あるプロデューサーの方があるプロデューサーの方に言われたそうで。放送が日曜だから、月曜の放送の時に、「サトミツさんを探したんですけど、いなかったです」なんて言って。要は、僕自身が出ていると思って探しちゃうということもあって。「僕じゃなくて、僕役である鈴木くんというね」と言ったら、「ああ、ああ」という話になって。

あとは、あの鈴木くんという役が、僕を描写しているということを知らずに観ていてる人もたくさんいる。僕のことを知らない人ももちろんいるから。いろんなことがあるな、なんて思いましたね。

もともと、これ、どこまでどういう言い方をすればいいかわかんないけど、ドラマが始まる時に、ドラマのプロデューサーと「たりないふたり」の演出をやっていた安島さんと、両方から始まる時にご連絡をいただいて、こういうことになるんだって。ああ、そうなんですねなんて言って。もし何かお手伝いできることがあれば。

僕、「たりないふたり」という若林くんと山里さんのユニット自体には、ほぼ立ち上げぐらいの頃から一緒にやらせていただいていたので、当初は、安島さんを含めて、僕を含めて4人でずっと打ち合わせをして、ライブをして、みたいな番組に、テレビ番組になってからかな、バーッとスタッフさんがふえ始めたのは。それまで一緒にやらせていただいて、番組になって、イベントになって、最後の下北の配信まで、ずっと一緒に10年ぐらいやらせていただいていたというのがあるから、ドラマになると聞いて、お手伝いさせていただけるのがあれば、何でもやりますし、ドラマのことなので、僕は関係ないっちゃ関係ないんでお任せしますよ、なんていうことはあって。

で、どういうことなのか本当にわかんないんですけど、安島さんからも、「ドラマだから、フィクション。ノンフィクションではないと。演出がいろいろあるから、いろんなことになると思うよ」とは言われて、「全然好きにしてください」ということじゃないですか。「サトミツのことは描かれないと思うよ」というのは安島さんにすごく強調されて。全然いいじゃないですか。「どうぞ」と言って。

「一応、ドラマのプロデューサーの方にも会ってほしい」みたいなことを言われて、「わかりました」と言って会って、ドラマの企画書みたいなのを見せていただいて、こういう思いで作ろうと思うといって説明されて。想定のキャストがバーッと出ていて、あ、こんなに凄い人たちでやるんだと。その中にもちろん僕のはないですよ。ドラマのプロデューサーの方もおそらく僕のことを知らなかったんですよ。その時は知っていたのか、その直前で知ることになったのか、ちょっとわかんないんですけど。

その時に安島さんと同じことを言われたんだ。要は「ドラマなので、サトミツさんのことを描かないと思います。描かないと決めているわけでもないんですけど、描くとも決めていないので」。こういうキャストなのでとバーッと見せられて、若林くんの役、山里さんの役、ドーンと真ん中に安島さんの写真。安島さん役。3人のドラマとして描くような感じなんだなと思ったの。

もちろん、その時に、そうだよなと。「たりないふたり」として番組になる前は、僕もがっつり絡んでいたし、なんなら若林くんのエッセイに関して、めちゃくちゃ僕の話も出てくるし、それでもここまで「描かない」と断言するということは、なんかなんだろうなと思って(笑)、寂しさはあったけど、あんなに「描かない」と断言されたら(笑)。

でも、確かにドラマにするってなった時に要らないけど、「サトミツさんの要素をほかの人で補填するんで」ってすごい言われたの(笑)。なんか俺、すごい、両方あったんだよね。「それはそうだな」と思うのと、安島さんもプロデューサーの方も「こんなに言わなくてもいいじゃん」ていう。それは、おそらく2人としては、ドラマが始まってから佐藤が全く出てこないということを僕が観たり聞いて、変な風に思わないでほしいということのリスクヘッジ、プラス、どうなるかわかんないしということなんだと思うんですよ。でも、あんなに言わなくてもっていう(笑)。

それは思ってもいいじゃないですか。それは若林くんとの歴史もあるし、なんなら山里さんとの歴史もあるから。『スッキリ!』が始まって、10年ぐらい、毎朝、週4で一緒に。こんなに2人と一緒にいるのに「描かない」って断言されるってすごいと思わない?と思ったの(笑)。でも、お気持ちもわかるから。

自分的に自分の中で嫌だなと思ったのは、寂しいなと思うということは、描いてよと自分で思っているんだと思ったわけ。明確に。それは自分的にすごく、僕の自意識じゃないですか、それって。だから、自分の自意識があぶり出された。2人の説得に対してすごく、あ、俺、こんなにこの複雑な気持ちをしたということは、そこに関して自意識があったのかなとか。本にはいっぱい書いたし、それでいいじゃないです。別に誰から認められるとかじゃなくて、ユニットがよかったらいいし。僕の中で、あとは終わったことになっているというのもあったのかもしれない。「たりないふたり」自体が。いろんな複雑な思いがあって、始まってみたら、第何話かで出てきて「出てくんのかい!」と思ったという(笑)。

そこに対して、ドラマの方の判断だから、ありがたいとも別に思わないし……。「ありがたいと思わない」はちょっと言葉が強いか。「ありがとうございます」ではあるんだけど、無感情であったほうがいいと思うわけ。ドラマは関係ないから。だって、普通に僕と若林くんの関係、僕と春日の関係、山里さんの関係、安島さんとの関係、作ってきたものは揺るぎないわけじゃないですか。だから、どっちでもいいはいいんだよね。だけど、始まる時に2人からのそういうすごいアレがあったから、すごい不思議な……。わかんない、こういう経験てたぶん一生に1回しかないじゃないですか(笑)。なんか面白かったな。

これって僕のこう思った感情が間違っているのかなぁ。みんながどう思うかだけ、もうたぶんドラマは終わって落ち着いているんだとしたら、ちょっと教えてほしいな。僕はそういうことがあったので。別にドラマはドラマだし、関係ないのでいいんですけど。ということでした。