ドラマ『離婚しようよ』の感想

6月22日の配信開始に合わせてNetflixに入ろうと思っていたのだが、韓国ドラマも観てみたいと思い、6月早々に入って、『賢い医師生活』『刑務所のルールブック』『イルタ・スキャンダル~恋は特訓コースで~』を楽しんだ。それらの作品に比べると、『離婚しようよ』は軽いなぁ、少しもの足りないかも、大丈夫かなぁ、がっかりしたくないなぁと思いながら観はじめたのだが、これはこれで好きだなと思ってからは、どんどんのめり込んでしまった。

とにかく小ネタ、オマージュが満載。「巫女ちゃん」「愛の不整脈」「余命4、50年の花嫁」「君の那覇」。愛媛県を舞台にしているので、坊ちゃん、赤シャツ。

また、応援演説をしに来たのに、候補者の名前、日下部が読めなくて「…っかべ候補」と連発したり、“ウーッ”ってなった時に“オッ”となって“ワー”というワードとか、本筋じゃないところも楽しさてんこ盛り。

「東源出版」は大石さんの作品の『あのときキスしておけば』や『知らなくていいコト』で、「週刊イースト」は『知らなくていいコト』と、過去作品に登場したネーミングが使われていたりする。

前半の東海林大志は、なぜにあんなに煩悩まみれなのか。失言も繰り返すし。そこを可愛げがあるとは思えずイライラして、妻の黒澤ゆいが怒りをぶちまけるシーンは胸がすく思いだった。

加納恭二の魅力も私にはいまひとつわからず。でも、夫婦関係が冷えきっているところで、国民的女優である自分のことを全く知らず、ひとりの女として見てくれる恭二に惹かれることは、なくはないのかも。まして色気がダダ漏れであればなおのこと。大志の母でさえ、恭二に手を触れられてポッとしてしまうんだものね。

脇を固める登場人物もクセのある人ばかりで魅力的。

大志の母も、ゆいの母も、なかなかに“毒親”な部分もあるけど、それだけじゃないのが救い。竹下景子さんも高島礼子さんも今までに見ない役どころを振り切って演じて、違う一面が見れた。

ゆいと大志の喧嘩のシーン、尾美としのりさん演じる早乙女と大志の対決シーン、心の声の掛け合いはどれも面白かった。

少路勇介さん演ずるゆいのマネージャー笹井による、「(尊敬できるところ)ないでしょ。あんな夢みがちな雰囲気バカ。いいの顔だけです!」という散々な大志評、松坂桃李さんに「女優の妻とかホントに嫌! 心から嫌!」と言わせる脚本、最高ですね。

眉毛に特徴のある石原ヘンリーK。古田新太さんは、こんな人いるわけないっていう人を成立させちゃう感じがすごい。宮藤さんの筆が乗ったところなんだろうな。

印田薫を演じる板谷由夏さんは作中も実物も大変美しい。印田さん、ゆいちゃん、石原ヘンリーとの「ノースリーブ選手権」は笑った。

池田成志さんの、いやいや、こんな人いる?っていう感じは、『今ここにある僕の危機と好感度について』の澤田教授にも似たクセの強さ。

衣装も皆さん素敵。ゆいちゃん、大志ママ、印田さんの女性陣をはじめ、大志坊ちゃんもスーツ何着持ってるんだ?ってくらいのスーツ姿を見せてくれる。そんなところも見どころのひとつ。

コメディなので、何も考えずに観れるのもいい。失言だらけで中身のない、下半身がだらしない大志にイライラしながらも、どこか憎めなくて、少しずつ変化していく様子を見守るもよし、ゆいが大志に放つ言葉に胸がすく思いをするのもよし、色気ダダ漏れの恭二とゆいの関係にときめくもよし、ほかにもいろいろと笑える部分を楽しんで観るのもよし。

笑って観ていたら、大志が成長していく姿や、離婚に向かっているのに、ゆいと大志が楽しく話すシーンに、結婚生活って何なんだろう、なんでゆいと大志は別れなくちゃいけないんだろうとか、泣けてくるところもある。

それから、選挙について考えさせる部分も入っている。

投票を済ませたゆいが、大志には入れたけど、比例区は…という話。私の住んでいる地方は自民党の候補者が強く、地元愛を持ってやっている人も中には確かにいる。けれど、中央を見ると…というのは、「そうだよね」と頷いてしまうのだ。ほかにも、選挙運動のやり方、BSL-4施設のこと、松山空港の管制権のことを触れられているが、そこを足掛かりに政治のことを考えることもできる。ただ、それは本当に押しつけがましくなく、さりげなくだけど。

結局、最初の懸念はどこへやらで、2周してしまった。いつも韓国ドラマをたくさん勧めてくる娘も3周したと言っていた。

仲里依紗さん、尾美としのりさん、板谷由夏さん、竹下景子さん、山本耕二さん、皆さん桃李くんと相性がいい感じがした。また共演してほしいと思える人たちばかり。

それにしても、桃李くんて、情けない役とか、成長や変化をしていく役が本当に上手ですね。