微妙なバランス

 

伊集院光とらじおと 2019年5月14日

 

伊集院:注目している人います? 芸人じゃなくてもいいです。

佐久間:芸人だったら、僕は、いま、TBSラジオでもやっている空気階段とか。

伊集院:空気階段ですよね。空気階段、ほんとそう思う。

佐久間:面白いですよね。

伊集院:何ですか?あいつら売れないのは。

佐久間:何なんですかね。ルックスでしょうね、売れてないのは。

伊集院:きったねぇですよね(笑)。

佐久間:きったねぇから(笑)。

伊集院:きったねぇから。でもね、ちゃんとマンガの汚さじゃないですか。

佐久間:ああ、確かに。

伊集院:僕の中では、マンガの汚さってあると思うんですよ。それは、「汚い」の中にも、俺なんかも汚い代表だけど、マンガの汚さの人はオッケーだと思うんですよ。僕、たんぽぽの2人に会った時に、「マンガのブスだ」と思ったんですよ。「おまえら赤塚不二夫作だ」と思ったんですよ。「こいつら絶対売れる」と思って、そういう意味では空気階段のもぐら君、マンガのこ汚ねぇおっさんなんだけど、でも、全然出てきておかしくないですね。

佐久間:この間『ゴッドタン』にちょっと出てくれて、オンエアはちょっと先なんですけど、大ハネです。大ハネ。

伊集院:今、もやは『ゴッドタン』で、ちょっとこの子ウケた、面白いじゃない!って言われて広がってくパターン、結構ふえてる。

佐久間:そうですね。去年の「この若手知ってんのか!?」の1位が宮下草薙とEXITで、2組とも売れたんですよね。その企画の第1回が三四郎なんですよ。

伊集院:うわぁ、すごいねぇ。

佐久間:まぁま、出た瞬間、三四郎は小宮がハネたから、劇団ひとりが「あいつ売れんなあ」っていうふうに言ってましたけど、もう売れましたね。

伊集院:劇団ひとり君とおぎやはぎの優しい意地悪さ。

佐久間:そうそうそうそう。そうなんですよね。劇団ひとりおぎやはぎって、意地悪なんだけど、コイツはこんな面も持ってますよっていう箱を開けるのが上手いんです。

伊集院:僕、若手の頃から、ずっとそういう人間だったからわかるのは、どう見られているのかがすごく気になる。自意識過剰過ぎて、自分を全然何も出せないまま終わっていくのを、出さざるを得ない追い詰め方をしていくのが上手なのよ。例えば、これが社会ならパワハラと言われるのかもしれない。追い詰めるんだから。だけど、そこで破れかぶれになった時の三四郎の小宮君の面白さとかが、あ、こんなに面白い奴なんだってなるし。

佐久間:若手をそのぐらいの尺で、テレビで言うと「平場」と言うんですけど、ネタじゃないトークの場所で試す番組があんまりないから、いい発表会になっているんですよね。

伊集院:で、そのことでウケるじゃないですか。しかも、それをちゃんとまた編集してもらって出したことで、周りからも「面白かったね」と言われると、アレやっていいんだって。

佐久間:そうそうそうそう。この箱開けていいんだってなるんですね。

伊集院:なる。俺のあの無様さは、無様エンターテイメントとしてあの佐久間プロデューサーが認めたんだ、の感じ、今、好循環をするじゃないですか。

佐久間:若手が収録する時は一番前で手叩いて笑うようにします。そうすると、あ、こっちの箱で行っていいんだ、みたいな感じになるから。

伊集院:そこが面白いんですよっていう。それは僕、それの先駆者って、たけしさんのオールナイトにおける高田文夫先生だと思うんです。たけしさんほどの天才でも、高田文夫さんが、たけしさん、そこ面白いですということをずっとバウバウ言ってると、たけしさんがすげぇノッて、ここ面白れぇーのかってなるじゃないですか。高田文夫先生も若手を見つける天才だった。若手をノセる天才だったりするでしょう。そんなところがちょっとあるかなっていう。

佐久間:じゃ、感覚としては、若手が出てる時は、僕、フロアでカンペ出しているというより、手叩いて笑って、そこウケてるよっていうようにしてるのは、それに近いということですね。

伊集院:でも、ラジオっ子なんですもんね、もともとね。

佐久間:もともとラジオっ子というか、伊集院さんのラジオのリスナーですから。

伊集院:そう言われて、それ難しいんだよね。恥ずかしいんだけれども、今や佐久間プロデューサーレベルになると、それ、ちょっと言ってほしいのよ。それを反射して若手が俺を尊敬する。佐久間プロデューサーに気に入られたい若手が、え?伊集院さんの影響があんの?みたいになるから。でも、そこってラジオ感にもちょっと近いような。

佐久間:近いと思います。僕のお笑いのベースにあるのはやっぱりラジオだと思いますね。

伊集院:ラジオの中のこれ持っていったら、テレビでは逆にダメなことと、持っていったほうがいいけど、テレビの人は気づいていないことってあるじゃないですか。

佐久間:あると思いますね。

伊集院:どの辺ですか、自分の思う“面白い”の定義。

佐久間:もともとは、さっきの話に戻っちゃいますけど、出演者の開けてない魅力の箱を開けるというのが一応最初の基本にしているんですよね。

それと、僕がずっと探してたのは、ダウンタウンさん、ウッチャンナンチャンさんとか、とんねるずさんのお笑いを見て育ったけど、1個でいいから、やってないお笑いをやりたいとずっと思って『ゴッドタン』を始めたんですよ。その時に初めて見つけたのが「マジ歌(選手権)」とか「キス我慢(選手権)」みたいな、要は、劇団ひとりはマジでやってるから面白い。上手い演技を上手い演技だと思ってやっているけど笑いが起きる。これだけは、もしかしたら先輩方がやってない笑いかなってやっと見つけた1個でしたね。

伊集院:東京03の角ちゃんがマジで作った歌を本気で歌うと、ダサ過ぎて面白いっていう。

佐久間:面白いっていうのは、やっとそれが見つかった瞬間に、あ、ちょっとだけ違うもの見つかったかなっていう。面白い映像をカメラが撮りにいくんじゃなくて、カッコいい映像を撮りにいってるけど(伊集院:ああ、なるほど、なるほど)、みんなが全員カッコいいを目指した結果、超面白い、みたいなものとかっていう。

伊集院:これは本当にラジオ聴いている人にとって、ラジオを聴いている人がすげぇネタバラシを聴いているって思っちゃうかもと思うんですけど、それで逆にまた、あんなに笑われるのイヤな人いないじゃないですか。マジなことをしている時の03の角ちゃんて、笑われるのイヤなんだけど、笑われた結果自体は、あの笑い声は好きじゃないですか。

佐久間:そうそう、好き好き。

伊集院:そうすると、最初から笑われたい人は全然面白くない。

佐久間:全然面白くないんですよね。

伊集院:おちんちん出したい人ってでかいじゃないですか。そいつが出すの全然面白くない。

佐久間:面白くない。わかります、わかります。

伊集院:皮を被ったおちんおちん、そう、俺のおちんちんが出る瞬間が面白いじゃないですか。

佐久間:そうなんです、そうなんです。

伊集院:見られたくないところが。

佐久間:見られちゃうのはわかっているんだけど、見られたくないものが一番面白いんですよね。これ、何なんですかね。

伊集院:この微妙なバランス。

佐久間:角ちゃんも毎回一緒に曲作りやるんですけど、「いい曲歌いたい」って言うんです、毎回。

伊集院:ハハハハ

佐久間:いや、違うだろう!と思うんだけど、「佐久間さん、今回はいい曲歌いたい」って言って、毎回僕がいい曲の方向性を角ちゃんに耳打ちしてって、修正してって、ああなっちゃうんですけど(笑)。

伊集院:照れと開き直りの狭間みたいなところを揺れてる時が一番面白くて。

佐久間:それはさっき伊集院さんが僕の処女作の時におっしゃってた「虚と実」に近いですよね。

伊集院:近いんですよね。テレビ見てる人が一緒くたに「これ、台本なんだろう」って言い出したりとか、「そうは言ったってカメラの前でやってるんだから、お前らやりたくてしょうがないんだろ?」って言われると、これが微妙な、イヤよイヤよも好きのうち的なやつが見え隠れして、行ったり来たりしてるところが、たぶん視聴者として面白くて、出役としてはいつも恥ずかしくて。

佐久間:そうです、そうです。そこにリアルがちょっとあるんですよね。「見てください!」もしくはマジ歌というやつが「笑ってください!」となっていくと、それはコミックソングショーになってくるから違っていてという。

伊集院:みやぞん君に初めて会った時に、みやぞん君てしゃべりたがらないんですよ。理由は「笑われるから」なんです(笑)。

佐久間:ハッハッハッハッハ

伊集院:あいつ、マジでしゃべってることがみんなに笑われるから、「笑われるからしゃべりたくない」といって、ずっと話振っても「もうここで」って勝手に終わって帰ろうとするから、「なんで?」って聞いたら「笑われるから」だって(笑)。

佐久間:だから、逆にみやぞん君は、マジ歌のオーディションに一回来たことがあるんですよ。なんだけど、みやぞん君はコミックソングをちゃんと歌ってるから、みやぞん君が売れるのはわかってたんですけど、『(世界の果てまで)イッテQ!』も決まってたし、出したかったけど、これはマジ歌で出しちゃうと、みやぞん君も悪いし。

伊集院:あと、方向性も違っちゃうんですよね。

佐久間:違うなと思って、泣く泣く落としたことを覚えてますね。

伊集院:2回転するじゃないですか。今度はマジでコミックソングを歌いたいんだけど、みやぞん君が狙ってる方向には面白くなっていう。

佐久間:そうそうそうそう。

伊集院:謎のもう一回りわかりにくくなっちゃうところにみやぞん君はいる、みたいな感じの。

佐久間:そうそう。

 

 

佐久間さんが入社3年目でプロデューサーデビューした『ナミダメ』という番組の話、伊集院さんのラジオの企画「芳賀ゆい」にまつわる話など、面白くて、あっという間だった。

「らじおと」の出演が終わって、伊集院さんが「全然話し足りないね、今度佐久間さんのオールナイト行きますよ」と。TBSもニッポン放送もザワザワザワのロード・オブ・ザ・リング/王の帰還水曜2部が楽しみ。(佐久間宣行オールナイトニッポン0 5/15より)