「どうかひとつ長~~い目で見てください」②

伊集院光とらじおと 2016年10月27日

 

伊集院「どんな人ですか?師匠は」

小松「一番最初に私は公募で行ったんです」

伊集院「付き人の公募があった?」

小松「ええ。僕は九州博多から役者になりたいと思って、家庭の事情があって、行かせられないと言うんだけど、それを押し切って、夜行列車で 「バンザーイ、バンザーイ、頑張れ」といって出てきたものだから、アテもツテもないから、どういうふうにして芸能界に入ればいいのかわからないから、とりあえず養成所に入って、そこから手がかりをつかめばいいのかなと思って行ったけど、それは通ったことは通ったんだけど、入学金が払えないと。金がなくて。

もう帰れないと、行き場がなくなって、もうしょうがない、東京で過ごそうということになって、いろんなアルバイトをして、車のセールスマンをやって、トップセールスマンと言われた頃、大学出の初任給が1万3800円という時に、私、10万稼いでた」

柴田「すごい!」

小松「ラーメンが40円の時代ですからね。一番売った時は、ノルマ6台という時に22台売ってるんですよ」

 

小松「私は大金持ちです。若造で。二十歳ぐらいで、今で言えば百何十万という金をいつもザクザク持ってた。カラーテレビが始まった頃、ビアホールにしかなかったんだ。キャビネット型の大きいやつで、終わったらカーテンなんか閉めたりして(笑)」

柴田「ありました、ありました(笑)」

小松「ビアホールに行って、日曜の6時から『てなもんや三度笠』、6時半から『シャボン玉ホリデー』、これを見たい。一番いい席に誰も寄せつけないというので、大枚を払って、マネージャーに「チップだよ~ん」て顔に張りつけて(笑)、この時間帯は絶対に俺以外は座らせないという。

うわぁ植木等すごいな、植木等が好きだ、植木が好きだ、好きだ好きだ好きだとよく思ってたら、ある日週刊誌をペラペラと見たら、週刊誌のこんな小さい囲み記事に、「植木等の付き人兼運転手募集。やる気あるなら面倒見るよ~~~~」(笑)。あー、これだ!と思ったんですな。大平原の中に四つ葉のクローバーがポッと見えたような気がした。ここで行かないでどうしようと思って。ですから、百何十万の給料をポーンと捨てて、明日からいらっしゃいといった時、7000円ですよ」

 

伊集院「僕ね、あのエピソードを小松さんの口から聞きたくて、二転三転するエピソードがあるんだけど、一番最初、僕が子どもの頃、伝説で聞いたのは、「およびでない」というのは、小松政夫さんが付き人時代に、時間を間違えて植木さんを楽屋に呼びに行っちゃったら、生放送に植木さんが出ちゃって、それが突発的に映っちゃって、「およびでない」とやったアドリブがウケたからという、まず最初に伝説があった。

したらね、植木さんが亡くなった法要の中継の時に、小松さんが、あれは植木さんの。「僕は親愛なる師匠を一度も間違った時間に呼んだことがない」と言うのね」

小松「それは付き人として失格です、と言ったのね」

伊集院「だけど、植木さんは、ほかの、たぶんどこかにあったエピソードに僕の名前を載せて言うことで、僕を売ろうとしてくれてたんだということに気づきましたというお話を」

小松「よく覚えていてくださいましたね」

伊集院「これ、本当の話ですよね」

小松「ええ、マジです」

 

小松「私が入って3カ月ぐらいしかたっていない時に、車の運転をしてるから、悪いがな、明日休みだけど、ゴルフのコンペがあって、私を支える会というのがあるので大勢来るから運転してくれないかと言うから、もちろん、私はそのためにいます、と言って行ったわけ。

したら、とても有名なゴルフ場で、「あそこにな、ドライバー控室というのがあるから、そこでご飯をたべて、畳の部屋もあるし、本もあるし、ゴロゴロしていていいから、ゆっくりしなさい。ご飯は上と同じメニューが来るから、それを頼んでサインしておけば、それでいいから」と言われたけど、私はそこでゴロゴロしてる時間がもったいないと思って、その時まだ、私はセールスマン上がりで、車のプロですから、パンツ一丁で全てを洗い尽くして、部屋の中まできれいに掃いて、悪いところはピッカピカに磨いた。それは4時間かかった。

それで、服を着て、ようやく落ちついたら、「植木等様のドライバーの方、車寄せまでどうぞ。お帰りでございます」というから、パーッと行ったわけだ。したら、ひな壇みたいになっているところに、みんなで植木等を送り出している。私が一番覚えているのは、中曽根元総理ジャイアンツの誰々とか、そんな人がいっぱい植木等を送っているわけです。

私はパーッと行って、ドアを開けて乗せようとしたら、「どうも皆さん、今日は送っていただいてありがとうございます。あ、それからひとつ皆さんに一言だけ言わせてください。ここにおりますのは松崎と言いまして、今は私の付き人をやっておりますが、これは今に大スターになります。その節にはひとつよろしくお見知りおきください」」

伊集院「すげぇ話だ」