久米宏×伊集院光

 

久米宏ラジオなんですけど 2020年6月27日

 

ゲストコーナー:今週のスポットライト

 

伊集院光さん。1967年、東京都生まれ。

高校在学中に、三遊亭楽太郎さん、今の6代目三遊亭圓楽さんに弟子入り。修行時代、伊集院光の名でラジオにするようになり、ニッポン放送の深夜放送で人気パーソナリティに。

現在、TBSラジオで放送中の『伊集院光深夜の馬鹿力』は25年目に突入。平日朝の『伊集院光とらじおと』は5年目を迎えました。その『らじおと』に一昨日、久米さんがゲスト出演しました。かわって、今日はこちらにおいでいただきました。最終回のスポットライトのゲストは伊集院光さんです。

 

久米宏:ようこそお越しくださいました。

伊集院光:よろしくお願いします。

堀井美香:お願いいたします。

 

草鞋の話

久米:どのぐらいの人が一昨日の番組を聴いていらっしゃいますかね?

伊集院:僕らの番組は反響がすごかったですけどね。伊集院が危険球いっぱい投げたのに、あのおじさんはびくともしねぇつって、大体そういう感想でしたね。

久米:あ、そう。話も途中で終わっちゃって。草鞋(わらじ)の話をするのを忘れちゃって。

伊集院:そうそうそうそう。

久米:これが、話をしなきゃいけないと思ったんだけど、話し始めると10分ぐらいかかっちゃうんですよね(笑)。

伊集院:じゃ、ほぼ俺いなくていいじゃないですか。俺、家で聴けばいいじゃないですか。

久米:でもね、説明、話はしておいたほうがいいと思ってね。

僕の感覚だと、TBSに草鞋を長い間脱いでたっていう感じがするんです。そっからなんです、そもそも。

伊集院:はいはいはい。

久米:ずいぶん草鞋を脱いでたので、こういう言い回しは若い人はわからないかもしれませんけど、そろそろまた草鞋を履こうかって。

僕、ガキの頃から映画が好きで、特に東映のチャンバラ映画は、小学校の頃、毎週週末に2本封切られるので、それを必ず近くの映画館に観に行くっていう習慣があったの。片岡千恵蔵さんとか、市川右太衛門さんとか、月形龍之介さんとか、東千代之介さんとか、錦之助さんとか、伏見仙太郎さんとか、そういう大スターが出てたんだけど、小学校の時から、僕ね、端役の、すぐ斬られちゃうとか、すぐ追い出されたり、崖を落っこちっていっちゃうとか。

あれはね、例えば、広島の抗争を描いた映画があるでしょ?

伊集院:はいはい。仁義なきとか、ああいうの。

久米:仁義なき戦いでも、金子信雄親分のところへ来て、親分の周り、若頭とかチンピラがいて、チンピラが画面の半分を切れたりするような、誰も見てないような俳優、コイツいつ消えるんだろうなというのを、子どもの時からの習慣なんです。つまり、チンピラに思い入れをするという。

伊集院:それってたまにいるじゃないですか、仮面ライダー世代では。仮面ライダーが好きになる人と、仮面ライダーの敵の、1話こっきりなんだけど、えらいインパクトのある怪人。ああいうのを好きになる子といて、僕もそうだったから、ラジオパーソナリティ向きなんだと思います。そういう人は。

久米:『用心棒』という黒澤さんの映画でも、あれ、三船敏郎さんがフラッと寄るところでも、組が2つ対立しているんですけど、最初に、あれジェリー藤尾さんだったと思うんですが、ハッて斬られるんですよ。「痛てー!」とか言って転げ回るんですけど、ジェリー藤尾さんの脇にいた2人ね(笑)。仰天するわけですよ。その2人を見ちゃったら、この2人、この後どうなるんだろうと胸に焼きついちゃう。そういう癖があるんです。

伊集院:テレビは、そのまま主役を追っかけていくのがテレビで、言ってもメインの敵役みたいなものだけど、ラジオって、ちょっとそこに引っかかるみたいな、黒澤さんの映画に、えらい背の高い奴、1人だけ出てくるんだけど、俺、名前も知らないんだけど、うわ、あの人何者なんだろう?みたいな、ああいうの、もしかしたら、その人の、下手すりゃ役者人生まで見たくなるのが、ちょっとラジオ的ですかねぇ。

久米:そう。言ってみりゃチンピラ役なんですよ。ヤクザ映画とか時代物でいくとね。どうも、僕ね、あの影響だと思うんですけど、結局、永さんのラジオの番組でもそうなんですけど、萩本さんとか黒柳さんとかとご一緒した時、特に『ぴったしカン・カン』というテレビで、最初なんとか上手くいった時、どうもコント55号と一緒に出ると、僕の役回りはどう見ても、僕の理解と解釈はチンピラだったんだ。

伊集院:(笑)なるほど、なるほど。

久米:明らかにチンピラなんです。僕が若い子どもの時から慣れ親しんだ。(堀井:そうかもわかんない)僕の役回りはチンピラ……ちょうど『ひったしカン・カン』じゃ真ん中に座っていたけど、チンピラが髪の毛伸ばした僕ね。長髪で、チンピラなんです。

伊集院:あの2人がすげぇ斬り合いしているのを、びっくりしてみたりとか、まあまあまあと言いかけて、またやめてみたりとか(笑)。

久米:黒柳さんと一緒になった時もね、僕はどうせ、なんていいますかね、チンピラの役所で。つまり、僕が草鞋の話で言いたかったのは、チンピラっていうのは僕の役回りだというので何とか生きていったんです。前半は。チンピラだったから。僕はチンピラの役回りで、にぎやかしと言うんですか、いつ崖から転げ落っこちてもいいっていう。

ところが、最大のミスというか、計算違いというのは、『ニュースステーション』ですよね。

伊集院:もうチンピラどころじゃないですからね。ど真ん中ですからね。

久米:あれでね、チンピラで……でもね、精神はチンピラでいようと思ったんですよ。

伊集院:ハッハッハッハッ よーよー!って言ったりね。

久米:精神はね。だって、チンピラは僕の拠り所ですから。『ニュースステーション』ではチンピラはまずいんだけど、精神としては、チンピラを全うしようって思ったんです。

伊集院:はい。

久米:ずっとこの「チンピラ」っていう言葉、僕、もともと子どもの時から、わりとニンジンがほとんど入っていないきんぴらが好きなんですよ。

伊集院:ハハハハハ! 響きもちょっと面白いしね(笑)。

久米:チンピラっていうのが僕の拠り所で今まで生きてきたんです。

伊集院:うん、うん、うん、うん。

久米:でも、『ニュースステーション』でチンピラが真ん中へ行っちゃったのはまずかったと思って。で、今回も13年経ったこの番組も、ずっと精神はチンピラなんです。年は取ってますけど。年取ったチンピラだっているわけですから。チンピラのまま年をとる奴はいっぱいいるんですからね。

伊集院:ちょっとそれ聞いてなんか理解できるのは、『ニュースステーション』でメインのキャスターなんだけど、余計なことを言うじゃないですか(笑)。ある意味。ある意味、キャスターとしては余計なことを言って。

久米:チンピラだから。

伊集院:チンピラって余計なことを言う役じゃないですか。

久米:そう。金子信雄に怒られるんだよ(笑)。あの金子信雄親分に「バカヤロウ!」って。「お前にバカヤロウ!って言われる筋合いはねぇや!」みたいな。

伊集院:まあ、そういうことですよね。変な表情をしたりして、ちょっとそこをわかりやすくしたりとか、あと、なんでしょうね、理屈じゃないよというところをちょっとわからせてくれるところじゃないですか。予定調和でもなくて、何か、よーよー!ってやる役じゃないですか。でも、それとメインを両立するのは相当ですね。大変という。

久米:このラジオだと堀井さんと2人しかいないから。堀井は女親分というわけにもいかないしね。

伊集院:フフフフ

久米:おかみさんという雰囲気もあんまりないし。

伊集院:いやいや。

久米:だから、何となく自分はチンピラでいたいのにっていうのはあるんですよね、ずっと。メインストリームには行きたくないっていう。

伊集院:どんな気持ちですか? チンピラの横のフォローをするのは(笑)。本来なら斬られちゃうのを斬られないようにする。

久米:発言は基本的にチンピラだもんね?

堀井:そうですね。

伊集院:(笑)

久米:君、チンピラという言葉、知らない?

堀井:えっ?知ってますよ。

久米:とんでもない言葉は知らないんだ。

堀井:知ってますよ!(笑)チンピラは知ってますけど。でも、チンピラはどうしようもなんないですもんね。直せないですもん。チンピラって直せないもん。

伊集院:しかもさ、局からの命令で「そのチンピラについてけ」って言われてここにいるわけだから。

堀井:そうそうそうそう。チンピラが落としたものを拾おうとも思いませんでしたし、あ、落とした、落としたと思って見てました。

久米:だから、今、13年経って言うんですけど、ラジオ聴いている人も、ちょっとチンピラに付き合うのって大変だと思いますよね。王道じゃないっていうのを意識してますから。本人は。

伊集院:でも、そこをぐるっと回るのは、久米少年がチンピラを好きだったみたいに、きっとラジオを聴いてくださってる方って、チンピラを好きなんだと思うんですよ。余計なこと言いだったりとか、そんなに前出たら斬られちゃうぞっていうのを見ててドキドキしてくださる人がおそらく……。僕も、僕のラジオもそう思いたいし、ラジオを聴いてくださる方の本質にそういうことあるんじゃないかな。メインはメインで楽しむけれども、いいんだよ、いい表情したあいつがすぐ斬られちゃうんだよつって。できれば次回も出て欲しいから、今日は斬られないでほしいな、ぐらいの感じというんですかね。

久米:この話は、たぶん伊集院さんはわかってくれるだろうと思って、草鞋というのをキーワードにして、結局時間がなくなって、一昨日話しそびれたんですけど。

伊集院:これ、長くなるから。

久米:この話をすると長くなるからできないから。

伊集院:タイトルだけ言って、中を言わないっていうひどい話なんですよね。

堀井:何だろう?と思ってました。

久米:草鞋って、だから、また草鞋履いてっていう、本来のチンピラになってウロウロしていきたいな、しばらく、と思うんです。

伊集院:なるほどねぇ。どっち方面行くんですか?

久米:ま、都内でね。

堀井:チンピラ!(笑)

久米:パスモが通用する辺りでウロウロしよう。バスも乗れるらしいとか。ウロウロしようかと思っているんです。

 

なぜゲストに呼ばれたのか?

伊集院:ゲストで呼んでいただいから、僕から久米さんに質問するのは違うと思うんですけど。

久米:僕も今ね、俺、ゲストで呼んだんだよなと、今。

堀井:(笑)

久米:僕の立場は何だろうと、今ふと、伊集院さんが話しにくそうにしてるんでね、ゲストだって忘れてた。

伊集院:1つだけわかりやすい質問なんですけど、何で俺なんですか? 久米さんが俺に何か伝えたいことがあるのか、俺に聞きたいことがあるのか。なんかでしょ?おそらく。ゲストって。

久米:あのね、いや、木曜日にそちらに僕が出演するっていう話になった瞬間に……。

伊集院:僕がリクエストしました、それは。

久米:その瞬間に、じゃあ、バーターでいこうっていう(笑)。

伊集院:(笑)あいつだけいい思いするんじゃなくてっていうの。

僕ね、真っ当な寸法でいったら、最後のゲストって、俺、堀井さんだと思ってたの。

堀井:えっ?

伊集院:要するに、堀井さんの思いってあんま聞いてないでしょう?

久米:辛いからな、聞くの。いろんな意味で。

堀井:耐えられないからね?(笑)。

伊集院:最後に、もしかしたらブチ切れるかもしれない。いいかげんにしろコノヤロウ!つって。わかんないけど(笑)。

堀井:本当にチャンスを窺ってましたよ、ブチ切れる。

久米:ジェーン・スーの番組を昨日聴いてたらね、めちゃくちゃ言ってましたから(笑)。

堀井:ハッハッハッハッ

久米:やっぱり、それは間違いなく僕の考えは正しいと思ってた。めちゃくちゃ言ってた。

伊集院:ゲストにしてみっちり聞かないほうがいいっていう。正面にあげないほうがいいっていう。

 

久米:うん。

ラジオは、でも、結構面白いからさ。テレビの場合は、永さんがテレビが嫌いな理由っていうのは、いっぱいあったんですけど、最大の理由はね、あまりにも多過ぎるっていうことだと思うんです。見ている方が。ラジオだとね、多分これ、永さんの好きな言葉で、テレビは、出てる人と見てる人の間に、えにしとか縁というのはちょっと考えにくいほど多いんですよ。あまりにも巨大なマスですから。見ている方。ラジオだと、いくら多くても、リスナーの方と送り手と、メールはいただかないまでも、縁があるというのは、話しながら感じません?

伊集院:僕なんか深夜の3時-5時からスタートだから、そうすると、縁がなきゃ聴きゃしませんよ。

久米:僕も3時-5時、5回やってます(笑)。

伊集院:3時-5時なんていうのはね、ちゃんとした人は起きていないんだ。

久米:まともな人は起きてないです。

伊集院:むしろ、ちゃんとし過ぎてる人。新聞配達とか、それからあと、お豆腐屋さんとかは起きてる。あの時間起きてラジオ聴いてる人は、俺と同じぐらいちゃんとしてない人なんだっていう、その連帯感というか、すごくて、今はもうラジオはメインのカルチャーじゃないから、今聴いてもらってることはすごいなと思うんですよね。

あ! 俺、それがね、今、SNSによって発言を中途半端に引き出されるじゃないですか。

久米:うん。

伊集院:本当に聴いてた人は、相変わらずそこまでメインじゃなくて、ある程度、久米さんの言う、赤って言ったつもりが黒だった、黒って言ったつもりが赤だったに関しても、まあまあ、こういうことだろうって理解してくれる人だけど、それを、久米さんが赤って言いましたよ、本当は黒なのに、ということを、少人数の縁じゃない人のところにワッと引きずり出して炎上するじゃないですか。あれはどうしますか? やめる人に「どうしますか?」と言っても困るんですが、あれ、俺らどうしたらいいですか?

久米:だからね、ラジオって、ちゃんと聴けば、ラジオで話してる人って、SNSに比べれば、もうちょっと起承転結をしっかり話してるんだよね。ちゃんと話してるんですよ。途中まで聴くと危ないんだけど、最後まで聴くと、ああ、そういうことなのねって腑に落ちるような話をちゃんとみんなしてて、SNSみたいに書き出しの3行で終わるようなことはないんです。結論の2行もちゃんとあるのに。だから、ラジオをちゃんと最後まできちんと。

でもね、SNSに慣れてる奴っていうか、そっちの病気になっているような奴は、発言した頭の15秒ぐらい聴いて、こんな奴ダメだ!という、その可能性はあるんですよ。

伊集院:さらには、書く奴は書く奴で、結局、読んでくれた数が報酬だから、そうすると、東スポの見出し的なこと、要するに、そこをつまみとるのが上手いんです。要するに、僕らは、逆説的な皮肉で言う、みたいなことが好きだから、それを始めてるのに、知ってるんですよ。書く奴は勘違いしてない。知ってて、あれは最終的に逆説的な皮肉に落とし込んでるって知ってるんだけど、そうじゃないところを書く。

そうすると、これは確信犯です。こいつは。でも、読んでる人は、それは素直に勘違いもするし、読んでる人は「どうもけしからんことを言った」ってなるじゃないですか。これでみんなすごい勢いで燃えていくんだと思うんですよね。

久米:ただ、ラジオの場合は、その後少し議論できるじゃない。SNSって言いっぱなしで終わるんだけど、ラジオの場合は、リスナーも、我々話し手も含めて、次回の時間もあるし、そのことだけについて1時間話そうということはやろうと思えばできるわけで、SNSって、言った奴は、その後読まない可能性がある。

伊集院:もっと言えば、今、タイムフリーあるんだけど、そのネタ元は確認しませんからね。あんなに怒ってるのにネタ元は聴かないんだっていうぐらい聴きませんからね。でも、それにも我々は打ち勝っていかなきゃならないんだと思うんですけどね。そいつらすらも納得させたり笑わせたりしなきゃいけないんだろうなと思うんですけどねぇ。

久米:ただ、配慮の量が浅いと書いて「浅慮」という言葉があるじゃないですか。日本人はちょっと浅慮になっていますよね。

伊集院:浅慮。

久米:浅慮。もうちょっとちゃんと考えるっていう。その話を聞いて、一回飲み込んで、もう一回自分で反芻して考える。聞いた瞬間に反応しちゃってね。その反応の仕方も、どこかで自分が聞きかじったことで反応しちゃったりなんかして、じっくり考えて、(金)与正というのは、本当にあいつの妹か?みたいなね(笑)。

伊集院:ハハハハ

久米:あんなに似てない兄妹が本当に世の中にあっていいのか?っていう。本当にそこまで考えてみたこと。あんなに体……子どもの時はずっと同じもの食ってたろうに、あんなに体型が違う兄妹って世の中に存在していいのかって考えたことがあんのか!っていうところですよね。どう考えてもあれ、父親か母親、どっちか違うだろう!って考えるのが普通だけど、みんな与正は妹だと決めてつけているんです。

久米:いいですね。チンピラがど真ん中に今いる感じ、いいですね(笑)。横で女将さんが「よしなさいよ」っていう顔してんだけど。

堀井:チンピラ精神治りませんから大丈夫です(笑)。

久米:だって、あの2人が兄妹だって、普通は信用しませんよ。あんな体型の違う……伊集院さんを前にこんな体型の話をして(笑)。

伊集院:俺、逆にそっくりなんですから、あっち。兄妹と言ったらみんな信じるかもしれないです。少し刈り上げりゃ同じ顔になるっていう。

久米:伊集院さんが兄弟だったら信用します。あの2人が兄妹って、顔立ちも違うし、体型……だって同じもの食ってるはずなんですよ、しばらく。スイスも一緒に留学してるしね。あんな違うって、まず疑ってかかるっていうのが普通じゃないの? それを端からみんな「妹の与正が」って言ってんだよ。

伊集院:これ、SNSとかネットニュースに切り取られると、もう久米説として「兄妹ではないと発言」ていうことになるわけですよ。

久米:南側の飛ばしたチラシね(笑)。風船。あれで、お兄さんのほうは正妻の子どもじゃないって書いてあったので、北側はそれを読んで激怒したんです。つまり、ペクトウサンの血を引いていないんだ。正妻の子じゃないのがお兄ちゃんで、正妻の子どもが妹だという一文があって、それに激怒したんです、北の連中は。だけど、僕はね、そっちが正しいんじゃないか(笑)。

伊集院:絶対、この笑顔の感じとか出さないしね。チンピラ論の感じとかなんか、あんな100文字ぐらいの中から全部排除されるから。久米説ですからね。下手すりゃ、最後に言っておきたいことはこれだ、ぐらいのニュースになりますからね。

堀井:ハハハハ

伊集院:恐ろしい話ですよ。

久米:ただね、昨日か何か、NHKの夜の番組を見てたら、与正の10歳頃の写真が出たんですよ。僕、初めて見たんですけど、あの写真を見たら、兄妹です(笑)。丸々としているの、あれが。今は細面じゃん。真ん丸な顔をしているんだよ、あの与正が。これはやっぱり、血を分けた兄妹かって思いました。

伊集院:久米さん! 本当にもう終わるんですか?このラジオ。

堀井:逸らすでしょう? いろいろ逸らしちゃうんです。

伊集院:ね、喋りたいこといっぱいあるじゃないですか。

堀井:そうなの! しゃべんないんです。

久米:この後、TBSラジオ、スポンサーもおたくはいっぱいついてるし、頑張ってくださいね。

伊集院:ハハハハ 投げられちゃったよ。ねぇ。

久米:でも、ラジオはね、最近、この番組に限って、ほかはわかりませんけど、コロナのことがあったんで、テレビの報道番組なんかも、最近ちょっと落ち目になってますけど、コロナバブルというのが完全にあって、情報番組がすごかったんですよ。数字がガーッと上がってきて。でも、さすがに毎晩コロナの情報じゃみんな飽きるから、少しワイドショーも数字が下がってきてますけど、ラジオもちょっとコロナバブルの皆さん、ステイホームで、ステイホーム・リスンラジオで、ラジオを聴く人がふえたので、いいチャンスだと思いますね。

伊集院:で、その人たちが、また通常に会社に行かなきゃなんない時に、「あ、ラジオ聴くのって面白いな」を残せるか残せないかは、相当僕らの腕にかかってるような気がして。

久米:だって、ちょっとラジオを聴いた人はわかるけど、ラジオを聴いたほうが頭が良くなるもの。テレビを見てたらアレですもんね。

伊集院:アレですもんね、上手なところで「アレですもんね」にしましたね(笑)。

久米さん、俺、テレビも出るから。

久米:知ってますよ。

伊集院:それはすごい困るんですよ。大沢悠里さんの最後のほうも僕ゲストで出たんですけど、ずっと悠里さんが「テレビけしからん」て言うんだけど、俺そっちも出るってと思いながら、すげぇ困って(笑)。

堀井:(笑)

久米:テレビの場合さ、ずいぶん切り取られちゃわない? 伊集院さんの発言も存在も。向こうの都合で。

伊集院:切り取られちゃうし、僕らなんかはバラエティに出るのが多いから、センテンス長い奴が呼ばれないです。要するに、二転三転して面白いところに落ち着きますとか、面白い話の入り口だったんだけど、最後ちょっと怖いね、みたいな面白さは、テレビ的じゃないですから、何が起きて面白かったか。だから、最終的には一発ギャグみたいになっていくわけです。「そんなの関係ねぇ」って、何が何と関係ないか、みたいな暇はないんです。もはやバラエティなんかは。

久米:そうなんだよね。一昨日の話の続きですけど、土曜日だけラジオをやってた時代に、例えばやっぱり『ベストテン』なんかだと起承転結の話はできないですよね。

伊集院:そうですね。

久米:起床転結の話はできない。起起ぐらいだね。

伊集院:(笑)起結。だから、それがすごいのは一発ギャグって結ですもんね。起も転も何もないです。いきなり結じゃないですか。それにもフィットしなきゃいけないし、俺はそれが下だとも思わないし、両方出るから。思わないけど、久米さんが言ってた、ラジオ用の喋り方とテレビ用の喋り方は確実にあるし、それを考えながらじゃなくて反射でできるようにしておかないと、多分両方から「要らない」って言われますよね。

久米:例えば何で僕が草鞋かっていう話、テレビであれできないもんね。

伊集院:できないですね。

久米:できない。あんなことをやったら全部切られちゃうもんね。草鞋っていうところは全部切られちゃう。草鞋になるとこ、ダメだ、これ切っちゃうと切られちゃうじゃん。だから、ラジオじゃなきゃああいう話ってできないんだよ。そういうことを考えると、やっぱりテレビを見てるとバカ……よくないよね。

伊集院:アハハハハ! 僕はよくないって言ってませんよ! テレビの皆さん。まだまだテレビに出ますからね。

久米:もう伊集院さんはテレビの人ですから。

伊集院:いやいや(笑)。それも悔しいんだよな! それもなんか悔しいっていう(笑)。

でも、本当に両方切り替えていくとか、両方ありとかはすごく難しいけど、逆に言うと、久米さんの年齢と久米さんの実績って、久米節になっちゃえば、両方許してもらえる立場にせっかくいらっしゃるのにっていう気がちょっとするんです。

久米:あのね、ラジオがね、やっぱり本番中にボーッとしている時が多いんだ、最近ね。今日はね、今日は最後だから。

伊集院:堀さん、してます?

堀井:私に比べたら全然。

久米:彼女は寝てますからね。

伊集院:ボーッとしてる人と寝てる人で高聴取率のラジオをやられちゃ、こっちはたまんないんですよ(笑)。

久米:今日は最後だから、かなりちゃんとしているほうなの。きちっと。普段は、目は開いてますけど、2人とも目を開けて、このまま寝るのが秘技と言われていますから(笑)。

伊集院:ハハハハ 誰が起きてんだ!このラジオは。

久米:だから、なんて言うんだろうね、集中力。そう! 集中力。コンセントレーションが最近ダメ。

伊集院:あ、そんなもんですかねぇ。

久米:そんな情けない……今、本当に信じて情けないような顔して、可哀想、みたいな感じ。

堀井:言わなきゃいいのになんで言ったの?(笑)

 

伊集院:俺、今、ラジオを聴いてる人の中で、すごくこういう人がいてほしいっていう人間像があるんです。今まで久米さんのことが大嫌いで大嫌いで、久米さんが何か言うたびに「あいつのせいで日本がダメになるし、あいつは日本の敵だ」って言ってた人の中に、「それでも存在しててほしい」っていう人がどれくらいいるかです。その人の考え方は、僕はすごく尊重します。ただ嫌い。こいつは大嫌いと言ったら、大嫌いな奴がいた上で、そいつを論破する自分の考えをしっかり持ってたいっていう人が、何人かに1人でいいです、僕はいてほしいと思ってて。「やめちまえ!」って言うけど、「本当にやめんなよバカタレが!」と思っている人がどれぐらいいるのか。そういう人がいてくれるんなら耐えられます。どんなにネットで自分が言った発言が今後誹謗中傷されても、その人は敵ではないって思うんで。

今って、考え方が逆の人は敵じゃないですか。下手すると、逆じゃなくて、ちょっとでも違う人は敵じゃないですか。久米さんは、いっぱいそういう意味で違う考え方、逆の人はいるけど、その方たちは、聴いてなお文句をずっと書いてきたと思うんです。SNSにもメールにも書いてきたと思うんですけど、その人たちの中に本当に1人でいいです。何もやめることはないっていう。久米宏違うぞ。俺と考え方が違うって言っていること、この全パッケージで僕のラジオとの付き合い方だっていう人がいてくれないと。

久米:僕ね、人に嫌われることは覚悟はしたんですよね。この業界に入った瞬間に。それはしょうがないと。みんなから好かれるようじゃどうしようもない。

伊集院:むしろ、はい。

久米:嫌われるのはしょうがない。もしかしたら憎まれるかもしれないし、脅迫状もいっぱいいただきましたけど。多分ね、いくら嫌われても構わないっていうのはね、それに対する逃げの一つが最初の話ですね。「どうせ俺はチンピラだよ」っていうね。多分そうだと思う。多分それ、僕の逃げの手だと。俺はどうせチンピラなんだから、嫌われようが、大げさな話をすれば、殺されようが構わないんだ。俺はチンピラなんだからというのは、嫌われることに対する、僕の言ってみれば反論だったんです。きっと。逃げ道だったのかもしれないね。今にして思えば。

伊集院:でね、当然大半の人は素直に「邪魔だチンピラ」と思っていていいと思う。素直に。でも、通の人は、じゃあ、メインの男前の役だけ映してたら映画面白くはならないっていうことを、ちゃんと本質を理解する人は、いくら出てくるだけで虫酸が走るようなチンピラだとしても、あいつに1分使うんだったらば、主役のアイドルちゃんを映せという人も、そうじゃないことを知っている人が、全員も困るんですよ、全員も。そんな予定調和なことでやりたいわけじゃないから。でも、数人はいてほしいんですよね。それをいつも、僕もラジオで怒られること、すごいいっぱいありますけども。

久米:怒られるよねぇ。

伊集院:怒られます、怒られます。で、心折れそうになることも。やっぱり喜んでもらいたくはやっていますからね。基本的には。心折れそうになるんですけど、最終的に、そういう人さえいてくれたら、それも受け止めようと思うし。自分と違う意見でも受け止めようと思うし。できないと思っても、自分の意見をぶつけて、説得はできないと思ってもぶつけてみようと思うんですけど、なんかこのラジオにそういう人がいてほしいし、ラジオ全体にそういう人がいっぱいいてほしいなって思いますよね。

久米:ラジオで喋っている人は、結構考えて喋ってるしね。もしかしたら聴いてる人も考えながら聴いてる方が多いんだとしたら、やっぱりテレビと違ってラジオっていうのは、送り手と受け手が、かなり濃いえにしはあるよね。縁が。

伊集院:ありますね。ありますね。

久米:空中で電波は見えませんけど、赤い糸が結ばれてると思いますよね。縁があると思う。

伊集院:それが果たして、僕らはそうあってほしいと思ってるだけなのか、そうなのかは、久米さんがそうやって言ってくれると僕もちょっと頑張れる。たまに疑います。やっぱりね、僕はハガキの時代からラジオをやっていて、どうしても今のSNSですら同じ重さで受け止めちゃうんすよね。

久米:ああ、そうなんだ。

伊集院:それがどうにかそれは違うんだ。それは永さんとも話したんですけど、それは違うんだと。わざわざお金をかけて、手間暇をかけて、ハガキで、それでもお前の言ったことを許せないっていう人も重さと、今、無料でSNSに書く「お前死ね」っていうことの重さは違うって思いたいですけど、どこかで混同してくから。

久米:人間だもんね。

伊集院:だし、逆に言うとそれを重いって考えられたから、ちゃんと深夜放送を長くできたとも思っているんです。ただ単に気まぐれに「面白い」と言ってくれた人も、俺を面白いと思ってるんだって思ってきたから、だから深夜放送もやれるし、ラジオもやれるんだけれども、さあ、あれ全部受け止めると相当心が来るじゃないですか。

久米:うん。

伊集院:その辺の訓練も俺これから要るんだろうなと思うし、じゃ、それをある程度聞き流せるようになるっていうことは、貴重な意見も聞き流せるようになるっていうことだし、褒め言葉も聞き流せるようになるっていうことで、それは自分たちの今までやってきた「ラジオとは?」っていうこととの付き合い方と、全く違う局面に入る気がするんです。

久米:僕は、聴いてる人は全員ほとんど信用してるんですけど、僕のこと大嫌いだと言う人も、聴いてくれてるだけで信用してるんです。

伊集院:はいはいはい。

久米:SNSで何か書き込んでくれる奴も、書き込むだけで僕は信用してるんです。

伊集院:はい、はい。

久米:ある意味、全信用なんです。で、何とか乗り切れるんだと思いますけどね。僕は信用してるんです。何かリアクションしてくれる人は信用してるんです。それだけで。大反対、「久米死ね」、これ信用してるんです。そこまで考えてるんだな、お前は(笑)。「久米死ね」とまで考えているんだ、あなたは偉いって信用してるんです。

伊集院:これが、聴いて書いたもの。書いたものを見た人。で、それに対するまた曲がった解釈を見た人まで、今度ダイレクトで「伊集院死ね」って言えちゃうじゃないですか(笑)。この辺が、俺はいつまで耐えられるんだろう。ちょっと思います。で、新しい感覚の人達って耐えられたりすると思うんですよね。生まれた頃からネットもSNSもあるっていう。

久米:見慣れていりゃあね。

伊集院:見慣れてて、ハガキを受けたことがない人。で、僕は永さんと話したのは、「ハガキの筆圧とハガキの文字のバランスとかで怒りの度合いって見えますよね」という。

久米:なるほど。

伊集院:「最初、冷静に書こうとしたのに途中から筆圧強くなって、最終的にスペース足りなくなっているような人の怒りは本物の怒りだからって思いますよね。これがメールのいわゆるフォントになっちゃうとわかんないですよね」っていう話を永さんとしてて。それを今わかろうとしてるし、読み取れるようになりたいと思ってますって、ちょっとわかるようになってきたんですけど、今度のSNSになってくると、これがちょっとわかんないですね。

久米:リアリティっていうのは、伊集院さんみたいな親分の脇に僕みたいな年寄りの手下(てか)が付いているっていうのはリアリティですよね。ヤクザ映画としては。

伊集院:あ、そうですよね。

久米:これ、逆だと漫画になっちゃうんだけど、僕が年老いて、もうそろそろ引退して、ムショに行くのは3回行ってるから、オツトメはもうイヤだけど、一応親方にはついていくか。「親方、どちらへ?今日は。今で言う銀座?」なんてことを、そういうドラマってリアリティあるでしょ? 僕が三下でね。

伊集院:急に! 急に。でも、なんか配役が見えてくる。だけど実は、既に穏やかな顔にまでなっちゃってるんだけど、実は相当な地獄をくぐり抜けてる(堀井:うん、うん、うん、うん)っていう感じとかもちょっと面白いですね。

久米:ありがとうございました。突然終わりますけど。

伊集院:そうですね。時間いっぱいですね。

久米:そうなんです。この間は伸ばしてくれてありがとうございました。時間。

伊集院:とんでもないです。

久米:あんな3分か4分、枠飛ばしたでしょう。

伊集院:いやいや(笑)。

久米:今日、飛ばす枠ないんです。

伊集院:いや、とんでもない。僕もお邪魔し過ぎで。言葉は尽きませんけど、とりあえずはお疲れさまでした。

久米:この後もTBSラジオをよろしくね。

伊集院:いやいや、なんか乗せられたぞ! 乗せられたー!

久米:(笑)ありがとうございました。

伊集院:ありがとうございました。

 

堀井:今日で最後の今週のスポットライト、ゲストは伊集院光さんでした。伊集院さん、本当にありがとうございました。

伊集院:ありがとうございました。

久米:Vサイン(笑)。