図太くて、繊細で、品がいい

 

ドン・キホーテ presents テリー伊藤 昭和モーレツ天国 2025年5月31日

 

テリー伊藤:『父と僕の終わらない歌』、こういう作品に恵まれているというか、ここが寺尾聰のずるいところなんです。

寺尾聰:いやいや。私、この映画、オファーいただいた時に5回ぐらいお断りしたんですよ。

テリー伊藤:なんで?

寺尾聰:面倒くさくて。

 

テリー伊藤:最新作の映画では、アルツハイマーになった父親を熱演。

吉竹史:これは、2016年にイギリスでSNSに投稿された1本の動画をきっかけに、80歳にしてCDデビューを果たした男性の奇跡の実話をもとに、舞台を日本に置きかえて映画化されたというものなんです。若き日に諦めたレコードデビューの夢を叶えようとするアルツハイマー認知症の男性と、彼を支える家族の姿を描いたヒューマンドラマになっています。主演が父親役で寺尾聰さん、息子役で松坂桃李さん、奥さん役で松坂慶子さんが出られているということなんですね。数々の方たちも出られているわけなんですけれども、空気感がいいんですよね。

テリー伊藤:また、横須賀のドブ板という小さな商店街で音楽をずっとやっているんですけれども。

寺尾聰:景色と溶けて、まちと溶けてやれたかなと。共演者の人たちも本当に好きな人ばっかり集まってくれたという感じがするので、気負わずに。

テリー伊藤:役の中でどんどん変わっていくわけじゃないですか。そういうのはどういう感じで受けとめて。

寺尾聰:あんまり極端にあるシーンから深くかかってきたというふうにしないで。自分がいつも作る時には、自分の右側に人物を1つ作るんですね。今回はこういう男がいて、右側にいるこの男。そこに自分がスンと入っていければいいなと。だから、いろんなイメージを作ったところに入っていけば、多少ずれていてもいいやという。

 

テリー伊藤:この中で松坂桃李さん、若手ではナンバーワンのね。

寺尾聰:もう最高!

テリー伊藤:最高ですよね。実際にお2人のシーン、かなり多かったんですけど、どうでした? 役者として。

寺尾聰:まず、品がいい。お芝居もさることながら、人柄がとってもいい。お芝居ってテクニックの以前にその人が出てきちゃうんですね。だから、その人が表向きいろんなことをしてても、根っこのところで、この人本当にいい人なのかなというところを探ると、松坂桃李、この男はなかなかいい。図太くて、それでいて繊細で、品がよくて、なかなかいい。

テリー伊藤:僕は前から松坂さんのことを市川雷蔵さんの再来だと言っているんですよ。将来的には眠狂四郎ができるような。そんな匂いしますよね?

寺尾聰:はい、はい、はい。

テリー伊藤:そういう穏やかな品がありますよね。色気もあるし。最高の作品ですね。

寺尾聰:すごいうれしいですね。

 

 

寺尾さん、この役は素直にやりたいと思えるものではなかったんだね。でも、息子役を桃李くんがやるということで、心が動いたのかな。

あの役は寺尾さんにぴったりだった。奥様役の松坂慶子さんもとてもよかった。息子役の桃李くんは言わずもがな。