ファーストクラスに乗った話

 

伊集院光 深夜の馬鹿力 2015年8月31日

 

夏休み最後のほうの週でいろんなスケジュールがあったから、とれるのがファーストクラスだけだったんです。俺、国内線でファーストクラスなんか初めてで、あるのも知らなかったぐらい。ファーストクラスに乗ることになって、まあ、何だろうね、ファーストクラス、落ち着かない。

みんなTシャツじゃない! “Tシャツにジーパン“みたいな格好の人がほとんどいないんですよね。預けなきゃいけない手荷物がいっぱいあったせいで、むしろ持ち込む手荷物が何もないから、片手にコンビニ袋しか持っていないんです。みんなアタッシュケース

ファーストクラス、ゆったりできると思うかもしれないけど、“ファーストクラスらしく”みたいなこと考えちゃうから、寝ることもできない。どのボタンを押したら何が発動するかわかんねぇんだもん。普通、リクライニングのボタンなんか1個じゃん。3個ぐらいついてるから、うち1個は、上がパカッのバシューのやつじゃん。

何していいかわかんなくて、ずっと、まんじりともせず北海道に行くわけです。

(中略)

利尻から新千歳空港に行って、乗り継ぎで東京に行くんだけど、東京へ行くのはファーストクラスなの。ファーストクラスの中に右半身に泥のついている人は一人もいない。まさか万年雪を見に行ってすっ転ぶと思ってないから、それが最後のズボンなの。

だから、キャビンアテンダントさんが来るたびに(向こうに行け、なぜなら俺には泥がついているから)という状況で、悲しくて恥ずかしくて。

さすがに泥は落とすけど、泥が滲みてはいるじゃん。ファーストクラスに乗ってるのに、右の泥のついてるほうを白いシートにつけられないから、左下にしてゴロ寝してるみたいな状況じゃんか。キャビンアテンダントさんが来ては「お食事の用意しますか?」って言うんだけど「お腹すいてないんで」。

態度悪いよね。横に寝たまま「いいです、僕要らないです」って。違うんだよ。食いてーよ。ファーストクラスの飯食いてーけど、それ食おうと思うと泥がついちゃうんだよ。なぜなら、俺はさっき川原ですっ転んでからファーストクラスに乗ってるっていう、VIP中のVIPだから。

CA仲間では「伊集院さん態度悪いわねー」なんて言ってるかもしれない。違うんだよ!泥がついてるんだよ俺には。マイルで乗ってるのに泥がついてるんだよ!

 

 

昔のツイートを探していると、1つも“いいね”がついていない書き起こしにたどり着くことがあって、ああ、この時、この話が面白いと思って起こしたんだよなーと懐かしくなる。そして、それはたいてい今読んでも面白い。