福島第一原子力発電所 廃炉作業のいま

 

上柳昌彦 あさぼらけ 2022年9月14日(28:30~)

 

上柳昌彦:今週は「オールナイトニッポンミュージックウィーク」でとても忙しいんじゃないかと思います。ニッポン放送オールナイトニッポン」のプロデューサー、冨山雄一さんです。おはようございます。

冨山雄一:おはようございます。よろしくお願いします。

上柳:すいませんね、この時間に生放送でありがとうございます。

冨山:いやいや、とんでもございません。

上柳:ラジオ福島の大和田さんに声をかけていただいて、「上柳さん、福島の原発の中を取材しませんか? 一緒に」と言われて、「もう一人、冨山という男が毎年一緒に東北のほうに伺っているので、ぜひご一緒に」と言ったら、私が行けなかったもので、1人で行ってきてもらったんですけれども。

冨山さんとは、東日本大震災のときにもう一緒に仕事をしていたんですよね?

冨山:東日本大震災のときは僕は『あなたとハッピー』を担当していたので、その1年後に、いわゆる「震災から1年」というところで特番を一緒に作らせていただいたときに、一緒に大船渡とか仙台とかを回らせていただいたのが。

上柳:なるほど。そのときのレンタカーの中では、お互いにどういう人かよくわからないので、探り合いながらの会話もしていたような感じなんですが。

実は、冨山さんは2007年にNHKからニッポン放送に転職してきた人で、NHKではテレビのほうもやって、いろんなことをやって、NHKの放送センター、渋谷に帰ってきたときには「ラジオをやりたい」と言って、結局、もっとラジオをやりたいんだということでニッポン放送に来てくれたという人なんですけれども。

さて、今回、早速話を伺いましょう。9月9日金曜日、どんな一日だったですか?

冨山:上柳さんからもありましたが、ラジオ福島の大和田新アナウンサーにお声かけいただいて、福島第一原子力発電所に伺ってきました。

皆さんご存じだと思いますが、東日本大震災で甚大な被害を受けて、6つ原子炉があるんですが、1号機から4号機までが、メルトダウンとか建屋の水素爆発が起こりまして、大きな被害を巻き起こして、現在、1号機から6号機まで、全て廃炉することが決まっていまして、もちろん報道で目にすることはあるんですが、実際、どういう状況なのか、現地で取材をさせていただきました。

東京から福島第一原発までは250キロ。先週の金曜日、オールナイトニッポンを終わって、品川駅始発の特急ひたち3号に乗って3時間、富岡の駅まで行きまして。

上柳:ほとんど徹夜明けで、ちょっと仮眠とって行ったぐらいですもんね。

冨山:そうですね。7時半過ぎのに乗って、11時に着いて、大和田さんに迎えていただいて、視察用のバスに乗って、福島第一原発へ行きました。

福島第一原発、いま、毎日およそ4100人の作業員の方が働いていて、ピーク時は2014年で6000~7000人ほどだったそうなんですが、現在は福島県内の地元企業の方が7割ほど働いていて、施設に入る際、IDチェック、体内にある放射性物質の確認、危険物を持ち込んでいないかなど、かなり厳重なチェックを行った後に、携帯電話とかパソコンなどの持ち込みはできない状態で……

上柳:テロ対策でしょうね。

冨山:そうですね。入りまして、施設の中に入ると、作業員の方と非常にすれ違うんですが、結構「お疲れさまです」というような形でお声かけが飛んでいて、非常に活気があるような形で。大型休憩所にはコンビニとか大型食堂とかもあって、1個、大変な熱い中での作業にもなると思いますので、安らぎの場所になっていて。

実際に福島第一原発の中、いま、96%のエリアは、いわゆる「グリーンエリア」と言われていて、防護服なしでも行き来できるような形になっていて、僕が想像していた以上に、通常の工事現場みたいな。

上柳:なるほどね。岸田総理が行かれたときも、わりと普通の格好をされていましたものね。

冨山:そうですね。もちろん、コロナ対策でマスクはしているんですけど、比較的通常でいられるような。

上柳:グリーンエリアというのがかなり広い。96%。なるほど。

冨山:僕自体は防護服を着たんですが、これは5号機の原子炉建屋の格納容器の中にまで入らせていただくという、今回、特別な取材だったので、着たような状態。

上柳:だから防護服を着用になったと。

冨山:はい。

実際、東京電力の皆さんから現状についてのレクチャー、ご説明いただいてから、実際に施設の中を取材させていただきました。

最初に伺ったのが5号機の原子炉建屋の中で、6個原子炉があるんですが、5号機と6号機は地震津波で大きな事故になることがなかったんです。

上柳:そうですね。そのまま残っているんですよね。

冨山:はい。もともと定期点検中で、そのまま大丈夫で。

上柳:津波さえ来なければ、躯体としては、建物としてはちゃんと残っていたんだなと思いましたものね。

冨山:なので、5号機、6号機は、建屋としては「5」「6」と書いてあるのが残っていて、実際に格納容器があるところまで、今回、特別に取材させていただいて。5号機と6号機は、実はさっき言った1号機、4号機よりも海抜が3メートル高い位置にあって、津波被害が1号機、2号機よりもやや軽微だった。

上柳:なるほどね。

冨山:で、6号機の空冷式のディーゼル発電機1基だけが津波被害を免れて実働できて、5号機と6号機はつながっているので、これを使って5号機、6号機は全電源喪失を免れて冷却を続けられたので……

上柳:電源の喪失で冷却できなくてメルトダウンにいくわけですけれども、生きていたんですね。しかも、それが3メートル海抜が高いだけで。

冨山:そうなんです。1号機から4号機は、海抜10メートルの位置で、しかも、非常用ディーゼル発電機が地下とか1階に設置されていて……

上柳:これが問題ですよね。予測できていたんだと思いますけどね。

冨山:電源喪失で。実際に、なので、坂が3メートルぐらい、1号機、4号機に行くときに下がるんですけど、これでこんなに状況が変わるのかというのをまず感じました。

次に、1号機から4号機、間近に見ることができる高台に移動しまして、1号機、3号機、4号機は水素爆発を起こしていまして、1号機とかは実際建屋の鉄骨が見える状態で、2号機は水素爆発を起こしていないので、建屋は残っているんですけれども、その中に非常に放射性物質が残っているような状態で。

廃炉の状況としては、3号機と4号機は使用済み核燃料の搬出作業は完了していて、でも、さっき上柳さんからありましたが、1号機、2号機、3号機はメルトダウンを起こしているので、中に残っている燃料デブリを取り出す作業がこれから。

上柳:これからですよね。

冨山:11年経過していますが。燃料デブリを取り出す作業は30年から40年。

上柳:次の世代までかけて、技術を伝承しながらやっていくしかないんですよね。

冨山:デブリ処理費用が2031年度までで試算が1兆4000億円。人が入れないエリアもあるので、ロボットアームで実際に取り出す作業があるんですが、実は5号機、僕、今回、取材させていただいたんですが、2号機、3号機、4号機と同じ造りになっているので、5号機でまずロボットアームを入れて、実際の……

上柳:試しにやってみて、ちゃんと動けるか、移動できるかを5号機で試すと。

冨山:検証をしているという。

上柳:なるほどね。

冨山:ロボットアームも外国製のものなんですが、コロナの影響で……

上柳:そうか。外国の技術者の方が。

冨山:外国でやっている作業がロックダウンで1回止まってしまって。

上柳:そうか。そこにもコロナの影響があったんですね。

冨山:実際に遅れてしまって、だけど、国内のほうに持ってきて、外国でやる予定だったものを国内の技術者でやったりとか。いろいろ苦労はあるみたいですね。

そういった中で一番大きい問題になっているのは、ニュースでも見ますが、汚染水、処理水の問題で。

上柳:汚染水と処理水ですよね。

冨山:原子炉の中を冷却させるために、11年間、毎日、水を冷却を行っていて、毎日、大量の汚染水が発生していて。

上柳:そのままだと汚染水ですよね。

冨山:なので、実は1000トン入る超大型のタンクが、11年ずっと貯めているので、1000基以上敷地内に設置されていて、いま、およそ130万トン、処理水が貯蔵されていて。

上柳:除去設備で浄化処理したものを、今度は処理水、トリチウムだけが残っているものが、それでもいっぱいあるわけですよね。

冨山:はい。実際にこの処理水を適切に処理した上で海洋放出することは決まっているので、どう安全に放出できるか、いろいろな角度から検討準備。あと、実際に工事作業。もちろん、周辺への風評の影響への調査。漁業関係者の方々へのご説明とか、非常にたくさんの準備、配慮。

上柳:あると思います。漁業関係者の方も、トリチウムというのは韓国の原発でも流しているし、体内に入っても問題ないというのはわかっている。わかっているんだけれども、あなた方がこれを風評被害にしませんか? ちゃんとやってくれるんですか? というところはやっぱり心配でしょうね。

冨山:そうですね。今回見させていただいたところで言うと、私自身、東京・首都圏に暮らしているんですが、2011年3月11日から、当たり前なんですけれども、毎日途切れることなく……

上柳:そうだな。日々のニュース、いろいろなものに飛びついていって。でも、原発の現場では、作業員の方は毎日作業して、そして処理水が毎日増えているということですよね。

冨山:やっぱりマスクして、もちろん防護服とかを含めて、正直、僕が行った日は非常に暑かったので、汗が止まらなくて、大変な作業だなというのは……。

上柳:1日に何キロも体重が減っちゃうということがあるらしいですものね。暑い日はね。

冨山:だから、結構こまめに水分補給も含めて必要な状況でしたね。

あと、もう一つ、帰りに大和田さんから、富岡町にある東京電力廃炉資料館という、事故と廃炉に向けてどういう作業をされているのかというのを実際に紹介している資料館があって、こちらは、コロナでいろんな状況はあるんですけど、基本的に見学できるようになっておりまして。

上柳:予約すれば入れるみたいな。

冨山:伺えば、見れたりとか。あと、実は東京電力のホームページに、廃炉プロジェクトの紹介とか、実際に現場をバーチャルで見学できるのとかがあったので、少しでも触れていただけると、いろいろなことを考えていただけるんじゃないかなというふうに。

上柳:大和田さんにも私もいろいろお話を伺うと、東京で使っている電気をなんで福島で、そして、なんでこんな事故が起こったということに対する怒りはすごいんですけれども、でも、いま、対応に当たっていらっしゃる東京電力の方々に関しては、非常に敬意を表されているなというのを感じるときもあるんですけどね。なるほど。

大和田さんとは、あの震災の後、3週間後に東北放送から放送したときに、帰りの東北自動車道ラジオ福島を聴いていて、ああ、こういうパーソナリティの方がいるんだ、魂の放送をしているなと思って、そこからのご縁ということで、今度、私も機会があったら、ぜひ取材にまた行きたいと思いますし、冨山さんとは、また定期的に東北のほうに伺っていきたいなと思っております。

今日はどうもありがとうございました。

冨山:ありがとうございました。