2年ぶりのゲスト 養老先生

 

爆笑問題の日曜サンデー 2019年11月10日

 

(興味のあったところだけ)

中裕司:本日のお客様は、太田さんのラブコールにより、2年ぶり、2度目のご登場でございます。東京大学名誉教授の養老孟司さんです。前回2017年の12月ということで、ほぼ2年ぶり。

養老孟司:よく生きていましたね。(笑)

太田光:確かに。

 

10年ぐらい前に養老先生に戦後について太田さんが質問した。

太田:「あなたたちの世代がもうちょっとちゃんとあの戦争はなんだったのかというのを明確にしておいてもらわないと、我々理解しにくいんですよ」という話をしたら、「そんなものは言葉にできないことはいっぱいあるんだ」と先生が言って。

 

太田:東日本大震災が起きた後に、その前まで原発をあんなに推進していたのが、一気に反対派に回ったでしょう。それまでCO2削減と言っていたのが、火力をどんどんをもう一回やらなきゃならないとなった時に、俺はその前のチェルノブイリもちゃんと知っていたのに、そういえば言葉にできないなと。そっちを推進していたわけじゃないけど、問題はちょっとはあるとは思っていたけども、なかなかそれを表立って行動に起こすまでいかなかった。その空気というのは、確かに戦前の日本人と戦後の日本人で、あれは何だったの?と言われたところで説明できないよなというのは、ちょっとね。その時に養老先生の言葉を思い出したりしたんですよね。わりと似た感じだったかなあって。

養老:そうですね。今でもそうでしょう。台風で洪水がくるでしょう。荒川の堤防って都心側のほうが高いってご存じですか?江戸川側が低いんです。溢れた時は向こうに流れるようになっている。普段は隠れているけど。それが原発でしょう。だから、東京で使う電気を福島でというのは…。

 

(メール)諸事情があって札幌になったマラソン競歩、どうすればよかったと思いますか?

田中:東京オリンピックは興味あります?

養老:いや、ほとんどないですね。

 

田中:札幌で急遽やるってなってますけど。

養老:いいじゃないですか、別に。私は気にしていませんから。東京はしかし危ないというのは前から思ってました。まずいよこれはって。真面目な人ほどちゃんと走るから。(笑)途中で投げりゃいいんだけどね。

太田:完走を目指しちゃうからね。

養老:そうそう。死んじゃうでしょ。まだ若いんだから。

 

(メール)死者まで出た香港のデモ。どうお考えですか?

養老:人ごとじゃないっていう感じですね。気がつかないうちにああいう時代になっていく。最近、知り合いが中国のド田舎に行って、空港で5本の指の指紋をとられて、メールに何て書いてきたかといったら「私の個人情報は日本政府より中国政府のほうがたくさん持っている」。どこを歩いていても映っているでしょう。

田中:全部管理されているという。SFの映画の話が思ったより早くなっているというね。

太田:ただ、香港は、デモは今あれなのかもしれないけど、この問題は多分相当長引くというか、香港と中国、2つの政府でいけるのかどうかというのは、下手すると分裂までいくかもしれない。

養老:中国はある程度昔の感覚で、長い時間かければ、ひとりでにおさまるところへおさまるだろうで、それがそういくのかなという、実は昔と違った疑問が起きてきたんですね。

太田:そうですね。前の天安門事件よりももっと深刻な気が。

養老:つまり、人ごとじゃないんですよ、これは。

太田:そうですね。

養老:要するに、AIの進歩と社会の変化というのは、さっきのお子さんじゃないけど、それに子どもたちが適応していって、それなりにやっていけば、それはそれでいいのかもしれないけど、嫌な問題を考え出すといっぱいありますよ。例えば、人の遺伝子をいじっちゃうという話があって、これも技術的にはどんどん易しくなってくるので。遺伝子導入の作物の話じゃないですよ。

太田:DIYとおっしゃっていましたね。

養老:そうですよ。中国はルールをやっていませんから。

太田:とめようがないですもんね。どうなるんですかね。養老先生の遺伝子なんかちょっともらいたいぐらいだけどね。

養老:やめたほうがいいですよ。(笑)