ママバースデー

 

アルコ&ピース D.C.GARAGE 2019年5月7日

 

酒井:4月2日、先月、僕の母ちゃん、バースデーなんです。

平子:あ! ママバースデー。

酒井:ママバースデーだったんですけど。いつも、メールとか、やって(何かやったとして)物を贈る、みたいなのばっかだったんですけど。

平子:でも、メールはちゃんと送ってんだ。

酒井:メールはやってましたね。零時に。

平子:あ、そう。

酒井:はい。

平子:JKみたいだね。

酒井:JK。母ちゃんも喜ぶし。JKになった気でいてほしいし。

平子:フフフ

酒井:ずっとJKでいてほしいから。

平子:グーグー寝てんじゃねぇーの? 8時ぐらいに(笑)。

酒井:(笑)今回どうすっかなと思って。飯でも連れてってやろうかと思って。

平子:ああ、それはいいね。

酒井:なんなら、姉ちゃんも今、ガキ忙しいからさ、家族でさ、姉ちゃんもちょっとお休みみたいな感じで。

平子:あら、いいじゃない。

酒井:そうそう。3人で行ってやろうと思って。

平子:理想だよ、そんなのは。

酒井:ねえ!理想じゃんか。

平子:末っ子が連れてってあげるんでしょう?

酒井:そう。問題が、母ちゃんがやっぱ、気仙沼生まれでナマモノ食えないって、これやっぱ一番のね。

平子:(笑)

酒井:一番の問題なのよ、これ。

平子:ホントだね。そっか、気仙沼出身で刺身ダメ?

酒井:刺身ダメ。何食ってきたん?と思うけどね、俺。気仙沼出身の奴で刺身食えないって、ほんと。

平子:刺身が主食だもんね。

酒井:うん。

平子:山盛りの刺身にちょっとした白米でしょう?

酒井:(笑)

平子:気仙沼なんていったら。

酒井:ほんと、そうよ。

平子:あんな旨いもんばっか。

酒井:ほんとそうよ。なんにも食えないんだから。ホントの母ちゃんなのかな?と思ったりするもんね。

平子:あっ!(笑)

酒井:俺も姉ちゃんも大好きだし。

平子:そうだよね。

酒井:おかしいもん、その血筋。

平子:外国の人以外で刺身食えないってなかなか聞かないもんね。

酒井:子どもの頃からみんな食べてんのに、絶対食えないつって。

平子:へえ。

酒井:そうなると、絶対寿司ダメ。

平子:ダメだね。

酒井:超いい焼き肉屋も考えたんだけど、それは川崎でもちょっといいとこあるし、食えるしなと思って。

平子:まあね、珍しい感じでは…。寿司はちょっとね、行かないと食べられない場所とかあるから、なんかね。

酒井:そうなのよ。結局母ちゃん、(すし)ざんまいの玉子と穴子でいいとか言うからさ。舌バカだから。

平子:フフフフ そうか、玉子と穴子は大丈夫なのね。

酒井:大丈夫なの。で、いい焼鳥屋も、レバー生じゃんか。半分。

平子:そうだね。赤くなってる。

酒井:そんなの絶対食わないから。

平子:めちゃくちゃ旨いんだけどね。肉もダメなんだ、そういう系統は。火通ってないと。

酒井:肉も絶対ダメ。

平子:いい肉は生っぽく出すもんね。

酒井:そう。どうしようと思って、もうやめようかなと思って、俺、考えるの面倒くせーから。

平子:そうだね。

酒井:でも、ネットとかで調べて、あ、中華だったら大丈夫だと思って。

平子:なるほどね。

酒井:東京駅のホテルあるじゃんか。

平子:うん、うん。

酒井:あそこにすげぇいい中華あるつって、食べログ4.08みたいな(笑)。

平子:ええっ! すごい。

酒井:ミシュランとったシェフがやってる、みたいな。

平子:すごい、すごい、すごい。

酒井:結構するのよ。1万ちょっと。1人、コースで。

平子:そうだろうね。

酒井:でも、こんなのたまにしかないからと思って、3人で予約して。先月末ぐらいにさ、行ったのよ。

平子:うん。

 

酒井:東京駅で待ち合わせしてて。母ちゃん、まず一発目に来てさ。化粧めちゃめちゃしてきて、気持ち悪っ!

平子:いや、まあまあまあ。

酒井:キモッ!

平子:いや(笑)

酒井:やろうとしてるん?コイツ。

平子:いや、ダメだろう(笑)。やった結果がおめぇなんだよ。ハハハハ

酒井:そうだ(笑)。確かにそうだ(笑)。

平子:まあ、でも、緊張というかね。

酒井:なんかさ、抜けのロケーションも、いつもは言ったら砂壁の家、実家なわけよ。

平子:そうだね。

酒井:それが東京駅の明治の造りみてぇな、あんな。

平子:昔ながらのね。

酒井:なんか全然違げぇーなと思って。

平子:だから、せっかくだからっていう、頑張っておしゃれをしてきたっていう女心でもあり、あの世代の方って、サザエさんでもそうだよ。デパート行くだけでもおしゃれをして一張羅を着てっていうそういう世代の人だからね。お前は黙って、お前。

酒井:いや、マジでキメェすよ。

平子:ハハハハ

酒井:キメかった。俺もなんか(笑)。

平子:17歳の、言い方が。母ちゃんも間違えてるし、おめぇも違うし。

酒井:ハハハハ 全部、雰囲気も、外の風景も全然違うから、あ、ヤバ! 母ちゃんとこういう時って何話すんだっけ?みたいになって。

平子:ああ。いつもは、そうか、川崎からそんな出ないわけでしょう?

酒井:うん。ヤバい、早く姉ちゃん来ないかな、姉ちゃん来ないかな、ヤバい。シーン…みたいな状況、ずっと続いちゃって。

平子:緊張もしてるしね。お母さんもね。

酒井:うん。「天気いいね」みたいな、なんにもないような会話しかなくて。

平子:うん。

酒井:したらお姉ちゃんが登場して、まあ、姉ちゃんはおしゃべり。1人いたら助かる。ベラベラベラベラ入ってきてさ。「ごめん、遅れちゃった」ぺちゃくちゃぺちゃくちゃぺちゃくちゃ、お姉ちゃんお母さんとずっとしゃべってて、あ、よかったと思って。

で、お店向かって。まあ、すんごいのよ。お店の雰囲気も。

平子:あんな場所にあるやつだもんね。

酒井:扉、バカ重い、みたいな。

平子:人立ってる、みたいなやつでしょう?

酒井:うん。椅子もちゃんと引いたりしてくれて。

平子:ああ、はいはいはいはい。

酒井:ずっと3人とも緊張しちゃってさ。出てくる料理とかも、前菜からなんかわけわかんないもん。

平子:中華、ワーッと出てくるんじゃなくて、1品ずつどうぞという。

酒井:1品ずつ。

平子:ああ、なるほど。

酒井:ビールとかもすげぇ高くてさ。どうしよう、やめようかなと思って。

平子:なんでだよ?(笑)そこまでいいじゃない。

酒井:そもそもコースで1万て、プラの部分じゃん、酒はさ。

平子:プラ?

酒井:プラスの部分じゃんか。

平子:ああ、ま、そっか。コース1万幾らプラスアルコールだもんね。

酒井:完全、詐欺だわと思って。

平子:詐欺じゃねぇんだよ!(笑)いい食材を、名シェフが、いい食材を用いて、場所代もあるしね。

酒井:ま、やられるてけどいいか、詐欺られてるけどいいか。誕生日だし。

平子:ぼったくりじゃない。違う違う(笑)。どっちも違うんだよ。

酒井:ハハハハ

平子:それは一つのいい思い出で、いいお店に息子が連れてきてくれたのは嬉しいんだよ。だからお化粧もきちんとしてくるし。

酒井:ハハハハ でも、気づけたのはやっぱ勉強にはなりましたよね。

平子:違うんだ! 高い勉強代じゃないのよ。そういうもんなんだ。いい場所ってぇのは。

酒井:ギョーザ食いたかったのに。普通のギョーザ。ハハハハ

平子:それは日常なんだよ。川崎の日常だろ。

酒井:すんげぇの。こんだけキノコ使ってます、みたいな。

平子:うん!

酒井:でっかいプレートに見たことないキノコがいっぱい盛りだくさんに盛ってあって、これをスープにしましたって、こんなちっちゃい器にスープ入ってるんだよ。めちゃくちゃ旨かった、それ。

平子:旨いよ、そんなの。

酒井:ゴチになります、幾らかなあ、みたいになってるもん。

平子:そういう店でしょ?

酒井:そんなレベル。マジで。

平子:それで出てきててもおかしくない店なわけでしょう?

酒井:うん。うんめぇ、うんめぇつってさ、みんな。

平子:みんな喜んでくれてるんでしょ? お母さんだって。

酒井:そう。「3人でご飯なんて行くのいつぶりだろうね?」とかって言って、昔話みたいのするじゃんか。

平子:そうね。

酒井:俺、昔、お母さんが近所の着物屋から走って帰ってきて、「タダでフレンチ食える券もらった!やったー!」って言って。

平子:待って(笑)ちょっと待って。着物屋から走ってきて?

酒井:そう。俺もおかしいなと思ってたの。「成田空港の近くだって、やったー!」つって「みんなで行こう!」って、それこそお母さんおめかしして、3人で空港の近くで。いまだに覚えてるけど、夕日に照らされたオーストラリア航空のカンガルーが光りながら離陸する風景を今も覚えてるっていう話して。

平子:夢なんじゃないの?(笑)

酒井:いや、マジ、マジ。で、フレンチ食って、最高の思い出のはずだったんだけど、フレンチ食ってる席のみんな、おばさんみたいのがそこに入ってきて、「ちょっとこれから皆さん来てください」みたいなこと言って、そのホテルの地下みたいなところにみんなで連れてかれて、着物とか。

平子:あー。

酒井:宝石とか売ってて、「よーい、スタート!」みたいなことを言うのよ。買わなきゃいけないみたいな状況になってて、うさん臭い人いんの、いっぱい。

平子:うぅわっ。

酒井:お母さんもなんかその気になっちゃって、その時。

平子:提携してんだ。

酒井:そう! やられてる。

平子:食べさせてもらった分の感情も動くっていう計算上のもとのやり口。

酒井:そう。俺も小学校2年生、3年生ぐらいだったけど、これは変な、よくない世界だと思って。

平子:父ちゃんも仕事で来てないわけでしょう?

酒井:そう。どうすることもできない。でも抵抗したい。ワンワン泣いたの、俺。

平子:ハハハハ

酒井:「お母さん帰ろうもう! いやだこんなとこ!」つって。「静かにしなさい!」お母さん目おかしくなっちゃって「買おうかなあ」とかって(笑)。

平子:ハッハッハッハッ そっちが詐欺じゃなぇーか!(笑)

酒井:ダメー!つって。「ちょっとしたイヤリングみたいのたしか買って帰ったねえ」みたいな、中華屋でしてて、あ、いいなあとか。こんな話もなかなか3人で改めてすることないなと。

平子:そうだよ。

酒井:で、飯食って、さんざん食って、中華、チャーハンとかも普通に出てくんだけど、パラッパラで、今まで食ったチャーハンの中で一番旨かったぐらい本当に旨くて。

平子:パーマ大佐が作ったチャーハンが一番旨かったつってた。

酒井:あんなのゴミ!

平子:ハハハハ

酒井:ゴミ飯。ゴミ炒め。全然旨くない。

平子:ゴミ炒めって何だよ(笑)。焼却炉じゃないんだよ(笑)。

酒井:さんざん食べて、飲んで。「この後お茶が出ます」とかって言って。

平子:最後にね。

酒井:うん。「いろいろございますけど、メニュー見てください」。2500円とか3000円とかってあるのよ。

平子:お茶?

酒井:お茶!

平子:セットのじゃないんだ。

酒井:何年ものみたいな、たしか書いてあったと思うんだよね。

平子:はぁー。

酒井:いや、もう詐欺!

平子:さ!ヌー……。

酒井:こんなお茶葉はないよ。

平子:お茶…うーん、いや、いいお茶はいいお茶で、中国茶とかあるからね。

酒井:おかしいなと思……。

平子:それはもう、いいやつはいいよ。せっかく、そんな機会がないからね。

酒井:まあま、そうね。誕生日だから、それで詐欺られてもいいかと思って。

平子:詐欺じゃねぇんだけどな(笑)。いいお茶なんだよ。ちゃんとしたお茶だよ。

酒井:手震わせながら、これ、2500円のやつつって。

平子:うわぁ、すげぇ。

酒井:マジで助かったのは、1杯じゃなかったのよ。急須で。

平子:危なっ。

酒井:危なかった。それでも高いけどね。

平子:(笑)いや、まあまあ。

酒井:それでも高い。急須で。

平子:ピッチャーみたいなことでしょ?

酒井:言ったらそう。旨くて、それも。

平子:旨いんでしょ?

酒井:旨いのよ。

平子:どんな味? 渋いの? 甘いの?

酒井:渋さもない。甘み。甘みだけ。甘みと旨み。

平子:へえ。

酒井:デザートに杏仁豆腐みたいのだったかな。イチゴをスライスしたやつがウワーッて一面イチゴになってて。めちゃくちゃいいことしたなと俺も思って。さんざん飲んで、いい会だったと思ったらさ。

平子:それはそうだよ。

 

酒井:母ちゃんがね「ちょっと見てほしいものがある」みたいな。「別にそんな気にすることじゃないんだけど」つって。

平子:怖っ。何それ?

酒井:「別に全然気にしないでいいんだけど」つっておもむろに手帳出して。

平子:えっ?

酒井:俺と姉ちゃんにパッと見せんの。

平子:うん。

酒井:お母さんの字ってわかるじゃんか。字体っていうか。

平子:そうだね。

酒井:「延命治療しないでください」。

平子:えっ?

酒井:自分の名前、サイン、署名書いてあって。

平子:何?

酒井:もし万が一、いろんなことが、これからどうなるかわかんないから。

平子:あ、うん、うん、うんうんうん。

酒井:延命治療しないでください。

平子:うん。

酒井:えっ? お姉ちゃんも、あんなおしゃべりなお姉ちゃんも、えっ? 一瞬シーンみたいな空気になって。

平子:他人の俺もそうだよ。

酒井:ヤバい、この空気ヤバいと思ってお姉ちゃんも。「まあまあ!大丈夫!お母さんみたいな人は大丈夫!絶対長生きするんだから。管なんて抜いてやるんだから(笑)そうよね」みたいな。でも、なんか、俺もお姉ちゃんも食らってるのね。

平子:そんなの食らうよ。

酒井:思いっきり食らってて、まま、じゃあ、お会計しようかつってお会計して、2人とも家族もあるし帰るつって、別方向に向かって。俺、八重洲口のほうにいて、丸の内のほうに歩いてて、「延命治療しないでください」のあの字体と、あの赤い手帳の感じ。ずっと頭に残ってて、泣くと思って。

平子:(笑)

酒井:これ、マジで泣くわって。

平子:うんうん。

酒井:マスクしてたんだけど、ヤバい、泣くからなんか歌おうと思って。

平子:(笑)

酒井:曲を流そうと思って。

平子:うんうん、頭の中にね。

酒井:あるじゃん。

平子:わかる、わかる、わかる。

酒井:ランダムじゃん、その時。

平子:わかる、わかる。タラララーーって今探してんのね、頭の中でね。

酒井:Spotifyだから、自分の頭の中が。

平子:うんうん、そうだね。

酒井:サカティファイが(笑)選曲してくれてて。

平子:ジャンル分けと(笑)アルバムで分かれてバーッて出てくるんでしょう?

酒井:したら、選曲ヒットしたのは、その時わかんないんだけど、斉藤和義の『歌うたいのバラッド』。

平子:(笑)

酒井:♪今日だってあなたを思いながら~♪その歌、頭の中に流れて、エモっ!

平子:いや(笑)。

酒井:俺、歌うたいでもないし。

平子:そうだね。

酒井:母ちゃんの歌でもないけど。

平子:何でもない。

酒井:エモっ!ってなって、急にマッチして、それが。ドワーッて涙流れて。

平子:何でだよ(笑)。違うことで泣いてんじゃん(笑)。

酒井:ほんと。

平子:マッチしちゃったのね。

酒井:マッチしちゃって。

平子:曲調がね。

酒井:八重洲から丸の内までのあそこの通路で俺ガン泣きして。

平子:めちゃくちゃ(笑)。

酒井:帰れないと思って。ぐちゃぐちゃに泣いて帰ったっていう。

平子:ハッハッハッハッ

酒井:ちなみに、その中華の会計は5万。

平子:エモっ!

酒井:エグー!のほう(笑)。

平子:歌うたいのバラッドじゃん(笑)。

酒井:ハハハハ

平子:そういう歌だっけ?歌詞(笑)。中華の会計高過ぎて。ハハハハ

酒井:恐ろしかった、ホントに(笑)。長生きしてほしいよ、ホントに。

平子:ホントだね。

 

 斉藤和義歌うたいのバラッド

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