羽田圭介×岩井勇気

 

ACTION 2019年10月9日

 

 

羽田圭介TBSラジオから生放送でお送りしているACTION、木曜日、羽田圭介です。

幸坂理加:幸坂理加です。

この時間はゲストアクション、今日のゲストは、お笑いコンビ、ハライチの岩井勇気さんです。よろしくお願いします。

岩井勇気:どうも~ハライチ岩井です。よろしくお願いします。ありがとうございます。

羽田:よろしくお願いします。

幸坂:岩井さん、33歳でいらっしゃるんですよね。

岩井:33です。

幸坂:羽田さん、今月で34歳。

岩井:あら、僕の1コ上じゃないですか。

幸坂:そうですね。

岩井:意外と近いんですね。

幸坂:年齢も近いですね。どうですか?お互いの印象は。

岩井:いやぁ、なんかやっぱり、そのぉ(笑)、最初見たのが『ウチくる?!』なんかに出てたのを僕見たんですけど。

羽田:ああ! その時って、『ウチくる?!』で岩井さんいらっしゃいましたっけ?

岩井:いました、いました。

羽田:そうですよね?

岩井:俺、ちょこっとしか出てないんですよ。

羽田:そうですよね? そうだ、そうだ。あの時から本当に3~4年前とか。

岩井:収録現場でずっと見させてもらって、なんか不思議な、なんか面白い人だなって(笑)。

羽田:なんか鍋食べてたんですね。その時。

岩井:あ、そうです、そうです。そんな回ありましたよね。

羽田:その時以来ですね。

岩井:それ以来でございます。

natalie.mu

 

羽田:その後、僕は澤部さんとは別の仕事とかでご一緒することあったんですけど、岩井さんはそれ以来ですね。

岩井:そうなんですよ。やっぱ俺に会うって、やっぱね。

羽田:レア。貴重な。

岩井:そう。難しいですから、やっぱり(笑)。

幸坂:ええ? そうなんですか?(笑)

岩井:澤部は会えるんですけどね。活動してたら。

羽田:貴重な機会。ありがとうございます。

幸坂:今回、貴重な機会を。

岩井:だから大事にしてくださいね。ハハハ!

羽田:大事にします。貴重です。

 

初エッセイ集

幸坂:岩井さん、初のエッセイ集。初なんですね?

岩井:そうなんですよ。なんにも書いたりしたことなかったんですけど、書かせていただいて。

幸坂:『僕の人生には事件が起きない』新潮社から先月25日に発売されてますけれども、私、3店舗書店を巡ったんですけど、売っていなくて「注文になります」って言われて。書店で売り切れ続出ということですね。

岩井:いやぁ、ありがたいですけど。

羽田:4刷?

岩井:4刷まで2週間弱ぐらいでいかせていただきました。

羽田:これ、よく、すごい売れてる本ですよっていう空気感出すために、少ない部数でたくさん刷るっていうのは

岩井:ハハハ!

幸坂:あっ!

羽田:よくあるんですが、僕はそんなんじゃ騙されないぞと思ってて。4刷で何万部とか?

岩井:いや、俺、わかんないですけど、なんか新潮社の人が「4刷ですよ」って言うんですけど、僕もそれに騙されないようにしようと思ってるんです(笑)。

羽田:騙されないように(笑)。でも、確かに新潮社はわりと初版とかも渋るほうなんですが(岩井:ああ、そうなんですか)、ただ、でも、結構ひどいところは、500冊単位で刷ったりとか(岩井:ええっ!?)、1000冊単位で刷ったりとかというところもあるんですけど(岩井:それだったらヤバいですね)、さすがに新潮社は3000から4000の最初はロットで刷ってるだろうなって考えると、しかも多分初版も岩井さんなんでそれなりに刷ってるとしたら、結構な冊数だろうな。(岩井:ハハハ ほんとですか?)4刷でも、多分結構な冊数だろうなと思います。

岩井:僕は、乗せてきてるだけじゃないかって思ってるんですけどね。

幸坂:いやいやいや。

羽田:新潮社は最低限の冊数、あれぐらい刷るだろうなというのは何となくわかります。

幸坂:話題沸騰の一冊ですよ。

岩井:いやいやいや。なんかでも、そうなんですよ、そうやって手に入れられないなんていうことを言っていただくんですけど。

羽田:初版6000! 6000か。多いな。僕が新潮社で出したハードカバー、初版4000とかだった。

岩井:ハハハ それより。でも、やっぱ一応こういう活動してますから、僕は。

羽田:そうですね。

岩井:見込まれてはいると思う。今日も近くの書店に行ったらなくて。ただ、今日、又吉直樹先生の本が発売になりましたんで、霞むんじゃないかなっていうふうに(笑)。

羽田:別っちゃ、ジャンルが。

岩井:芸人の本として。

羽田:ああ、なるほど。相乗効果はあるんじゃないですか。

岩井:相乗効果、なるほど。

 

 

羽田:本でも書いていらっしゃいましたが、今回の本を出されるまで、漫才のネタ以外であまり文章を書いたことがなかったそうですが、本当ですか。

岩井:ないですね。あと、ツイッターぐらいですね。

羽田:最初に執筆のオファーが来た時も乗り気じゃなかったんですか?

岩井:全然。なんで俺にオファー来るんだろうって。もっといるでしょうって思って(笑)。最初書いたんですよ。言うから。1000字ぐらいのやつ書いたんですよ。そしたら、なんかちょっと、ボケが入り過ぎてますね、みたいな。芸人のエッセイなんで、芸人が書く意味って何だろうと思って、ちょっと面白く書いてやったら、いや、ボケ要らないですって言われて。だったらエッセイストに頼んだら?と思いましたけど(笑)。

幸坂:(笑)

羽田:多分芸人さんでも、ネタしかやらないっていう方もいらっしゃるとは思うんですが、岩井さんの場合は、ラジオとかでフリートークでしゃべる機会っていうのは前からあったわけじゃないですか。

岩井:ありましたね。

羽田:だから、そういったところでわりとしゃべる機会が多かった方が、文章にエッセイとして書くということの違いっていうのはありました?

岩井:雰囲気でオチをつけちゃっている時とかあるじゃないですか。

羽田:いや、わかんないですけど(笑)。

岩井:あるんですけど。

羽田:あるんですね?

岩井:うん。2人の…相方とやってるんで、相方とのやりとりで、何となく面白くなった、みたいなのじゃなくて、ちゃんと一応話にしなきゃいけないんで、ラジオでやってるトークでも全然文章にできないな、みたいのはありましたね。

羽田:そうなんですね。

幸坂:へえ。

羽田:でも、エッセイって、書き言葉って情報量が多くなるので、どうしても。自分をさらけ出すところも多くなると思うんですが、その辺の、放送メディアではやるけど、活字メディアでやると恥ずかしいみたいな抵抗とかってなかったですか?

岩井:ありましたね。最後のエッセイ、2500字ぐらいなんですけど、最後の一文をオチにすると、すごい、やってやった感みたいなのってないですか?(笑)

羽田:あ、そっかぁ、確かに。

岩井:ラジオだと、バッとオチ台詞みたいに、こういうことがあったんですよ、みたいに言ったら、ジングル流してくれて終われるんですけど、すごい恥ずかしくなるんですよね、文章にするとね。

羽田:確かにそう…ああ、確かにそっかぁ。その違いがあるんですね。

岩井:だから、こんなことがありっていうラジオで言うオチを書いて、そして僕はこう思った、みたいなことを書かないと、哀愁で終わらないと、なんか恥ずかしいんですよねぇ。

 

タイトルについて

羽田:このタイトルが『僕の人生には事件が起きない』というこのタイトルが決まったのってどのタイミングですか?

岩井:書き始めてちょっとしてから、新潮社の人がタイトルどうしましょうか、みたいに言ってる時に、そのエッセイの中から一文抜いたのを何個か出してきた中で、それにしたんですけど。

羽田:ああ、なるほど。

岩井:僕、ライトノベルぐらいは読んでたんで、全く活字読まないんですけど、中学の頃、ラノベ読んでたんで、ラノベみたいなタイトルじゃないですか、それ(笑)。

羽田:確かに。『僕の人生には事件が起きない』。でも、これって正直だなという。大体みんな自分の人生にはいろいろあったって言いたがるし。

岩井:芸能人は特にそうですよね。

羽田:思いたがるじゃないですか。一般人レベルでもあるので、ましてや芸能人の方はっていうところがあると思うんですが、でも、わりと、こういうことを昔自分の人生、人生がわりと平板だというようなことをベテランの小説家の人が書いた、対談本だったかなんか、そういうのを読んだりしたことがあって、だから、ベテランの作家と同じことやってんなと思って(笑)。

岩井:ハハハ あ、たどり着きましたね、早めに。

羽田:最初っからたどり着いてるな。すごいなぁと思って。

岩井:あ、いいですね。それ、うれしいですね。

羽田:わりとそういったところで、自分を、自分の記憶を捏造せず、わりと冷静に観察して、正直に出すっていうのは、わりとその観察眼の冷静さみたいなところが非凡なる才能かなと思いました。

岩井:いやぁ、ありがとうございます。盛るのがあんまり僕好きじゃないんで、盛らずに、妄想とかでふくらませたかな、みたいな。

羽田:なるほどね。

 

小説的なエッセイ

羽田:妄想が広がっていくっていうところで、僕も結構、例えば、この本の中で好きだったのが、仕事が終わった時に、テレビ局側から用意されたタクシーがVIP仕様のタクシーだったっていうあのエピソードが好きで。

岩井:ああ。そうですね。

羽田:このエッセイは非常に小説的だなと僕思ったんです。

岩井:あ、本当ですか?

羽田:というのも、よくタレントさんがエッセイとか書いたりすると、わりと自意識過剰系のエッセイがよくある形だと思うんですよ。

岩井:多いですね。

羽田:というのも、自分の感受性を敏感にすると、なんでも事件にはなるわけですよね。

岩井:ええ、ええ。

羽田:だから、例えば、そういう方がVIPタクシーのことを書こうとしたら、「この運転手さんにこう思われているんじゃないか」っていう、わりとちょっと被害者意識っぽい立場からのエッセイで終わると思うんですが、このエッセイの変わっているところは、VIPタクシーを降りた後に、じゃ、もうちょっとVIPっぽく過ごそうと思って、豪華な出前を頼もうとしたりとか、そこでまた別のことが始まるんですよね。それって被害者意識とかでは全然なくて、自分をまた別のifという状況に置いてみてという、なんかそれが、自意識過剰系のエッセイと全然違うところで、そこで創作、自分でリアルに創作をしているという、それが非常に小説的で、僕、これすごい好きなんです。

岩井:そこの話のことを言ってくれた人初めてです。

羽田:そうですか?

岩井:うれしいっすね。

羽田:この小説とエッセイの境がない感じが結構好きなんですね。

岩井:へえ。なんか大変そうですね。タレントにエッセイ持ってこられて言わなきゃいけないのは(笑)。

羽田:これはすごかったんですね。

岩井:結構あるんすね。

 

「怒」が一番書きやすい

羽田:あと、組立式の棚についてのエッセイが2回も入っているじゃないですか(笑)。

岩井:そうなんですよ。

羽田:最初のほうと終わりのほうに、また組立式の棚を組み立てるのが難しくてイライラするっていう話をまた書いてるよ!って。

岩井:そうなんですよ。

羽田:その原動力。こういうイライラとか不満というのが書く原動力。

岩井:喜怒哀楽だったら怒が一番書きやすいですよね。

 

今、イライラしていること

羽田:そうなんでね(笑)。今イライラしていることってありますか?

岩井:今は、また家なんですけど、階段があるんですよ。メゾネットなんで。メゾネットの階段の上のところにワイヤーを張って、ハンガーで服をかけようと思ったんですけど、釘を刺してワイヤーを張らせてたんですけど、壁の一部ごと全部抜けちゃって(笑)。

幸坂:えーっ!?

羽田:壁の一部ごと抜けちゃって(笑)。

岩井:だいぶピンピンに張って、服いっぱいかけてたんで、壁ボコン!と抜けちゃって。

幸坂:重みでやられちゃったんですね(笑)。

岩井:ふざけんなよ!って思って(笑)。

羽田:それは、敷金の精算とか、結構高くなりそうですね。

岩井:そうですよ。出るときめちゃめちゃ高くなるだろうなと思って、どうにか自分で直せないかなと思って(笑)。

羽田:(笑)

幸坂:難しいんじゃないですか?ご自分で直すの。

岩井:DIYで。

 

「自分の生い立ちを話せない訳」

羽田:あと、「自分の生い立ちを話せない訳」っていうエッセイの中で、芸人としての下積み時代がなかったのにもかかわらず、テレビのスタッフからは若手時代の面白エピソードを聞かれて辟易するなんて、ぶっちゃけ過ぎじゃないですか?

岩井:俺、22とかでテレビ出てますんで、下積みとかないですし、言ったところで、ほんとに積んできた芸人に失礼じゃないですか。

羽田:確かに(笑)。

岩井:羽田さんとかもないですか? テレビに出る時、なんか面白いことないですか?みたいにめちゃめちゃ言われる感じ。

羽田:僕もテレビ出始めの頃に、「なんかもっと昔下積みで苦労したんじゃないですか?」とか。僕もわりと同じで、23でマンション買って、そんなに住むところに困ってなくて、だから、「もっと苦労したことないですか?」という番組前のスタッフさんからの打ち合わせで、これ、検察の尋問と同じで(岩井:ハハハ)、ないことを言わない限り、ここから帰してもらえないんだなというところで、「あります…」と言って、そこからおそるおそるウソの話作っていってって。

岩井:なんて言うんですか、ウソつかされてるみたいなところありますよね。

羽田:つかされますよね。じゃないと帰してもらえないっていうか。

幸坂:そうなんだ。

岩井:そうやってウソで練り固められたバラエティ番組ができ上がっていくわけじゃないですか(笑)。

羽田:そうだな。

幸坂:ハハハ

羽田:それを例えば小説家の僕が言うならいいんですけど、芸人さんである岩井さんがこんなこと書いて大丈夫かなと思って。

岩井:大丈夫じゃないです。だから俺にあんま出会えないんですよ(笑)。

幸坂:あ、そういうこと!?

羽田:そういうことなんですね。

岩井:いいと思っているんですよ別に。

 

「澤部と僕と」

羽田:あと、一番最後かな。「澤部と僕と」というこの本のための書き下ろしのためのエッセイですね。

岩井:澤部のことをちょっと書いてますね。

羽田:澤部さんを、澤部さんには何にもないっていう。無の人と評して、オリジナリティがないからこそ自分を押し通すことをしない。だからこそバラエティ番組で澤部さんは活躍できるっていう。確かにそうなのかもしれないけど、こんなにはっきりと(岩井:ハハハ)長く、澤部さんにはファンがいないとか、後輩に憧れられないとか、何せ澤部自身もその無に全く気づかないまま生きているとか、よくこんなによく言うなあ(笑)。

岩井:ハハハ

幸坂:澤部さん、どんな気持ちで読んでるのかなって。

岩井:大丈夫ですよ、別に澤部。

幸坂:大丈夫ですか?(笑)

岩井:もう大丈夫ぐらいのところまで行ってるでしょう、こんなこと言われたって別に(笑)。

羽田:すごいですよね。

幸坂:澤部さんはこのエッセイ読まれたんですか?

岩井:読んでないと思いますよ。

羽田:読んでないんですか?

岩井:無の奴に何言われても響かないですから(笑)。

幸坂:無の奴(笑)。

羽田:読んでないんですか。

岩井:創作する人間だったら、なんか言っていただければ、ああ、そうなんだと思いますけど、あんまり別に感想を求めてないです、澤部に(笑)。

羽田:そうなんだ。

幸坂:相方さんなのに(笑)。

 

あんかけラーメンの話

羽田:あとは、幸坂さん、なんか気になったエッセイとかありますか?

幸坂:あんかけラーメンの話、ちょっと気になりましたね。

岩井:あんかけラーメンの汁がおいしいなってなって、水筒で持ち歩いて。

幸坂:そうそうそう、持って歩いて(笑)。すごいですよね。それ、公園とかで飲まれてたんですよね。

岩井:水筒を持っていればどこで飲めるんですけど、誰も俺があんかけラーメンの汁を飲んでると思わないだろうなって思いながら飲むっていう。

羽田:(笑)

幸坂:それがちょっと狂気を感じるというか。

羽田:確かに。

岩井:なんにも悪いことしてないですよ。ただね。

羽田:ただ、そこに実生活でそういうシミュレーションを結構されるんだなっていう。

岩井:ああ。

羽田:こういうことをしたらどうなんだろうっていうわりと実験をして、それに対して自分がこう思ったということをわりと書かれているので、わりと能動的なんですよね。

岩井:だから、僕、フットワーク軽いんですよ、めちゃめちゃ。

羽田:そうなんですよ。なんか結構いろんな行動をされているし、行動することでネタというか、何を作ろうとされているというか、結構行動的っていうイメージがすごい。

岩井:なんか書くためにとか、ネタ収集のためにやるようにはしてはないんですけど、やってみたらなんか面白そうだなとか、みたいなのは、あんまり足踏みしないようにしてますね。

 

平凡な日常を楽しむコツ

羽田:あと、本の中で、「誰の人生にも事件は起きない。でも、決して楽しめないわけではない」と綴っているんですが、平凡な日常を少しでも楽しむコツってなんかありますか?

岩井:ハハハ それなんか聞かれますね。

羽田:聞かれます?

岩井:いや、でも、別にやってる時は辛いとか、しんどいとか、つまんないとかでいいんですけど、後々思い返してみて、こうやって変換することができるんじゃないかなと俺は思ってるんで、嫌な記憶を上書きすることができると僕は思うんですね。

羽田:ああ、そうだよなぁ。

 

小説のすすめ

羽田:これ、まだエッセイって本になった後も書かれているんですか?

岩井:書こうと思ってます。今のところ…

羽田:まだ書いてはない?

岩井:ちょっと疲れたんで、2~3カ月休んでるんですけど(笑)。

羽田:僕は、これ読んでて、どっちがいいのかなぁと思ったんですよ。半分ぐらいまで読んだ段階で僕は、これはエッセイ書くのはやめて、というのも、エッセイってエピソードの消耗スピードがめちゃくちゃ早いわけですよね。

岩井:ええ、ええ、ええ。

羽田:どうせだったら、小説っぽいエッセイ書いてるんだったら、小説書いちゃったほうがいいんじゃないのかなっていう。

岩井:ああ、なるほど。ほんとですか?

羽田:なぜか小説書くと、なんか偉いみたいな風潮もまだあるんで。

岩井:ハハハハ! そうですね。

羽田:しかも、本を読まない人ほど、本出してる、特に小説出してる人を偉いみたいな

岩井:いや、そうですよ。

羽田:なぜか持ち上げる。本読んでる人はそう思わないんですけど、本読まない人はなんか持ち上げるんですよ。というのがあるんで。

岩井:やっぱそうですよね。エッセイストってコメンテーターか、ロフトプラスワンでライブやるだけですからね(笑)。

羽田:ロフトプラスワンのイメージあるんですけど、だから、なんかそれで、で、僕も単純に小説読んでみたいなと思ったんですね。

岩井:ほんとですか? ありがとうございます。

羽田:でも、そこの動機の部分では、動機というか、そう思ったところでは、僕自身も最近、エッセイを絞ろうかなと思ってる部分もちょっとあったんですよ。

岩井:なんかやられてますよね。

羽田:エッセイを連載2本やってるんですけど、やっぱなんかもうルーティーンで書いてる感もあるなとか、ちょっとそういう局面もあったりとかして、これ、エッセイ絞って小説にしたほうがいいかな、絞ったほうがいいかなと思ったりもしてたんで、じゃ、岩井さんにも小説勧めようかなと思ったんですよ。でも、ずっと読んでいくと、やっぱこれって、エッセイだからこその面白さもあるし、これが創作のにおいも漂わすと、この面白さは削がれるかなと思って、ぶっちゃけ、どっちがいいかはわかんない(笑)。

岩井:わかんないんかい!ハハハハ 結局わかんないんかい!

羽田:そう。だから、エッセイと小説がどっちが偉いかみたいな感じにもなっちゃいそうなんで、それは確かにどっちが偉いもないからなというところで、僕は、一概に小説に絞ったほうがいいとも言えないんですが、ただ、僕個人の要望としては、次、小説書けばいいんじゃないのかなっていう気が。

岩井:どうですかね、僕、2500字でそれ書いてるんですけど、長く書けますかね。

羽田:それこそ短編小説みたいな。最近でこそ長い小説が多いですけど、昔の日本文学の黎明期とかって、川端康成とかも超短編の掌編小説。掌って書いて、掌編小説っていうのもあったぐらいなんで、ちょうどここに収録されてるエッセイぐらいの長さの小説なんて幾らでもあるんですよ。

岩井:あ、そうなんですか、じゃあ。

羽田:なんで、小説っていう形にしたら、また別の層が読んで、エッセイよりもそっちのほうが面白いって言う人も出てくるだろうなっていうところで、別に長編を書くという意識もしないまま、短めの小説をたくさん書くとかでもいいんじゃないのかなとは。

岩井:ちょっと、じゃあ挑戦してみますわ。

幸坂:うわっ、ほんとですか?

岩井:はい。

幸坂:すごい!

岩井:それは、でき上がったときに歩み寄りが必要になる可能性はありますけど(笑)。

幸坂:(笑)

羽田:それはないんじゃないですか。多分この観察眼自体が、例えば、これ全部が全部じゃないですけれども、幾つかのエッセイとかに関しては、これは小説ですと言われたら、ああ、小説だろうなというのも。

幸坂:そうですね。

羽田:こういう小説を書く小説家もいるしなっていうところで、現時点で境目があまりないんですよね。

岩井:ああ。

幸坂:タクシーの話とか小説っぽいなと思って私も読んでました。

岩井:なるほど、へえ。

羽田:そうなんです。既にもう小説なんですよ。だから、今度は、パッケージだけ変えて、小説にしてみたらどうですか。

岩井:わかりました。パッケージを変えてみますわ(笑)。エッセイストから小説家にパッケージをちょっと変えてみます。

羽田:そっちもまたやったら面白いんじゃないですか。

岩井:はい。ありがとうございます。確かにその考え方はなかったですわ。ありがとうございます。

幸坂:初めてですか、小説をすすめられたのは。

岩井:そうですよ。エッセイも書いたことなかったですから。

幸坂:そうですよね。

岩井:長く書けんのかな、みたいな。長く書かなきゃいけないんだなと思ってたんで、すっきりしました。ありがとうございます。

幸坂:ああ、よかった、よかった。

 

今読んでみたい本

今、岩井さん、読んでみたい本とかってございますか。

岩井:あー、ほんとに活字を読まないんで、勧めたら何でも読みますけど。

幸坂:じゃ、羽田さん…。

羽田:僕のエッセイどうですかね? 『羽田圭介、クルマを買う。』っていうエッセイなんですが。

岩井:すごいっすね、なんか。

幸坂:Tシャツにしてプリントしているんです。

岩井:ええ、ええ、ええ。なんかテレ東でやってそうな番組みたい(笑)。

羽田:テレ東でやってそう(笑)。BSっぽいすね。

 

他人がやっているスポーツに興味がない

あ、あと、僕がすごい共感したのが、他人がスポーツやってる姿に全く共感しないというか、他人がスポーツやってても全然応援する気にならないっていう。

岩井:興味ないっていう。

羽田:僕、全く同じで、しかも岩井さんもご自身がやられていたスポーツですら、それのテレビとかを観る、試合を観るのが興味ないっていうのが。

岩井:僕、サッカーもやってたんですけど、全然興味ないです。

羽田:やってたスポーツも観る気しないって、僕もわかるんですよ。

岩井:全然面白くないですよね。

幸坂:えー?

羽田:自分がやってないから関係ねーじゃんて思っちゃうんですよ。

幸坂:世界陸上とかラグビーとか面白いじゃないですか。

羽田:オリンピックとか観ます?

岩井:いや、観ないです。全く観ないです。応募もしなかったっす。

羽田:僕も応募しなかったですよ。ラグビーも全然観ないし。

岩井:うん。

幸坂:あら~これだけ盛り上がってるのに。

岩井:人が頑張ってるのでお酒何で飲めるの?みたいなところもあります。

幸坂:えー?応援しながら飲むの最高じゃないですか。

岩井:それに乗っかってる、なんか恥ずかしくないですか。その時だけ乗っかってるみたいな。

幸坂:えー?

羽田:僕もずっとそうだったんですけど、いまだに他人のスポーツを応援してる人が理解できないんですが、あまりにも応援する人が多いってことは、やっぱこっちもこっちでおかしいのかなとか。

岩井:(笑)いや、僕、僕らのほうがおかしいんじゃないですか?

幸坂:似てますねえ、お二人。

羽田:でも、心底、他人の試合を応援するのがよくわかんないんですけど。

岩井:何か参加型だったらいいですけど、応援することで参加してる気持ちになれないですね。

羽田:そうなんですよね。

幸坂:えー?! 選手に感情移入したりとかして楽しいじゃないですか。

岩井:だって、その選手にとっては俺関係ないじゃないですか。

羽田:そう。

幸坂:ハハハ

羽田:ほんとそう。だから、その選手が頑張っていて、何かをかち取ったり、ああ、すごい頑張っているんだなと思うんですけど、その試合を観る気にはならないですよ。その偉業をなし遂げた選手を尊敬はしても、試合は別に僕が戦ってるわけじゃないしなっていう。

岩井:ハハハ そうそうそう。

幸坂:ああ、そういう気持ちになるんですね?

羽田:このエッセイを読んだ時に、なんか、まるで自分が書いたようだと思って(笑)。

幸坂:(笑)

岩井:確かに共通するところあるのかもしれないですね。

幸坂:ねえ。なんか『ポルシェ太郎』を読んでるような気持ちになってきて、岩井さんのエッセイ読んでると。

 

 

羽田:なんか、突然取ってつけたような書き終わりの言葉が最後に出てくるんです。さっきの野球の試合を観に行ったという話でも、最後に、なんやかんやあって、なぜか会話文で「野球好きへのイメージは変えられないが、野球観戦にはまだ行きそうだな」というふうに言ってて、おじさん2人の怒号を背中で聞きながら、僕はそう思ったって、ここ、普通って地の文で書くと思うんですけど、わざわざ鍵カッコで台詞にしてるところが、僕が尊敬している小説家の中原昌也さんの小説っぽいなと思って。

岩井:ハハハ あ、そうなんですか。

幸坂:おー!

羽田:ここを地の文にしないっていうのが独特だなっていうのは。

岩井:なんか、そうですね。

羽田:書き割りっぽさを多分それで強調している部分もちょっとあるのかなと思ってて。

岩井:今書いてる時点で思ったことじゃなくて、その時思ったことなんで、そういうふうにしている部分はありますね。

羽田:なんか、いや、わかんない。非常に僕、本当、毎曜楽しみながら読みました。

岩井:すいません、ありがとうございます。大変っすね、皆さん。こうやって全部読まなきゃいけない(笑)。

羽田:いやいや、全然。ほんとに読みたくて読んでた。

幸坂:ほんとに楽しかったです。

岩井:あ、ほんとですか。僕は読まないのでそう思っちゃいますね。

羽田:読まないんですか?(笑)

岩井:僕は全然活字読まないんで、すごい読むんだな、みんなって。

羽田:いや、面白かったですよ、ほんと。

幸坂:そろそろ、すいません、お別れの時間になってしまいました。ありがとうございます。

岩井:すいません、ありがとうございます。貴重なお話を、先生から。

幸坂:岩井さんの初のエッセイ集『僕の人生には事件が起きない』をぜひ皆さんご覧になってみてください。新潮社から税込1320円で発売中です。

ゲストアクション、今日はお笑いコンビ、ハライチの岩井勇気さんにお越しいただきました。ありがとうございました。

岩井:すいません、ありがとうございます。

羽田:ありがとうございました。