ブランディング

 

ACTION 2019年9月18日

 

DJ松永:母親の趣味がちゃんと子どもに届いているってすごいですね。

うちの母親、俺にずっとエンヤを聴かせてたんですけども、うちの自宅でエンヤが流れてたんですよ。その結果、大人になってエンヤを聴こうと思わない体になっちゃいましたもん。逆に働いて。親の思惑とは逆に行くパターンですね、俺って。

あと、何?これ歌?環境音?どっち?みたいな感じになってる。エンヤって曲?どういう気持ちの時かけるんだろうエンヤって、みたいな。

あと、うちの両親、うち、クソ貧乏家庭なんですけれども、超貧乏家庭なのにカッコつけなんですよ。カッコつけなので、俺、毎週末、美術館に通わされてたんですよ。うちの両親、美大だったんです、両方。

幸坂理加:えー!素敵ですね。

DJ松永:素敵なのかな? だから、美術館に通わされて、毎週強制的に行かせられたら、美術館も大嫌いになっちゃいましたもんね。

だって、この作品の前で何秒立ち止まったらいいかわからないと思って。この作品の目の前で何を感じ取ったらいいかわかんない。何秒くらいで出たらいい? 何分で出たら正解なんだろう?と思って。だって、最短、歩いて入り口から出口に向かえば終わりじゃないですか。難しいと思って。

幸坂:観たいだけ観たらいいんですよ。

DJ松永:わかんないですよ。小学生の頃の俺としては。わかんない。何も感じないから。でも、うちの母親は、この作品の前でずっと立ち止まる。この作品に何かを感じ取る。その感受性豊かな自分を俺に見せつけてましたね。小学生の時分に。すごいプライド高くてカッコつけなんですよ。だから、エンヤとかも、エンヤとかを別に聴きたいわけじゃなくて、“エンヤとかを流す母親”っていうのを俺の前でずっと演じてて。

だから、『ニュース7』とかしか見せてくれなかったんです、うちの母親。異常に厳格で。うちの母親、寺の娘なんですよ。だから、うちのじいちゃんというのも寺で。だから、すっごい厳しいのをカッコいいと思ってたのか知らないですけども、『ニュース7』しか見せてくれなかったし。

でも、俺が、深夜、寝て、尿意を催してトイレにむくと起き上がって、リビングの目の前を通ると、うちの母親、バリバリ『ゴッドタン』観て笑ってんす。『ゴッドタン』観て笑ってる。で、俺の足音が聞こえると、バッと伏せて寝たフリするんです。ブランディングひどいわぁ。