10年間、ただ一番近くで笑ってる

 

 

真夜中のハーリー&レイス 2019年3月10日

 

清野茂樹:今夜の挑戦者は藤井青銅さんです。

藤井さんは、1955年、山口県のご出身、64歳、身長は176㎝、体重は65㎏。

23歳の時に「星新一ショートショートコンテスト」に入賞したのをきっかけに作家デビュー。1976年から放送作家として数々の番組に携わり、ラジオドラマやコントの脚本を書いてこられました。

2005年にはラジオ日本でフリートークのラジオ番組『フリートーカー・ジャック!』を立ち上げ、オードリー若林正恭さんの才能を発掘。その後、若林さんをメインパーソナリティーに起用した番組『オードリー若林はフリートーカー・キング!』を立ち上げるなど、ラジオ日本とも実は縁のある方です。現在はニッポン放送『オードリーのオールナイトニッポン』を支えるスタッフの一人でもあります。

 

カラーボトル『10年20年』

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オードリーのオールナイトニッポン10周年全国ツアー in日本武道館』について

清野:流れてきたのはカラーボトル『10年20年』でございます。この曲も、聴くと目頭が熱くなりますね。この間(のイベント)よかったなあ。

今夜のゲストをご紹介しましょう。作家の藤井青銅さんです。ようこそ、こんばんは!

藤井青銅:こんばんは。藤井青銅です。

清野:お帰りなさい、という感じですかね(笑)。

藤井:この間来ていただいたんですね、武道館。

清野:そうなんですよ。よかったです。

藤井:よかったですよね。なかなかね。

清野:ラジオのイベントであんなことあるんですね。

藤井:やっぱりね、さっきもちょっとおっしゃっていましたけど、つい、ショーにしようとするじゃないですか。音楽ショーで、とか。それ、やってないじゃないですか。

清野:本当シンプルに。

藤井:トークショーなんです。

清野:確かに落語とかもやったりしますけど、武道館。あのシンプルなテーブルを挟んでの。

藤井:まさにこのスタジオと同じようなものですよね。机があって、マイクが2本あるだけというようなね。

清野:そう。で、フリートークで聞かせるという。

藤井:そうそうそうそう。

清野:いいなあと思いました。

藤井:清野さんなんか喋る方だから、やっぱりああいうのやりたいでしょう?

清野:憧れます。

藤井:喋り一本でね。

清野:本当思いますよね。エリック・クラプトンのアンプラグドじゃないですけど。

藤井:あ、そうそう、そういう感じですね。

清野:シンプルになるのはやっぱり憧れますよね。

藤井:そうなんですよね。お金もかかんないしね(笑)。

清野:実際、みんなあれが一番いいんですよ。つい過剰な演出に走っちゃう。

藤井:雨降らせてみたりとか、いろんなことやっちゃうんですよ。お金かけてね。

清野:足し算しちゃうんですよ。本当は引き算がいいんですよね。

で、あと、僕、ほら、ずっとラジオって何年もやってますけど、一人喋りしかやったことないんです。だから、二人喋りに憧れますね。

藤井:ああ、確かにね。別の魅力ですよね。

清野:2人はいつもコンビ組んでるから、そもそも呼吸が合っているというのはありますけど、春日さんが喋る、それに対して若林さんが、うんうん、で、で、で、みたいな感じで相槌を打つと、聞いてるほうも一緒に相槌打ってるような気持ちになるんですよね。

藤井:そうですよね。あれは……あ、他局の話ばっかりしてて大丈夫?

清野:イベントですから(笑)。

藤井:あれは要するに、若林さんのトークワンゾーン、春日さんのトークワンゾーンということに基本はなってる。だから、その時、相手は聞き役よということですよね。で、僕は当然のようにそうやってねと言って、それで番組を始めたんですけど、よく考えたら、あんまりそういうことをやってる番組ないんですよね。コンビでも。やっぱり得意な方と不得意な方とかいらっしゃるじゃないですか。やっぱり得意な方がどうしてもメインで喋る。相方は聞き役に回るというのが多いんですけど、それぞれやってくださいというお願いをしてやってるから、ああいう形にだんだん進化していったんですね。

清野:僕、意外だったのは、そんなに僕もリトルトゥースじゃないんで、ヘビーリスナーじゃないんであれなんですけど、びっくりしたのが、僕はあの日のトークに関して言うと、春日さんのトークの上手さにびっくりしましたね。

藤井:ああ、皆さんそうおっしゃいますよ。まあ、これは言ってもいいでしょうけど、最初は下手くそでしたよ。10年やれば(笑)。

清野:(笑)磨かれたんですか。

藤井:磨かれていくんですね。

清野:伏線の張り方とか。

藤井:ここ2~3年、めきめき上手になってきましたねぇ。

清野:あれはやっぱり事前にシミュレーションされているんですかね?

藤井:わからないですけどねぇ。

清野:好みの味付けというのもそもそもありますが。

藤井:そうですね。

 

『オードリーのオールナイトニッポン』の原点『フリートーカー・ジャック!』

清野:10年続いた『オードリーのオールナイトニッポン』の原点は、実はこのラジオ日本だという。

藤井:そうなんです。ここなんです。

清野:この局の話をしますと。

藤井:『フリートーカー・ジャック!』という番組。フリートークをやる番組を始めようよと。清野さんもそうだけど、ご自身が番組を持つためには、ある程度売れてる人じゃなきゃできないじゃないですか。

清野:はい。

藤井:それは局としてもそうですよね。売れてるからトーク番組が始まる。そうすると、トークがどんどん上手くなる。というと、まず売れなきゃいけないわけですよ(笑)。

清野:第1段階ね。

藤井:第1段階ね、売れないと番組は持てないんですよ。だから、売れてない人で喋りをどんどん上手になっていくことをやりたいなというのが『フリートーカー・ジャック!』という。

清野:それで、お笑いの方を探して。

藤井:お笑いだけには限らず、誰でもいいんですよと。ミュージシャンでも何でも上手い人いるじゃないですか。例えば、さだまさしさん。ものすごくお上手ですよね。だから、誰でもいいんですよと。ただし、1人で30分いきなり喋れといっても、なかなかそれはできないでしょうから、5~6分トーク喋ってくれればいい。それを例えば4人ぐらい集めて30分番組だったらできるんでというので、くすぶっている(笑)方たちいらっしゃ~い、みたいな声をかけた中に、当時くすぶっていたオードリーもいたという。

清野:その中にはナイツもいたとか。

藤井:ナイツもいましたね。

清野:Hi-Hiがいたりとか。

藤井:Hi-Hiいましたね。あと、ハマカーンとか、いとうあさこもいましたね。

清野:そうそうたる顔ぶれじゃないですか。

藤井:みんなくすぶってた(笑)。

清野:そんな時代があったんですね。

藤井:あったんです。

清野:その中で若林さんのフリートークをとにかく青銅さんが気に入っていたそうですね。

藤井:僕、凄いよかった。いいなと思って、そういう番組、毎週やるんですけど、毎週4枠あるわけですよね。5~6分喋れるのが4人分使えるわけですから、面白かったら毎週でも来ていいよという。自分の中でトークなかったら休んでもいいよと。要するに、レギュラーがいない番組なんですよ。

で、こっちとしては、彼は面白かったから「来週も来てよ」みたいなことを言うじゃないですか。ちょっと今回残念だった人は、もうちょっと練ってから来てね、みたいになるけど、若林さんはやっぱり面白かったから、また来てね、また来てね、みたいな形で何度も何度も来てましたね。

清野:このまさにラジオ日本。

藤井:このスタジオではないですけども、会議室に来て。

清野:上の? 3階の。

藤井:そうそうそうそう。あの奥の。あそこに10人ぐらい芸人さんが来て、今日何の話する? こんな感じですよ。会議室で。今日何の話すんの?つって、こんな話をやるんですけど。ざっと聞くんです。僕が先に。というのは、皆さん喋ったことのない方だから。お笑いのプロではあるんですけども、ラジオのトークってやったことないんですよ、みんな。

清野:劇場とかとはまた別ですからね。

藤井:別ですからね。劇場でウケてるから自分は喋れると皆さんお思いなんですけど、まあ、喋れないんですよ、これ。言って悪いけども。ラジオの喋りって違うじゃないですか。

清野:違いますね。

藤井:清野さんはよくご存じだと思いますけど、劇場はお金を払った人が来てて、あと、見える仕草、顔とかもある。つまんなくても帰らないんですよ、絶対に(笑)。だけど、ラジオとかテレビは、つまんなかったら消されちゃいますから、全然違うの、やっぱり。それは誰かが教えてあげないといけないことだから、番組を持てば、スタッフが教えてくれるんですけど、番組が持てないレベルの人たちだから、申しわけないけど、僕がちょっとそういうアドバイスをする。なので、毎回、「どんな話?」って聞いて、それはこんなふうに話したほうがいいねとか、そこはこういうふうに言ったほうが伝わるんじゃないの?みたいなことを言って、ちょっと練って、スタジオに入って喋ってもらう。ということを1人ずつ1人に15分とか20分ぐらいかけて、僕、こうやって話すのを、多い時は10人ぐらいやるんです。ヘトヘトですよ(笑)。

清野:球受けるほうは大変ですよね。

藤井:そうそうそうそう。ずっと受けてるんですよ。ちょっとこうやったほうがいいんじゃない? ああやったほうがいいんじゃない?というのを毎週やってたんです。

清野:みんな片足上げて剛速球を投げてくるんですか。

藤井:違う、違う、その球じゃなくて、こっち投げてよ、みたいなこともあるし、何にもない人もいて、用意した球もウーンてなって、じゃ、逆にこういうことない?とか、初めて芸人になった時はどうだったの?みたいなことを聞くと、ポロポロポロと出てきて、あ、それ面白いよっていうんで、自分でその話が面白いかどうかわからないんですよ。意外にね。そういうことってあるじゃないですか。それ面白いんだよって。

今では有名になったけど、春日さんのお家でトークライブを6畳間でやったという。それ、最初に僕、若林さんから聞いて、それ面白いよと。面白いですか? 面白いんだよ、それは。その話してよ、みたいな。そういうことでしたね。

清野:若林さんのトークは、当時、何が光ってました?

藤井:あのね、なんだろうね、やっぱり面白どころを見つけるというのもあるし、ちゃんと説明をすると、あと、彼はギャグをやる人じゃないじゃないですか。コンビって大体、どっちかがギャグをやったりなんかする人で、もう一方は説明役だったりするんですけれども、当時、トゥースの人はトゥースをやっていればいい役割ですよね。若林さんはそうじゃないわけだから、やっぱり説明が長けているということですね。それと、くすぶっていたから、視点、物の見方が僕好みだったんですね(笑)。

清野:ちょっと弱者の立場というか。

藤井:そうそうそうそう。

清野:若林さんはそういうところがありますよね。

藤井:だから、基本的に、なんか腹立つなとか、嫌だなとか思うのを一生懸命語るって面白いじゃないですか。そういうのって。

清野:そうですね(笑)。

藤井:成功者の話って面白くないんですよ。

清野:そうなんですよ! そうなんですよ! 自慢話は聞きたくないんですよ!

藤井:聞きたくないんですよ。それが、こんなふうで、あれは腹立つと。なんかパーティばっかりやってる奴腹立つって、その思いは、ラジオの電波に乗って届くんですよ。そういうところがある人のほうが僕が好きだから、それは別に前面に出しているわけじゃないんだけども、凄くいいし、人が一生懸命悔しがるとか、一生懸命悲しい思いをするとかいうのは、絶対伝わるから、それ喋ってよという感じでしたね。

清野:そうですよね。持たざる者の若林さんが、いまや、でも、あの武道館を見ると、持ってる人になっちゃった。

藤井:そうですよね。

清野:そんな感じもしますけどね。

 

ラジオで喋るということ

清野:でも、青銅さんは長いことラジオをお仕事をされてて、(略)いいラジオのフリートークの要素って何ですかね?

藤井:清野さんなんかは上手に喋ってるから、逆に僕はわからないと思うんですよ。喋れる方は。僕は喋れないから、あくまでスタッフなんで、こうやったらいいよとか、こうしようよとは言うけど、じゃあ、あんたやってみろと言われるとできないわけですよ(笑)。

清野:でも、ラジオ日本でされてたじゃないですか、落語の番組。

藤井:してましたけども、それは素人がやってるだけのことで、喋り手は喋る人、上手い人だと思っているんですけれども、でも、お笑いに関して言うと、さっきも言ったように、自分は芸で笑わせられるからトークもできるって思ってしまうところが問題だなと思う。それは誰かが教えてあげなきゃいけないし、あと、アイドルの子が多かったんです。僕がデビューした頃は80年代だから、80年代アイドルの全盛期だったんです。

清野:それこそ松田聖子さんの番組も担当されていたんですよね。

藤井:聖子さんもやってたし、当時のアイドルさんの番組をいっぱいやってたんで、僕だけじゃなくて、いっぱいラジオはあったんですよね。

17~18の女の子がいきなり人前で喋れるわけじゃないじゃないですか。だって、マイクの向こうに大人がいっぱい聴いてるわけですよ。怖くて喋れないですよね。自分のことを思えばよくわかりますよ。自分が高校生の時に大人相手に喋れるかといったら、まあ、無理ですよ。

清野:無理ですね。

藤井:そうすると、無難なことを喋るわけですよ。怒られないようなことを。今もSNSで言うと、無難なことを言っておけば誰も怒らないだろうと。でも、つまんないじゃないですか、そういうのって。ラジオとしては。だからといって暴言を吐けばいいってことでもないんですけども、このぐらいのことは言ったほうがいいし、言ったことに対して全員が賛成はしてくれないんだよ、ということじゃないですか。

清野:はいはい。

藤井:ですよね。全員賛成してもらえば問題はないんだけど、いや、違うよという人も当然いるし、でも、それが致命的でなければ、好きだという人もいれば、あんまり好きじゃないという人もいるっていう前提で喋ったほうが、その人の個性が出るから、全然怖がることないんですよという話をいつもしてるんですよ。

清野:僕も参考にしたくて。というのは、若林さんの『フリートーカー・ジャック!』が評価されて、やがて若林さんの看板番組『フリートーカー・キング!』に昇格したんですよね。若林さんだけの番組になるわけですよね。

藤井:5分でしたけどね(笑)。

清野:凄いじゃないですか。しかも、5分て結構また難しいですよ。

藤井:難しいですよね。

(略)

清野:その番組をお持ちだった若林さんは、なんか変化みたいなのはありました?

藤井:どうなんだろう。その頃はだいぶ上手になっていたから、若林さんは全然普通にやってたと思いますけどね。

 

清野:そこからさらにM-1のブレークがあって。

藤井:それから1年半後ぐらいですかね。このラジオ日本の番組が終わってからね。僕は全く何の接触もなくて、M-1、テレビで家で観てたら、敗者復活で出てきたのでびっくりして、おー!とか思って(笑)。頑張ってる。あれよあれよですよ。

清野:で、「一緒に番組やらないか」と誘うわけですよね。

藤井:そうそう、そうそう。ここのフリートーカーの番組が残ってれば、そこに誘って凱旋帰国ですよね。でも、番組終わってたから、まあ、ここに話を持ってこなくても、僕は義理を欠いたことにはならないなと思って、なじみのあるオールナイトニッポンに「どう?」という話でしたね。

清野:それでまた、2時間、今度は生となると、またちょっと違う喋りじゃないですか。

藤井:違いますね。「フリートークやってよ」ってその時言ったんです。最初は特番だったんですけども、「フリートーク2時間やってよ」。コーナーでメールテーマを言って呼び込んでって、まあ普通やりますよね。そういうのやめようよつって(笑)。なぜかというと、ここの『フリートーカー・ジャック!』で若林さんに面白い話があるって知ってるから。世間は誰も知らないわけですよ。

清野:なるほど! じゃあ、ラジオ日本ではもう流れた話をもう一度改めて。

藤井:そうそう。もう一回しても大丈夫だし、みんな世間はトゥースの一発芸のコンビだと思ってるから、冗談じゃないと。こんな面白い話ができる2人なんだよって知らしめたいんで、僕の中で計算が、あの話とこの話とこの話とこの話。それから、僕の知らないM-1の裏話。それから、多分M-1でブレークした後の世間が変わるだろうから、その話。すると、大体2時間できちゃうんですよ。だから、それでやってって言ったら、「藤井さんらしいな」と言ってくれて、僕はすごい嬉しかった。

清野:へえ。だから、いわゆるよくありがちな、今日のテーマはナントカというのはやらずに。

藤井:やりたくないんですよ、そういうのって。

清野:これ、ラジオからなくならないですね。今日のメールテーマは何々。

藤井:それで最初はレギュラーの番組になってもあんまりやらなかったんです、それを。それで、じゃあ、リスナーとのふれあいがない、みたいなことを言う方もいらっしゃったんだけど、今は全然違いますけどね(笑)。ふれあいってそういうことでもないのよっていうことですよ。

清野:でも、忙しくなると、売れっ子になると、だんだんインプットの時間がなくなるじゃないですか。

藤井:そう! 大変だと思います。だから、毎週1ネタずつそれぞれ、若林さんワントーク、春日さんワントーク、それから2人で話すというこの3つをお願いして、正直、だんだん辛くなったら、さっき言ったみたいに、コーナー、テーマ振ってというふうにやればいいから。そうすると普通の番組になるだけですけども。だから、辛くなったらそうすればいいから、やれるところまでやりましょうよって10年やってますからね(笑)。

(略)

清野:今も『オールナイトニッポン』のほうは生放送はずっと立ち会っているんですか?

藤井:立ち会ってます、一応。

清野:へえ。3時までは結構大変ですよね。

藤井:でも、ブースの中にいませんからね。ディレクターと同じサブ側にいるので。ただ一番近くで笑ってるっていうだけの話です。

清野:でも、それを毎週10年されているわけですよね。

藤井:やってますね。

清野:10年継続するというのは本当に大変です。頭が下がります。

いろいろと今日は勉強になるお話でございました。今夜のゲストは作家の藤井青銅さんでした。ありがとうございました!

 

 

 

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