プロレスとお笑い

 

伊集院光とらじおと 2018年12月24日 ゲスト 棚橋弘至

 

 

新井麻希:本日のゲストは、プロレスラーの棚橋弘至さん。1976年生まれ。岐阜県出身。現在42歳。立命館大学の法学部を卒業後、1999年に新日本プロレスに入門。2006年にIWGPのヘビー級王座を獲得。その後も日本人離れした肉体を生かしてIWGPヘビー級王座に何度も輝くなど、人気、実力ともに日本のプロレス界を牽引する存在となっています。プロレスファンを魅了し続ける“100年に1人の逸材”棚橋弘至さんが本日のゲストです。

伊集院光:ということで、スタジオには棚橋弘至さんです。よろしくお願いします。

棚橋弘至:お願いします。皆さんおはようございます。新日本プロレス“100年に1人の逸材”棚橋弘至です。よろしくお願いします。

伊集院:それは自分で言っていくものなんですね。

棚橋:そうなんです。先ほど皆さんが「“100年に1人の逸材”と言われている」と言われていましたけども、これね、自分で言い出したんです。自分発信なんです。“100年に1人の逸材”お、凄いのかなって人々の心にフックするかなと思って。

伊集院:まんまとフックしました(笑)。

棚橋:でもね、プロレスラーとして自分のキャッチコピーを自分で考えるという僕はパイオニアですから。

伊集院:普通は、誰か呼び始めるとか、そういうことですよね?

棚橋:そうですね。リングの実況の方が言うとか、会社が考えるとかあるんですけど、自分で考えました。

伊集院:でも、その逸材感があるのは、さっきも言ってたんですけど、そのボディですよ。胸板の厚さ、上腕の太さ。なんですかね、この体は。

棚橋:ありがとうございます。言葉で僕の筋肉を伝えてみてください。

伊集院:この筋肉をラジオ聴いてる人に伝えるとするならば何よ?

新井:絵に描いたような凄さだなと思いました。漫画でしか見たことのない体を今実物で見ているという感じがします。

伊集院:そう! アメリカンコミックに出てくる。

棚橋:マーベル感がね。

伊集院:はい。ヒーローの体です。

棚橋:ありがとうございます。

新井:ほんと、そんな感じ(笑)。

伊集院:これは、それを維持するための、そして作り上げるための努力っていうのは。

棚橋:僕、年間300ワークアウトと言って、年間300回筋トレをするのをずっと目標にやってまして、月25回練習すれば、年間300回を達成できるんですけども、今年、ちょっと気合が入りまくってて、11月を終わった段階で筋トレが341回。

伊集院:ごめんなさい。休みがないどころの話じゃないじゃないですか。そうなってくると。

棚橋:朝晩2回練習すると、2カウントにするので。

 

(略)

 

伊集院:プロレスラーにとって、ボディというのかな、説得力のあるボディって大切ですよね。

棚橋:大切ですね。リング上の体を見て、選手への期待感というのは変わってくるので、しっかり体をつくることも大事ですし、僕、入門してすぐに山本小鉄さん、“鬼軍曹”と言われたコーチの方に、「いいか棚橋、プロレスラーはチケット代の半分は見てもらう体だと思え」というふうに言われたので、しっかり体をつくるのをずっと心がけてやってますね。

伊集院:僕は、僕の周りの尊敬する人たちはみんなプロレスファンなんですよ。

棚橋:ありがとうございます。

伊集院:にもかかわらず、僕の師匠の円楽が大のプロレスファンだったおかげで、会場に行くと会うかもというのが怖くて、プロレス音痴。僕は。

棚橋:なるほど。師匠に会いたくないために(笑)会場には足が遠のいてしまって。へえ。

伊集院:いつも思うのは、プロレスって離れてると、例えば、マニアの友達に言わせると、こういう因縁があって、いきさつがあってって、あれも面白いじゃないですか。

棚橋:そうですね。

伊集院:でも、僕らにとっては、まず説得力。この人たち何食ってんだ?っていう人同士がバンバンぶつかり合ってるって、それが俺の中ではまず凄い。

棚橋:それでいいと思うんですね。プロレスを長く観てる方は、誰と誰が抗争してて、ベルトを賭けてとか、ライバル関係でっていうのがわかってきたら、より面白いんですけれども、プロレスのいいところは、初見で面白いんですよ。どんなストーリーがあるとかじゃなくて、大きい選手、大人が戦っているという、その状態が既に面白いというかね。

 

伊集院:でもね、それで俺は本当に格闘技のゲストを迎えるのに向かないなと思うのは、それがどんどんみんな要求がエスカレートしていくじゃないですか。

棚橋:はいはいはい。

伊集院:しかも、興奮にまた自分もインフレで、お客さんが盛り上がる、自分が盛り上がる、お客さんが盛り上がるを繰り返していくから、プロレスって、俺、ちょっと昔に見たプロレスに比べて、最近テレビで見たりすると、特に新日、凄いことになってませんか?

棚橋:そうですね。力道山先生から始まったプロレスなんですけども、攻防というか、技の危険度だったりとかは上がってますね。なので、怪我もふえてるので、そこは僕は今、一つポイントにしてて。

伊集院:はい。

棚橋:危険な技を使わなくても、試合の組み立てで説得力のある勝ち方はできるんじゃないかというところを今投げかけてやってますね。

伊集院:ほう。ちょっと、それが面白そう。凄く聞きたいです。

棚橋:今のチャンピオンのケニー・オメガって、今度、東京ドームで僕と戦う選手なんですけれども、若いし、身体能力も高いし、どうしてもお客さんに楽しんでもらいたいという彼の気持ちがあって、どんどん技がエスカレートしてって、攻防が。そうすると、どこまでも行ってしまうものなんですよ、やっぱり。でも、どこかで止めないといけない。違う角度からプロレスを楽しんでもらわないといけないというところを、これから僕が価値観として提示したいので、この1月4日の東京ドームは、ケニー・オメガ対棚橋っていう対戦で、プロレスの価値観、イデオロギー対決を持ち込んでるんですよ。

伊集院:え、どういうこと? どういうこと? どういうこと? それ、なんか……。

棚橋:難しそうでしょ? 難しそうですけど面白そうでしょ?

 

伊集院:僕ね、ある時期、バラエティ番組がどんどんグロテスクになったことがあるんです。それはエスカレートしたんです。

棚橋:笑いが。

伊集院:笑いが。笑いが、より痛みやプレッシャーみたいなものをエスカレートさせていったことで、確かに笑えるんだけど、何だかおかしな方向に行った時期があったと思うんです。もちろん、そういう笑いも面白いんだけど、それ重ねてって、先に何があるのかよくわからなかった頃があって、そういうことなのかな。

棚橋:うーん、そうですね、プロレスが長く文化として今、日本に続いているので、それをどんどんいい形で後輩にも引き継いでいきたいんですよ。プロレスっていうものを長く楽しんでいただきたいので、誰かがストップをかけないといけないなと思って、そこで“100年に1人の逸材”僕が立ち上がったわけですよ。ね(笑)。

新井:うん(笑)。

伊集院:そうすると、それこそ1月4日を観ると、そのメッセージはそこに込められてる。

棚橋:そうですね。

伊集院:少なくとも棚橋選手の立ち回りは、やり方は、そのメッセージを込めていこうということだ。

棚橋:そうですね。

伊集院:俺らは初心者だから、単純に「すげぇーなコイツら」って思って観るっていうことで。

棚橋:そうですね。だから、ケニー・オメガのプロレスは、初見の人にとってみたら、むちゃくちゃ面白いと思いますよ。

伊集院:へえ~。

新井:どういうところがですか?

棚橋:やっぱり場外に飛んだりとか、すごいスピーディな攻防であったりとか。

伊集院:場外の跳び方も昔のレベルじゃないじゃないですか。

棚橋:そうですね。トップロープに登って、場外で倒れてる敵にボーンと跳んでったりとか、その高さ3メートルとか4メートルとか。100キロの人間が降ってくるんで、下の人間はたまったもんじゃないですけどね。

伊集院:うぅわぁ。

じゃ、棚橋さんの思う、プロレスはここが面白い、もしくは肝、どこですか。プロレスの肝。

棚橋:そうですね、単純に技とかの攻防というか勝ち負けではなくて、人間対人間の人間力というか、その試合までにたどり着くまでの過程だったりとか、そういうところの戦いかなと思いますね。

伊集院:うわ、なんかすげぇ抽象的なんだよ。何だろう、それって。どこに現れていくんだろう。

棚橋:単純に技が凄いとか、体が凄いとかいう競い合いではないんですね。

伊集院:はい。だんだん数字になっちゃうじゃないですか。さっき言った、高さがあいつは2メートルだったけど、2メートル50だ、じゃあ、3メートルだ、4メートルだってなっていくじゃないですか。俺ね、それが例えば、お笑いがヤバくなった時はそれだったんですよ。面白いかどうかという話じゃなくて、より過酷かとか、そういう話になってったから、数字で競い合うとおかしなことになると思うんですけど、そこじゃない。

棚橋:そうですね。たぶん盛り上がるシチュエーションをどう整えるかっていうね。だから、出したい、一番出して、出したらいいタイミングの時に技が出せるかとか。

伊集院:はあー。

棚橋:お客さんとの呼吸というか。

伊集院:うん、うん、ちょっとわかってきた。

棚橋:僕、昔、アメリカのレスラーに「プレイ・バイ・イヤー(Play by Ear)だ」って言われたことがあって、「耳で試合しろ」って。プレイ・バイ・イヤー。

伊集院:プレイ・バイ・イヤー。

棚橋:お客さんの声援を聞いて、その瞬間、瞬間を判断しろ。だから、ワーッと応援がきたら反撃に移れとか、そういうことだと思うんですね。ただ凄い技をやるだけじゃなくて、お客さんとの呼吸を合わせていくというか、瞬間、瞬間の判断で試合を構成していくっていうことがやっていきたいなと思うんですね。

伊集院:ちょっとわかってきました。なんとなく、今、何を求められているのかっていうのと、自分の中で、もちろん相手のあることだから、それは思いどおりいくかどうかはわからないけど、を感じながら、ただ闇雲に出していくと、結局インフレになっていくしっていう、ある意味グズグズになっていくし、行き着くところは、それこそ選手生命だったりするわけですね。

棚橋:そうですね。どんどんどんどん激しい技に慣れていってしまうので、じゃ、もっと次は凄いことをしないとお客さんも喜んでもらえないという状況にはしたくないんですよね。

伊集院:うーん。

新井:お客さんの声援て、会場内で変わったりするんですか。風向きじゃないですけど。

棚橋:変わったりしますね。基本的に、昔から“力道山先生対誰か”“いいもの対悪者”というのが昔からあるんですけど、今はそういうのが、形式は崩れてきているので、とにかく自分の推している選手、好きな選手を応援していただければいいんですけれども、僕なんかはブーイングをもらっていた時期があるんですけども、ある試合を境に声援に変わったりとか、というのは、お客さんの声援というのは本当に水物なので、どこでどう変わるかわかんないですね。

伊集院:でも、なんかそれは、格闘オンチの自分が、自分の尺度にしたり、あと、これを聴いている方も、格闘がわからない人もたぶん自分の尺度でいろいろあると思うんですけど、僕はもともと落語家なんですけど、お客さんの反応がうまく掴めない時って、スベると、ただ単にさっきより大きい声になってくるんです。スベってるのが怖いだけだから。お客さんの強弱がわかってないから。あんまわいてねぇーなつって、でかい声がよりでかくなるんですよ。最終的に怒鳴ってるのと同じになってくんですよ。結局、喉を潰していくんです。たぶんそういうことなのかなと思った。

棚橋:大きい声を出すことが、大きい技を出していく。

伊集院:技を出していくとか、高さが上がっていくとか、危険度が……。

棚橋:喉を潰していくということが。

伊集院:大怪我をするということだと思う。

棚橋:うわあ、凄い。シンクロした。

伊集院:ということなんだと思う。

棚橋:はい、はい。

伊集院:おそらく、何でもそうなんだと思うの。子育てしてる時に、子どもが泣いてたら、「泣き止んで!」って大きい声出していても意味ない。

棚橋:はい。

伊集院:だけど、今、何を欲しがっている、みたいな。

棚橋:お腹すいてるのか。

伊集院:そういうこと、そういうこと。

棚橋:おしめが濡れてるのかっていう状況の判断をね。

伊集院:まして、それが相手のあることというのは凄いな。

棚橋:そうですね。

伊集院:しかも体を使って。

棚橋:はい。で、向こうの選手はそれがよかれと思ってやってますので、それが最先端のプロレスだと。ケニーに言わせれば「棚橋はもう古くさい」と。僕「老害だ」と言われましたからね。

伊集院:はっ! そうなんだ! 逸材が。

棚橋:はい。100年に1人の老害になってます。(笑)

新井:ケニーさんは何歳なんですか?

棚橋:ケニーさんはまだ30代前半ぐらいですね。

伊集院:まさにその辺はイデオロギー対決だ。

棚橋:そうなんですよ。だから、自分が正しいと思うプロレスのぶつけ合いなんですよね。わりとプロレスファンにとっても、今、難しいことを言ってます。すいません、本当に。

伊集院:いや、でも、これは凄い思うな。これもね、ラジオでしゃべるとか毒舌を言うということが、ただただ言っちゃいけないことに近づいていく、みたいなことだと、もたないんですよ。そんな笑いは。もたないから、そうすると、こっち側は、いや、それは違うんじゃねぇーかっていう、もっとテクニカルなことを入れていって、どこで言う。もっと言うと、本当に危険なことを危険じゃないように言うこととか、逆に言うと、危険じゃないことを危険なように言うとかを組み合わせていくことじゃないと、毎週番組なんかできないんです。深夜放送なんて。でも、若い生きのいいのは、ただただ、より危ないことを言っていくんですよ。「それでもちます?この文化」って思うんですよ、いつも。たぶん完全シンクロしてますよね、これね。

棚橋:いや、シンクロしてますね。

伊集院:なんかわかりませんけど、まさかのプロレス音痴が、深夜放送と今ちょっと、俺の中で、ラジオの深夜放送が、ちょっと今、そういう意味ではヤバいほうに向かってるんです。やっぱり、You Tubeができたりとか、わりと、コンプライアンスなしの言論がいっぱい攻めてきてるから、そこに合わせると、たぶん未来がないってちょっと思ってたりとかして。

棚橋:そうなんですよね。プロレスはプロレスのいい部分があって、そこを楽しんでほしいし、自分が好きになったプロレスっていうのはそういうものなので、自分が見て好きになったものを、これからも伝えていきたいという気持ちがあるんですね。

伊集院:でも、これを聴いて、おそらくプロレス通の人が見ると、感じること、たぶんあるだろうし、今、凄いうなずいている人と、あとは、わかんないから、とりあえず観てみるっていう人、この2通りいてくれればいいですね。

棚橋:そうですね。プロレスっていうものは、なかなか目に触れることが今ないので、こういうところからでも興味を持ってもらえると嬉しいですね。

 

(CM)

 

伊集院:ずうっとCM中も話してた。まさかの。僕は格闘技のゲストの方が来ると、いつもドキドキするんです。ファンがいっぱいいるから、そういう人たちに失礼がないようにとか思って。めちゃめちゃ僕の中ではシンクロしちゃってて。

棚橋:シンクロしましたねぇ。新旧の価値観のぶつかり合いがどのジャンルにもあるんだなということがね。

伊集院:ねえ。でも、一言一言おっしゃることが、この後お知らせするのは、東京ドームでの興行なんですけど、でかいドームだと、その見せ方も違うし、呼吸も違う、みたいな。

棚橋:そうなんですよ。2階席、3階席の上のほうまでになると、リング越しにモニターを見たりとかということが多くなるんですけども、やっぱり一つ一つの動きを大きくしたいなっていう、届けたいな、上のほうまでと思いますし、あと、大きい会場は何が難しいかというと、声援が少し遅れてくるんですよ。

伊集院:ディレイがかかるんだ。

棚橋:ディレイするんですよ。だから、パンパンパーン動いて、よーし、盛り上がるだろうと思って、こない。こないと、試合のリズムを作りにくいというか。

新井:焦っちゃうんですか。

棚橋:焦っちゃうんですね。

伊集院:お笑いも一緒ですよ。やっぱり歓声って、笑いって、前のほうから後ろにゆっくりきて、それが戻ってくるじゃないですか。それを全部吸収してから、俺たちで言う次のギャグに行く。次の技に行くっていうことだし、その間、わかんないけど、好きではない、その間の埋め方があるわけじゃないですか。

棚橋:はい、はい。

伊集院:面白いわあ。

棚橋:僕なんか声援を目いっぱいもらいたいんで、棚橋コールが来るじゃないですか。立ち上がって頑張ってる時に。棚橋コールが終わるまで、次に動かないですからね(笑)。

伊集院:それが自分の中に満ちる。お客さんも精いっぱい言って。

棚橋:限界まで棚橋コールをいただきまして(笑)。

伊集院:この大胸筋に全部吸い込んだ後での。

棚橋:エネルギーを身体じゅうにため込んでから次に動きますからね。

伊集院:お客さんに見せるもの、全てそうだと思うんですよ。全部そうで、そうじゃないと、生で観る面白さってないじゃないですか。

棚橋:はい。

伊集院:生で感じることの面白さって。なんかたぶんみんな、そういうわけのわかんない空気みたいなもので動いてるんでしょうね。

棚橋:はい。リングとお客さんで呼吸してるんですよね。エネルギーの交換というか。それはライブ観戦の楽しみというか。

伊集院:それを聞いてドーム観るの凄い面白いだろうな。

ちょっとお知らせしておきますね。

来年です。明けてすぐです。1月の4日金曜日、新日本プロレス年間最大のビッグマッチです。『バンドリ! ガールズバンドパーティ! presents WRESTLE KINGDOM13 in 東京ドーム』夕方5時から開催されます。

棚橋さんはメインイベント。IWGPのヘビー級王座に挑戦します。名前は何度も出てますが、相手がケニー・オメガ選手。

凄い?

棚橋:はい。やっぱ35歳ということで、コンディションもいいですし、やっぱり身体能力が高いですね。前チャンピオンのオカダ・カズチカというのももの凄い高いドロップキックを打ちますし、内藤哲也というのも運動神経いいですし、身体能力に特化したプロレスが今最先端なんですけれども、奥ゆかしい、わびさび(笑)、ベテランならではの味みたいなところもプロレスのよさなので、いろんな切り口があって、全部楽しいよっていうところを提示していきたいなと思ってます。

伊集院:いいのが、それを棚橋さんと同じイデオロギーの人同士で戦うというのはわかりやすいんですよ。じゃない人と戦うわけじゃないですか。

棚橋:もう全然違いますから。どっちの試合になるかっていう。『スプラトゥーン』というゲームがあるんですけど、色を塗りまくるやつ。

伊集院:はい、はい。イカのね(笑)。

棚橋:試合をどっちの色に塗りつぶせるかという戦いなんです。

伊集院:はあ、それはちょっと……。それを聞くと面白い。そうですよね。全然イデオロギーの違う、スタイルの違う主張のある人と王座を賭けてやるわけだから。それもそれだけのお客さんの中で。もっと言うと、こっちは、今言ってたことを聞くと、埋める声援の呼吸を吸収してやろう。騒ぎたいだけお客さん全員騒いでくれ、俺に声援くれを待つ間に、奴に攻撃をさせないっていう、なんつうんだろう、力が要るわけじゃないですか。

棚橋:そうですね。試合の展開をね。で、僕に来る声援ももちろんそうなんですけど、相手に来る声援も、試合自体は盛り上がっているわけですよ。

伊集院:なるほど、なるほど。

棚橋:だから、その声援というのは、2人で引き出したものなんですね。

伊集院:なるほど、はい、はい、はい。

棚橋:だから、試合のその後の展開というのにも、試合の盛り上がり、ファンの応援というのは大きく変わってくるんですよね。

伊集院:へえ~。なんかそれを感じに、ちょっと行きたいなあ。

棚橋:一度観ていただければ、好きになってもらえる要素はいっぱいあるので。今、いろんな選手がいるんですよ。なので、観戦に行ったら、推しが見つかるんですよ。

伊集院:自分の。自分、何か共鳴するやつが出るわけですか。

棚橋:そうです。若い選手が好きなのか、ジュニアの華麗な選手がいるのか、格好いい選手がいるのか。1人応援したい選手が見つかると、応援にも熱が入りますので、観に行く喜びや楽しみがふえますので。

伊集院:今回の『WRESTLE KINGDOM 13』の中で、棚橋さんの推しは誰? こいついいよ。俺がすごく見込んでる。こいつが好きだ。

棚橋:好きではないんですけども、今、オカダ・カズチカっていううちの前チャンピオンがいるんですけども、その対戦相手のジェイ・ホワイトというのが、若いんですけど、むちゃくちゃ悪いんですよ。

伊集院:悪いんだ(笑)。

棚橋:ファンからすっごいブーイングを引き出してて、見た目はすごい俳優さんみたいな男前で。その試合も注目ですし、あと第1試合ですね。オープニングマッチで飯伏幸太という選手と。

伊集院:あ、見たことあります。僕、高木社長とご縁があって見た。

棚橋:もともとDDT出身の選手と、ウィル・オスプレイという選手がむっちゃくちゃ運動神経いいんですよ。空中で2~3回転するわけですよ。その運動神経のいい、言ったらば、今、最先端のアスリートのプロレスが第1試合なので、たぶん僕の予想では、第1試合から東京ドームが爆発しそうな気がします。

 

伊集院:ということで、本日のゲスト、プロレスラーの棚橋さん、どうもありがとうございました。

棚橋:ありがとうございました。