喜びの入り口って無駄なところにいっぱいある

 

伊集院光とらじおと 2918年2月26日

 

伊集院光「所さんて、もはや歌わなくてもいいじゃないですか、別に」

所ジョージ「そうなんだよね。人がいいんだよね」

伊集院「(笑)うん?」

所「きっと求めてる人がいるんじゃないかなと思ってね。ボランティアみたいな気持ちだよ。もう。かかわった以上、やめられないっていうことだよ。かかわって途中でやめるのは誰でもできるし、初めからやんないっていう人もいるよ。大人になるとさ、結果が若干見えるじゃん。そうすると、あ、これはやったってしょうがないよと。やったところで意味ないわとか。やんないんですよ」

伊集院「うん」

所「僕はやるの。やらなきゃ意味も生まれないから、そうすると、いろんな意味が出てきて、それで歌になる。今、一番やってんのが輪投げ」

伊集院「うーん?(笑)途中納得しかけたけどな」

所「輪投げをアマゾンで1080円で買ったの。そうしたら画像よりだいぶちっちゃいのがきたんだよ。びっくりしちゃって、ええー!?こんなちっちゃいのと。また、輪っかが紐でぐにゃぐにゃなの。これ、3本が入んないぞと。3メーターぐらい離れてみようかなと思って。3メーターのルールを決めたわけ。それでやりだしたの。3本入れるのが約束だから、1回目が入んないと……」

伊集院「ごめんなさい、ごめんなさい。誰との?(笑)誰との約束?」

所「自分との! そうすると、普通、1本目が入んないと、大人はリセットしちゃう」

伊集院「しますよ」

所「それをしちゃダメ! 3回は投げるっていうルールで俺はやってるわけ。そうすると、2本目、3本目が入る時があるわけ。意味ねぇーじゃん!」

伊集院「ないです」

所「これの時の落胆の大きさ! それで、2本入るじゃん。そうすると、3本目が外れると振り出しに戻るじゃん。ね? 成功すれば上がりじゃん。そのどっちなんだ、俺は気持ちが、がウロウロして歌になるの」

伊集院「リスナーの方にも同じ気持ちの人いると思うんですけど、所さんの今言ったことには、哲学が入ってるのか、何にも入っていないのか、どっち?(笑)」

所「入ってない、入ってない、入ってない。それは単純なことなのよ。輪投げなんていうのは、偶然しかないわけ。偶然入るってことを喜ぶってことだけなの。だけど、大人は、どうしても自分の動きに必然性が欲しいわけ」

伊集院「わかりますよ。俺そっちだもん(笑)」

所「俺の技術だったりとか、輪投げの形で方向性だったり、投げ方であったりとか。でも、結論としては、偶然しかないの、これは」

伊集院「この話の凄いところは、もはや最初の輪投げにも意味はないじゃないですか」

所「ない!輪投げは意味ない!」

伊集院・新井麻希「(笑)」

所「今は、輪投げをやっては、それを録画しているわけじゃない。証拠として3個入ったっていうのを」

伊集院「してるわけじゃないって、してるんですね?(笑)」

所「してるんだよ。してんの。それを後で編集するから、1個の動画が20セットやっちゃうと、編集の時凄い時間かかんの。だから、大体20セットでまた次のテイクにするわけ。それが大体1日のうちに20テイクぐらい撮るわけですよ。そうすると、400セットやってるわけ。その都度拾いに行ってるから、400回はスクワットしてるわけ。俺は」

伊集院「そうですね。立って、座って、取りに行って、3つ持って」

所「初日は4時間ぐらいやったから、1200セットやってるわけ。だから、足がパンパンで、前に富士山を6時間ぐらいで往復した時の次の日よりもパンパン!」

伊集院「所さん、年は下ですけど、こっちは大人だから、今の話をまとめたがるわけ。で、結果的になんか体鍛えるのによくなりましたよ、みたいな」

所「いや、そうじゃない、そうじゃない」

伊集院「ほらね、違うでしょう?」

所「ほかの人はやんないほうがいいと思う」

伊集院(笑)

新井「あははは(笑)」

所「俺はそうじゃないのよ。勧めてるわけじゃないの」

伊集院「そうすると、僕みたいに考え過ぎるタイプの人は、おそらく、これ、所さんは輪投げっていうものを人生に例えているんだろうなとか」

所「いや、違う違う違う!」

伊集院「“輪投げは輪投げ”でしょう?」

所「輪投げ。輪投げをどういうふうに3個一遍に入らないかなっていうことだけ」

 

伊集院「所さん、すぐ売れてるでしょ?ある意味。10年かかってやっと、みたいのに比べると」

所「僕はね、ジャンジャンで宇崎さんの前座をやって、2カ月後にレコードデビューして。キャニオンで。レコードデビューしたらオールナイトニッポン1部やって、『うわさのチャンネル』やって、その後、『ドバドバ大爆弾』の司会をやって、みたいな」

 

伊集院「売れなくなったらどうしよう?みたいな、普通の人は思うじゃないですか。それはならないですか?」

所「ならない。うちが農家だし、かみさんのところも農家だし。畑やっても別にいいし」

伊集院「でも、一回、人間、芸能界でいっぱいお金ももらいました、人気も出ましたってなったら、なんかわかんないけど、地味な仕事できなくなっちゃう人のほうが多いじゃないですか」

所「ああ。でも、今もいろんなこと、気になること、全部やりますよ。見かけちゃったものはやるもの。でもね、皆さんね、見たものを、例えば、見かけても、「いいや、俺やんなくて」とか、あと、思いついたことも、「別にやったって意味ないからやんない」とかってやっちゃうと、つまんないの。暮らしが。とにかく一回かかわると、面白い物語になるの。

よく「会社がつまんない」なんて言って会社変えてる奴いるじゃない。あれ、会社がつまんないんじゃなくて、会社に行くまでのアプローチとかルーティーンがつまんないんだよ。例えば、護国寺から乗って。最寄りの駅で。通っている人がいたとするじゃない。会社がつまんなかったら、これはルーティーンがつまんないんだなと。じゃ、これは丸の内線の初っ端の池袋に一回戻ろうと。ゼロからスタートする、みたいな。ルーティーンを変えることによって面白くもなる。いろんな物語もあるし、誰かと知り合いになれるかもしんないし。やらないことにはわかんない。無駄なところにいろんな物語が隠されてる可能性がある。喜びの入り口って無駄なところにいっぱいある」

所「かかわると無駄じゃないんですよ、やっぱり。何かが生まれる」

 

新井「楽しむのが勝ちなんだなって何となく思ったんですけど」

所「そうよ。だって、つまんない人は何やったってつまんない。お金がたくさんできても、俺、名誉ねぇなとか、つまんながる。面白い人は、道具がなくても全部面白い」

新井「落ち込むことはないですか?」

所「落ち込まないよね。落ち込む時間がない」

 

伊集院「僕、今も文章書く仕事もやるんですけど、所さんに昔、何十年前にされたアドバイスで、いまだに文章を書く時に守ってることがあるんです。俺、そのことを守ったおかげで凄い書けるようになったんです」

所「へえ。何言ったの私。教えて。俺も書きやすくなるから」

伊集院「所さんが、「原稿が書けない」みたいな話をテレビ始まる前の雑談でしてたら、「簡単だよ。たぶん伊集院君みたいな人は真面目だから、途中まで書けて、ここが、あ、違ったな、書けないな、つってまた書き直すでしょう。例えば、原稿用紙をくしゃくしゃに丸めて、次に書き直すでしょう。『あまりうまく書けなかったから、くしゃくしゃに丸めて捨てようと思ったけど、それももったいないんで、最初から書き直します』って続けて書くことだよ」。

それ言われてから、もちろん全部はできないけど、そういうことか。「ここまで書いても上手く書けないということは、僕の頭の中でまとまっていないんだろうか」と書いて、もう一回書き直すと、意外にちゃんとする、みたいな」

所「リセットしないよね、私は。自分のやったことだから。ないものにしない。人生からマイナスにしなきゃいけないじゃない。だから、マイナス面はなくす。充実したいから」

 

伊集院「俺、若い頃、所さんのことが好きすぎて、構えてるじゃないですか。しかも、「所さんの言うことには哲学があって」って勝手になってるじゃないですか」

所「あ、そう(笑)」

伊集院「それで入ってきた時に、初めて所さんの前でなんかやるでしょう。所さん、今思えば、本当に普通のこととして、あと、もっとすれば、優しいかもしれないことで、レポートの終わった俺に向かって「あれでしょう、もっと面白くなる予定だっでしょう」っていう。それを僕は「つまらない」って言われたんだと思っちゃうの。だけど、今思えばそうじゃないじゃない。全然そうじゃないじゃない」

所「そうじゃないんだよね。面白いんだけど、本人はもっと上手く流れに乗ってやりたかったんじゃないの?っていう」

伊集院「これ以上のポテンシャルある話じゃん、て言ってるだけなのに、俺、勝手に傷ついて」

所「でも、そのくらいアンテナ張ってる人のほうが仕事は向いてんのかもしれないね。自分を高めていくのにはそっちのほうが向いてると思う」

 

伊集院「所さん、凄い怒ることはあるんですか?」

所「私? 私は、「なんだよ!」とは思うけど、面白がっちゃう」

伊集院「所さんが凄い怒ってるのをあんま見たことないです。あ!俺、1回だけ。思い出した。『所ジョージの足かけ二日大進撃』のある日のトークの話を思い出したんですけど」

所「えっ?そんなの覚えてんの?」

伊集院「所さんの自分でカスタムしたバイクのガソリンキャップが盗まれて、チョー怒ってた」

所「ああ」

伊集院「「フジテレビの駐車場に置いといたら誰かが盗っちゃって、パーツの中でも一番盗っちゃいけないやつだよ!」つって。「砂漠でラクダを盗んじゃダメ!」って言い出してた」

所「そのくらいのことだと」

伊集院「て言ってた」

所「言ってた?」

伊集院「その時、凄い怒ってた」

所「例えが凄いな、その頃から。ガソリンキャップね、たしかね、アルミで削りだしで作ったんですよ。自分の中では、そのキャップがバイクよりも、今、一番大事なわけ」

伊集院「言ってた」

所「だから、バイク盗まれる分にはいいの。キャップ残しといてくれれば。その時に一番大事なものがあるわけ」

伊集院「それ以外に怒っているシーンが思いつかない」