誰かのために何かしてみたい

 

ボクらの時代 2017年10月29日

 

若林正恭社会主義って不思議なんすけど、キューバって、レストランのウエイターとかにしても、学生時代にウエイターを養成する学校に通ってウエイターになるから、アルバイトっていう概念自体がないんですよ。それ聞いた時に、結構、20代でお金なくて、風呂無しのアパートに10年ぐらい住んでる時に、わりと苦労してました、みたいな話したのが急に恥ずかしくなって、それで、仕事があることとかにも感謝してるんすけど、帰ってきたら、2週間弱ぐらいで全然なくなりますね、そういう気持ち」

 

若林「僕、キューバの映画(『エルネスト』)を観させていただいて思い出したのが、ゲバラのポスターを自分の部屋に貼ってるっていう日本の男の子がいた場合、これが本当に芸人の漫才の中にネタとして入ってたりするんですよ。それは「変な奴」ということで。ゲバラに憧れたりしてる奴を「中二病」という言葉でもって、夢見がちな、現実を見てない」

オダギリジョー「何ですかね?熱くなることに対して、ちょっとどこか格好悪いみたいな、そういう価値観なのか」

若林「たぶんそういうツッコミというか、揚げ足をとるという取り方の笑い方というか」

オダギリ「何でなんですか?」

若林「わりとそういう、俺は制限があると思ったんですけど。日本はね。人の目という。ま、いい面もありますけど」

 

ナレーション「去年、夏休みを利用してキューバを訪れた若林さん。5日間の休みがとれたのも8年ぶりのことだそうです」

 

若林「僕、この間、こんなこと思うんだと思ったことがあって、目立ちたいとか、ちやほやされたくて芸人になったと思うんすけど、例えば、大喜利とかあるんすけど、やってる時に、「センスいいって思われたいな」みたいな気持ちとかがずっとあったんすけど、「こう思われたい」みたいのが急に30後半になってなくなってきて、そういう自分の自己顕示欲っちゅうか、自分がこう見られたいみたいな気持ちとかってあるもんですか?」

オダギリ「まず、それを消すことから始めましたね。勉強してる時に」

若林「若い時にですか?」

オダギリ「そうですね。上手いと思われたいとか、なんかそういうのがあると邪魔でしかなくなるんで。結局」

若林「芝居をする時ですか?」

オダギリ「そうですね」

若林「消す方法ってあるんですか?」

オダギリ「やっぱりどこかで「どうでもいい」と思えたんですよね。周りの意見とか、周りがどう思うかとか。いまだにそうなんですけど、僕、唯一気にするのは母親ぐらいですね。母親がどう思うかな、ぐらいしか気にならないですね」

 

若林「モンゴルにもこの間 一人旅 行って、遊牧民のゲル建ってて、さっきの男女の話じゃないですけど、力のかかる仕事は男がやってて、女性はずっと働き者らしくて、チーズとかヨーグルト作ったりとか、料理したり、洗濯とかしてるんですよ。これ、やっぱ分業でシステム、人間が生存していく上で一番いいんだろうな、バランスが。と思っちゃったんすよね。で、分業っていいんだと思った途端にすげぇ結婚したくなったんすよね」

中谷美紀・オダギリ「へえ」

中谷「つまりは専業主婦と結婚したいということですよね?」

若林「うん。のほうが、なんかいいんだろうな、そりゃ一人で生きていくよりって、なんか思ったんすよ」

 

若林「専業主婦がいいって思ったわけじゃないんですけど、結婚すると生存確率とか上がるんだな、みたいに思ったのは思ったんすよね。自分で……あ、でもね、それはね、もう一個別な話させてもらうと、モンゴルにすごいボロボロのゲルに泊まった時と、ちょっといいとこに泊まった(時と)あったんすけど、夜ご飯が、ホテルのいいとこは、フランス料理の2つのコースをどっちか選ぶかしか夜ご飯がなかったんすよ。フランス料理、一人でモンゴルでナイフとフォークで切ってたら、なんか涙出てきて」

オダギリ「はははは(笑)」

中谷「へえ」

若林「俺、これ、誰のために食ってんのかなと思って(笑)。なんか、自分がちやほやされたいとかで芸人になって、そういうのが、なんでか、それがガソリンになってたのがなくなっちゃって。と思うと、誰かのために何かしてみたいなとか。偉そうですけど」

中谷「へえ」

若林「じゃないと、これ、もう無理よと思って。一人でフランス料理食べて、なんなん?これと思って(笑)」

 

中谷「この仕事しててよかったなと思うことって何ですか?」

若林「何とか社会生活を送れてることですかね。もしお笑いやってなかったら、破綻してるよなって思うんすよね。この仕事を何とかやれてよかったなって、これはずっと思いますね」

オダギリ「ずっとやりたいですか?」

若林「これやってないと、と思いますよ,、本当に」

オダギリ「だから、そんな忙しく働けるんですよね」

中谷「好きなんですね」

若林「好きです、好きです。もう、よかったあって思います。本当に」