「ボクらの時代」 平野啓一郎×若林正恭×マキタスポーツ 2013年3月17日
マキタ「平野さんみたいに純文学を一人でやるというのは、僕から言わせたらピン芸人ですよ」
若林「そうですよね」
平野「完全にそうですね」
マキタ「俺、若林君なんかは、なんだかんだいって春日みたいな人とデビューできたんだから、なかなかコミュニケーション能力あったと俺は思うんだけど」(笑)
平野「どうですか?それ」
若林「言葉よくないけど、コントロールしやすかったかもしんないですね(笑)」
平野「黒い(笑)」
若林「黒い話なんです。人間をコントロールしちゃいけないんですけど。女の子が200人集まってたりするじゃないですか、ライブハウスって。俺は予感がしてたんです。1回ウケたら、たぶんいい気になって「やる」って言うなって思ってたんですよ。性格上。目立ちたがり屋で自己顕示欲強いのは高校の時から知ってたんで。たまたま結構ウケたんで、いい気になってそのままきちゃったんですけど」
平野「若林さんとか、例えばステージに立ってる時に、もちろん相方の方が自分の思いどおりじゃないことをする時もあるじゃないですか」
若林「はいはいはい」
平野「それ、ストレスなのか、それを面白いと感じるのか、そこが結構、僕、大きいんじゃないかと思うんですよね」
マキタ「ああ」
平野「僕はたぶんストレスに感じると思うんですよ」
若林「(笑)ウケる、スベるっていうことで言うと、スベってくれたりすると、もうゾクゾクしてくる」
マキタ・平野(笑)
若林「お前ちょっと待てと。今の、稽古の時、言うのやめろって言っただろうってちょっと漫才からズレてく時とかがすごい好きなんですよ」
平野「それはでも、春日さんは無意識で言っちゃってるんですか、それとも、やっぱりなんか面白いかなと思ってあえて言っているんですか」
若林「本当に、皆さんが思っている以上にバカですから(笑)。ほんとにそうなんですよ。ちゃんと作って、理路整然と原稿用紙どおりに漫才をやるんだったら、そんな楽しくないかもしんないっすねえ」
若林「俺、この間、行きつけのカフェでオニオングラタンスープを無料でサービスしてもらったんすよ。すごい嬉しくて。でも、それを話す相手が誰もいないから」(笑)「家帰ってからソワソワしちゃって、その時にちょっと結婚したいなって思ったんすよ」
平野「なんでもないことを話す相手がいるかどうかっていうのは、結構僕は大きいと思いますね」
マキタ「うちは子どもが先にできたので、結婚しようかっていうことにはなったけど」
若林「そういう感じで聞きますね、結婚した方に聞くと。ポンとタイミングがあるみたいな」
マキタ「そこからが大変だったね」
若林「本当ですか?」
マキタ「だって、僕は常にガザ地区みたいな状態というか。そっちは俺の領土だけど、こっちは彼女のシマ。ほとんど彼女のシマなんだけど。だけど、なんかね、生涯をこの人と一緒にというのは幻想だと思うんだけどね、それは夢だと思うんだけど、でも、なんかそういうフィクションというか、も信じてもいいんじゃないかなとかということとかは、途中ではすごく思うようになった。それをずっと続けていけばいくほど価値が出てきそうな。自分の中で。だから、春日との関係性が俺は作品だと思うんだよね。それと同じように、うちの奥さんとの関係が一つの作品になればなと」